学園長室でのお話
そのままオリヴィア先生の後を続いて歩いて行くとそこは研究室がある場所に向かっているわけではないことが分かります。
「先生、どちらに向かわれているのですか?」
「学園長室に向かっています。あの場で言うと他の生徒に誤解を与えることになりそうでしたので」
「誤解、ですか?」
私が首をかしげているとオリヴィア先生はゆっくりと振り返り私と目線を合わせました。
「学園長とたまにお茶をされているアレクサンドラ様はご存知ないと思いますが、学園長室に呼び出されるというのは問題行動を起こしたと思われる方が多いのです」
「そう、なのですね...」
「アレクサンドラ様は確かに平均的な基準において異質と言えるかもしれませんが、問題児とは私も学園長も思っていませんのでそこはご安心ください」
オリヴィア先生は優し気に微笑んで仰りました。
1年生の頃にあまり学園に通えなかった時期から学園長とはたまにお茶をしていたのでその感覚はありませんでしたわ。
そういえば、日数がギリギリだとお話を伺ったのもお茶の途中でしたわね。もしかして、あれは面談だったのでしょうか...?
いえ、過去を振り返っても仕方がありませんわ。
「アレクサンドラ様?」
「いえ、何でもありませんわ。それにしてもどういった内容でのお呼び出しでしょうか...?」
お話の内容について2人で考えながら私達は学園長室へ足を進めました。
「失礼いたします。学園長、アレクサンドラ様をお連れ致しました」
オリヴィア先生の後に続き、私も入室します。
学園長はいつものように歓迎して席をすすめてくださりました。
既にお茶やお茶菓子は用意されていたようで、いつも通りの光景が目の前に広がっております。
「よく来てくれたね。アレクサンドラ嬢。それから連れてきてくれて感謝するよ、オリヴィア先生」
「いえ、まさか、ユウリ様と揉めているとは思いませんでしたが...」
「そうかい...まったく厄介なことだね...」
揉めていたというよりも私からしてみれば執拗に絡まれた感覚なのですが、他の方の目線を通すと揉めていたということになるのですね...。揉め事は極力回避したいのですが。
「それで、アレクサンドラ様をお呼びした理由をお伺いしてもよろしいでしょうか?」
「ああ。そうだった。まずは1つ。最近学園長室に遊びに来てくれなくて寂しかった」
オリヴィア先生が呆気に取られています。
最近、色々なことがあり過ぎて訪れていませんでしたね。今度はグレイや他の方をお誘いしてお茶をしに来ても良いかもしれません。
学園長は生徒に慕われたいと日々嘆いていますから。
「えっと、それだけ、ですか?」
気を取り戻されたオリヴィア先生が未だ納得しがたいように問いかけました。
「それと、聖女候補について聞いておきたくてね」
「ああ、そうですよね...」
ようやく納得されたようですが、何故自身が呼ばれたかを考えているようです。
いえ、私が呼び出されたことも私は納得しておりませんよ。
「聖女候補、ユウリ様とマコト様について私は知っている範囲でしかお答えできませんが」
「それで構わないよ。オリヴィア先生は最近の授業内容について聞きたくて呼んだんだ」
「ああ、承知しました」
まずは私の話からになるようです。
「まずは、ユウリ嬢とマコト嬢2人の学業レベルの差についてどう思うか聞いてもいいかな?」
「マコト様に関しましては昨年度の収穫祭には既に中級程度の作法などについてはアウロラ様と共にある程度お教えし習得することができましたので、基礎的な魔法について少しずつお教えする時間が取れたのが大きいと思われますわ」
「...ん?マコト嬢が降臨してから、収穫祭まで時間はそこまで長くないはずでは...」
「アレクサンドラ様のスパルタ教育とアウロラ様の調整力、マコト様自身の向上心が奇跡的に噛み合った結果、ですね...」
本当にスパルタの自覚はなかったのですが、考えを改めた方が良さそうです。
「な、なるほど...。マコト嬢が負担に思っていないならいいか...。ユウリ嬢については、」
「ユウリ様については直接お会いする機会が少なかったためすべては憶測となるのですが、よろしいでしょうか?」
「もちろん」
「恐らく、いきなり異世界から降臨されたことにより混乱されていた上に聖女という役割について重圧に感じてしまい精神的なご負担が多かったのではないかと思いますわ」
「確かに、急に環境が変わると順応するまでに時間がかかりますものね」
「ええ。ですので淑女教育に対して消極的であったのではないでしょうか...。ダリア様が担当となってからも少し気難しい部分はあったようなのですがそれも改善されゆったりとですが前向きになられたようです」
「なるほど...。それで魔法の基礎について学ぶ機会が遅れてしまい差が開いたというわけか...」
オリヴィア先生がイマイチ納得されていない表情を浮かべられています。
「性格の面も大きいとは思いますが...。」
先生のつぶやきをよそにお話はどんどん進んで行きました。




