入部テスト
「それでは、問題については以上です。何か質問はございますか?」
アウロラ様のお声が教室内に響き、緊張感がその場を支配しています。
学園の試験準備期間前にクラブの入部テストを終わらせてしまおうと決定し、まさに今日がその当日となっております
私が問題を提案し、グレイとマシュー様が頭を悩ませながら調整したテストは頑張れば2年生や3年生でも解ける仕様にしたそうです。むろん、オリヴィア先生にもきちんと確認いただいたようですし。
ジャクソン様はお2人のその様子に顔を引きつらせておりましたが。
教室内には新入生はもちろん、3年生や4年生の方もおられるようです。入部はしないがテスト問題だけは受けてみたいと腕試し感覚で申し込まれた方がいらっしゃるとアウロラ様も仰っていましたから上級生は基本的にそのような感じなのでしょう。
「これを、解くのか...?」
「え...噓でしょ...?基礎が理解できてたら解けるって...」
「私語は慎んでくださいませ」
教室のあちらこちらから悲痛とも取れるような声が上がっている気がするのですが...。さすがに1年生には難しいのかもしれません。
一応、1年生の前半に習う部分も加えたはずなのですが。
「アレクサンドラ嬢、本当に大丈夫なのか...?」
「初歩的な問題や基礎の応用を中心にしているはずなのですが...。グレイ、どうなのですか?」
「アレックスのものをかなり易しめに改変しているが...。勘のいいやつなら数名は解けるだろ」
「...。其方らに作問を任せたのが失敗だったか...」
それはどういう意味でしょう?
少なくとも基礎をきちんとマスターしていないと今後の活動に支障をきたすのですが...。
「うそでしょ...」
ユウリ様の声が微かに聞こえました。
教室に入られた際には注目がそちらへ向き、皆様の士気がかなり上がっていたのですが今はかなり盛り下がっているように見えます。
「アレクサンドラ嬢、ユウリ嬢はクリアできると思うか?」
「どうでしょう...?神殿でどの程度学ばれているのかがわかりませんし...。そう仰られるノア様はどう思われますか?」
「...どうだろうな?魔法に対する知識は多少あると噂程度には聞いたが...作問担当を考えるとな...。シャーロットも何だか哀れに見えてきたよ」
「シャーロット様も頭を悩ませていますわね」
今回ノア様が作問に参加されなかったのはシャーロット様がテストを受けられるからです。問題内容の流出を控えるための対応でしたが、先ほど問題を確認されて少しだけ頭を抑えていらっしゃりました。
「アレックス、テオは参加しなかったのか?」
「ええ。別のクラブも見てみたいとのことですし、基礎をもう少し固めてから来年の入部を目指すと仰っていましたわ」
「...お前の認識では条件を満たしているんじゃなかったか?」
「それはテオがどう思うかですし...。それに、ここにおられる方々が各々が条件を満たしていると考えられているのでしょう?」
「要項をきちんと確認していない輩も多そうだがな...」
それは確かに否めません...。
「そこまでです!筆記用具を置いてください。解答用紙を裏返して退室してください」
どうやらテスト終了時間となってしまったようです。
型を落として退室する方々を見送り、私達は解答用紙を回収しました、
「あとは採点ですわね...」
「手分けして行いましょう。問題数はそれほど多くございませんし。それにしても、進行役だなんて少しだけ緊張しましたわ...」
「アウロラ実に立派であった。この調子ならば婚約発表も問題ないであろう」
「もう、ジャクソン様はお上手ですね」
この空気感に割り入るだなんて誰にもできませんわ...。
「アレックス、これでいいかな?」
「マシュー様ありがとうございます。それにしても、そんなに難しかったでしょうか...?」
「グレイと話し合っていい具合に調整したつもりなんだけどね...」
解答用紙には空欄が目立つ方もいらっしゃりますし...。さて、どうしたものでしょう。
「マシュー、君もアレクサンドラ嬢とグレイに毒されているのではないか?」
「ええ!?そんなことは、ないと思いますけど...」
「アレックスはともかくオレに毒されるってなんだよ?」
「そのままの意味だ...。まあ、足手まといが入部するよりはいいか...」
ノア様、悲痛な表情をしないでください。
最近思ったのですが、ノア様とジャクソン様は時折似たような表情をされることが多い気がします。お立場的に似たようなものですし、やはり分かり合える部分があるのでしょうね。
解答用紙をまとめつつそんなことを考えました。




