平等に
「皆様、おはようございます」
週明け、教室へ入るとクラスの皆様の戸惑った様子が目に入りました。
テストを終え、星の館での宿泊研修を控えているため、学園内が騒がしくなっていましたが、少し違うようです。
「アレクサンドラ様、その、えっと、」
「私がどうかされましたか?もしかして、知らないうちに皆様にご迷惑を...?」
心当たりはありませんが、あり得ないことでもないのです。
私のせいで心優しい皆様が我慢するようなことはあってはなりません。
「ち、違います。その、聖女候補のユウリ様が先ほどいらして、」
「ユウリ様が、ですか?」
「ええ。アレクサンドラ様はまだ登校されていないのか、と」
「すごい剣幕でして...もしも教室へ来られるまでの間に遭遇してしまったらと思うと...」
「なるほど...ある程度事情はお察ししましたわ...」
入部をまだ諦めていなかったということでしょうか...。
私に交渉したところで返事も対応も変わりはないのですが、どうしたものでしょう。
「アレックス!無事!?」
「アメリア、おはようございます」
「呑気に挨拶してる場合じゃないわよ!」
「アメリア、落ち着いて。アレックスが驚いているでしょう?」
「あ、ごめんなさい...」
「リリー、お話を伺っても?」
「ええ。もちろんよ。ほら、アメリアは深呼吸して落ち着いて。私が説明するから」
リリーの言う通り、アメリアは深呼吸をして少し落ち着いたようです。
「それで、何があったのですか?」
「先週、貴女がユウリ様ともめ事を起こしたと噂になっていたの。もちろん、アレックスが争いごとを好む性格じゃないことは分かってはいるけど、心配で...。それで、先ほどユウリ様がアレックスを必死に探している様子を見かけて慌てて教室まで来たというわけ」
「な、なるほど...。先ほどユウリ様が教室の方まで来られたとお話を伺ったばかりですわ」
「とにかく、無事でよかったわ...」
「アメリアったら血相を変えて走り出そうとしてたのよ。早歩きにしなさいって宥めるの大変だったんだから」
あの出来事がまさか揉め事として広まっているとは思いませんでしたわ...。
しかし、話の内容で憶測を呼び、私が聖女批判をしていると思われたら非常に厄介です。せめてクラスメイトの方々だけにでも大まかに何があったのか説明をしなくては...。
「あの、噂について少し説明をしてもよろしいでしょうか?」
軽く、説明を終えると皆さまため息を吐かれておりました。
揉め事ではないのに揉め事として拡散されるとは思っていませんでしたし、皆様が呆れるのも理解できます。どこをどう切り取ったら揉めているように見えるのかわかりませんものね...。
「というか、合格者がいないだなんて、相当難しいテストだったのね...」
「そ、そんなことはありませんわよ?きちんとグレイとマシュー様にお願いして難易度を調整しましたから」
「アレックス、グレイ様もマシュー様も大変優秀な方ですからそこまで易しい問題にはならないのではないでしょうか...?」
「カミラの言うことにも一理あるわ...。そもそも古代文字研究部って優秀な方々の集まりだもの...」
「それはそうとどのような問題を出したの?上級生なら合格者がいてもおかしくないんじゃないかしら?」
リリーの言葉に何人かが頷きました。
皆様、テスト問題に関心があるようです。配布するわけではありませんし見せるくらいならば良いのかもしれません。
「このような問題なのですが...」
「最初の方は基礎的な問題が多いわね...サービス問題もあるし...」
頭をひねりながらもきちんと正解を導き出せている方がそれなりにいらっしゃるのを見る限り、そこそこの難易度なのではないでしょうか...?
「でも、これ、去年テスト前に皆で勉強会をして基礎についての理解が深まったから解けるのかもしれないわ...。教科書の内容をなぞるだけじゃ解ける内容じゃないもの...」
「私もカミラと同意見ですわ...。3年生ならどうにか突破できる問題だとは思いますが...」
ユウリ様は本来2年生または1年生での編入を提案されたくらいですし、厳しすぎたのかもしれません。
「でも、私は逆に安心したわ...。アレックスの説明だとテストは平等に行われていたことになるもの」
「そうね...。点数しか見ていないのが逆に平等になっていると思うわ。むしろ、合格点じゃないのに入れてしまったら頑張ってお勉強した方から批判を受けかねないもの」
とりあえず、揉め事の内容については問題なく伝わったようです。
下手な対立はしたくありませんし、もう少し事実をオブラートに包みつつ、噂を上書きしていかなければなりません。
皆様も協力してくださるようで安心しました。ついでに、今後尋ねられても居場所を明かさないと約束してくださりましたし、本当に良いクラスメイトに恵まれたものだと感じます。




