頼れる先輩
「やっぱり、初日のパーティーは参加者少なくなるわよね...」
アメリアの仰る通り、全学年が参加している行事にしては参加人数が少ないように思えます。最も重要なのは最終日ではあるため、初日である今日は明日以降の体調を考えて休まれる方や、そもそも馬車酔いで参加できない方がいたりします。
「アレックス様、アメリア様、ごきげんよう」
「アウロラ様、ごきげんよう。やはりアウロラ様は参加されていたのですね」
「ええ。参加人数が限られているということは様々な派閥の方のお話を聞く機会が増えますから。それにしても、リリー様とカミラ様は?」
「カミラはグレイと過ごしていてリリーは少し休んでいますの」
「そうでしたの...。マコト様とユウリ様も馬車酔いで休まれているようでしてよ」
お2人は今回初めて学園や神殿の周辺から出られましたから予想はしていましたが大丈夫でしょうか...。マコト様のいた場所では馬車は使われていないと仰っていましたし、慣れない旅は大変ですよね...。
「姉上、こちらにいらしたのですね」
「テオ、お友達との交流は良いのですか?」
「はい、それよりも姉上のことが心配で...」
なんだか、心配具合がお兄様に似てきたような気がします...。いえ、姉としてこれ以上心配をかけるわけにはいきませんわ。
「アウロラ様、アメリア、こちら、弟のテオです」
「初めまして。テオドール・コリンと申します。姉上から皆様のお話はよくお聞きしています。姉上がとても楽しそうに学園での出来事を話してくれるようになって、皆様には感謝してもしきれません」
「アレックス、しっかりとした弟さんね?」
「ええ。テオは賢くて愛らしい自慢の弟なのです」
私がそう言うとテオは嬉しそうにはにかみました。
「初めまして。アウロラ・ブラウンと申しますわ。集まりにて何度か顔を合わせる機会はありましたがこうして挨拶を交わすのは初めてでしたね。テオドール様、ご入学おめでとうございます。上級生として歓迎いたしますわ」
アウロラ様がそう仰ってくれたことでテオにおかしなことをする方は減ることでしょう。
「初めまして。アメリア・ターナーと申しますわ。アレクサンドラ様とは同じクラスで親しくさせていただいております。ご入学おめでとうございます」
形式的な挨拶を終えると親しみが増したのか、テオも緊張が解けて笑顔で会話しています。
「お家でのアレックスはどの様な感じなのですか?」
「姉上はお勉強を教えるのがとても上手で、僕が躓いていると、優しく導いてくれます。基礎の理解で少し躓いた時もわかりやすく説明をしてくれたり、実戦における戦術論や戦法も何故有効的なのかの説明をしてくださって、とにかくすごいのです」
テオが褒めてくれるのは嬉しいですが、少し照れ臭く感じます。
「わかりますわ。アレックスはクラスでの勉強会でも私達が理解しやすいように工夫してくださりますし、そのおかげで私達の成績も伸びましたのよ」
「やはり姉上はすごいのですね!今は簡単な調合や御守りづくりの基礎も教えてもらっていて、」
ニコニコと話すテオはとても愛らしいです。
グレイからの視線が痛い気がしますが、気にしてはいけません。
「アレックス、お前、テオに無理をさせ過ぎているのではないか...?」
「グレイ、ごきげんよう。カミラはどうしましたの?」
「もう休むと言っていたから送り届けていたところだ。それよりも、御守りづくりと調合の基礎は本来3年生以降で習うはずだが?」
「知っていて損はありませんし、何より、テオが優秀なものでつい熱が入ってしまいましたわ」
グレイ、その引いた目をやめなさい。
テオの成長に合わせた学習を行っているのに心外です。
「グレイ、あまり姉上をいじめないでください」
「テオ、いじめてはいない。それよりも入学おめでとう。青クラスに配属された聞いた」
「はい!姉上と同じ色が良かった気持ちはありますが、とても楽しいクラスでよかったです」
「まあ、同じ色の先輩として助けられることがあったら頼ってくれると嬉しい。魔術に関してはアレックスが頼りになり過ぎる気はするが、学園行事や専門科目については応えられることは多いからな」
「確かに、青と黄色では授業が若干異なりますものね...。テオに頼れる先輩ができて良かったですわ...」
さすがに私のような1年生を過ごしてほしくありませんもの。クラス間での常識や殿方特有の文化や常識についてはグレイの方が詳しいでしょう。
「はい、グレイにはその、迷惑をかけてしまうかもしれませんが、ご指導をお願いします」
「...驚いた...。お前、本当にアレックスの弟か?」
「グレイ、どういう意味ですの?テオは正真正銘、私の可愛い弟ですわ」
「ふふ、デリック様とアレックス様の良い面を吸収されているようですね」
「はい、兄上も姉上も僕の良い見本となってくださりましたから。お2人に恥じないような弟に、」
「テオ、それは違いますわ」
テオは少し気負い過ぎるきらいがあります。それは姉として改善を促さなければなりません。
「貴方は私やお兄様のようになる必要なんてないのです。テオはテオらしく元気に過ごしてくれたら私は姉として嬉しく思いますわ」
「姉上...。はい!姉上が以前仰ったように楽しく僕らしく学園生活を送れるように頑張ります」
「それなら良いですわ。ほら、お友達が呼んでいますわ。いってらっしゃい」
「でも、」
「学園生活を楽しむのでしょう?気負わずに行ってきなさい」
「はい、では、失礼します」
テオは楽しそうにお友達の所へ行ってしまいました。
何でしょう?驚きとも感動とも取れるような視線を感じます。
「アレックスがちゃんとお姉様をやってるだなんて感動だわ...」
「ふふ、お優しい所は兄妹で似るものなのですね」
「お前、今のリックに似てたぞ...本当に兄妹だよな...」
お兄様も私に対してこのような気持ちだったのでしょうか...。なんだか、ものすごく心配をかけてきた自覚が芽生えてきました...。
今後はきちんとお兄様に甘えてなにか差し入れを考えなくては...。
「さあ、アレックス様、私達も楽しまなければなりませんわ。アメリア様もあちらにスイーツをいただきに行きましょう」
アウロラ様の一声で私達はスイーツが並んでいるコーナーへ移動しました。
情報収集も大切ですからね。




