テストの結果
すべての採点が終わり、残念ながら今回は基準点を満たしている方がいらっしゃらないという結果になってしまいました。
自信があった方々は各々落ち込んでしまわれたり憤りを感じられている模様です。
上級生の腕試しで受けられていた方々はそれはそれは満足そうに帰って行かれました。またやる機会があれば教えてほしいとのことです。
「アレクサンドラ様、少しいいですか?」
「これは、ユウリ様、ごきげんよう」
図書館への用事を終えた矢先でした。
ユウリ様とは極力2人きりにならないよう言われていましたのに困りましたわ。
「私を古代文字研究部に入れてください!」
「はい?」
世間話やお互いの緊張を解くような話題もなくいきなり要求、ですか...。
いけませんわ。アレクサンドラ。呆気に取られたからといって態度を崩してしまうのは淑女失格です。気を引き締めるのよ。
「だから、古代文字研究部に入れてください!お願いします」
人目がそこそこあるところで頭を下げる行為はやめてほしいのですが。
「申し訳ございません。ユウリ様は今回基準点に達していませんでしたのでその要求にお応えすることは難しいですわ」
「そ、そんな...」
悲しげな表情をされても結果は覆りません。残念ながら。
採点結果を見る限り、お勉強があまり得意でないように見受けられましたし、その結果にジャクソン様も頭を抱えられていました。
入学したての学生ですらわかるサービス問題を間違えていたのですから。
「どうしてですか?」
「お答えした通りですわ。基礎魔法や魔術基礎の内容をきちんと理解していなければ活動に支障をきたしてしますため心苦しくはありますが、」
「でも、私は聖女候補ですよ?」
「ええ、そうですわね」
「だから、聖女候補ですよ?」
「ええ、それが何か?」
「聖女候補だから他の人よりも役に立つと思うんです」
「はあ...」
いくら聖女候補と言えどその力を理解しきちんと扱うことができなければ意味はないと思うのですが。
それに、聖女候補だろうが王族だろうが今回のテストに関しては基準を満たしていなければ容赦なく落としております。
シャーロット様もあと1歩及ばず落ちてしまったのです。悔しそうにされながらまたリベンジすると仰ってくださりました。
「アレクサンドラ様私の話を聞いていますか?」
ユウリ様がご自身の素晴らしさとこれからの展望について長々と語られるものでシャーロット様に想いを馳せてしまいましたわ。これではいけませんわね。
要約すると、自らが特別で素晴らしい存在だからこそ所属することがメリットになる、と言ったところでしょうか。
「ユウリ様は神殿でどの程度魔法について教わりましたか?」
「魔法?一応、基本的なことは教わりましたけど」
「では、学園の授業でお困りのことはございませんか?」
「なんですか?その聞き方...」
「不快に思われてしまったのならば申し訳ありません。神殿や教室で仲の良い方に今回の答案について話し合ってくださったら嬉しいですわ」
「あ、ちょ、それって、どういう、」
遠回しに言っても通じなさそうですし、ここはこちらが引き下がりましょう。
ダリア様が以前話してくださった通りなのでしょう。
「ユウリ様、多くの困難がこれからあると思いますが、くじけずに考え行動し続ければおのずと道は拓けると私は思いますわ」
「え、えっと?はい?え、急になに?」
「今回の結果はその1歩目だと思うのです。ですから、またの挑戦を心よりお待ちしておりますわ」
「え、アレクサンドラ様!?話はまだ、」
「アレクサンドラ様、こちらにいらしたのですね」
「オリヴィア先生、どうかされましたか?」
華麗に立ち去ろうとしたところでオリヴィア先生が息を切らして声を掛けてきました。
「研究室へ来るよう朝お話したではありませんか」
「え?そのようなこと、あ、そうでしたわね。私としたことが抜け落ちてしまっていたようですわ」
約束していた覚えはないのですが、オリヴィア先生が話を合わせるよう視線を送ってきました。この際、この場から抜けられるならいいでしょう。
「まったく、大事な用事ですから忘れないようにしてください」
「申し訳ありません。以後気を付けますわ」
オリヴィア先生の登場により、先ほどまでのユウリ様が可哀そうな空気は消えてしまいました。
「ユウリ様、私これから大切な用事がありますので失礼いたします」
「え、」
「ユウリ様の今後のご活躍を心よりお祈りしておりますわ。それでは、ごきげんよう」
ユウリ様は呆気にとられたようで動けないでいるのでこの隙に素早く移動します。
その場にいた生徒の証言によりテストが公平に行われたことであると広まってくれて本当に良かったです。




