想定外の悩み
クラブによって勧誘活動が活発になってきた頃、私達はとある問題に直面しておりました。
「...思っていたよりも入部希望者が多いな...」
グレイが入部希望調査書を目の前に頭を抱えています。
数人希望者が現れれば良いのでは?と高を括っていたのが昨日までのことです。新入生オリエンテーションが終わり続々と希望調査書が集まり、教員室へ鳥に向かったのが先ほど。
代表者であるアウロラ様が顔を青ざめさせていたので希望者がいなかったのかと楽観的に考えていたのですが、まさかその逆だったなんて...。
「さすがにこの人数を受け入れることは出来ないな...」
「ええ...特にアレックス様に大きな負担が掛かってしまいますわ」
「確かに...最低でも魔術基礎程度の知識がないと難しいですわよね...」
「そこではありませんわ」
「え?」
基礎魔法からお教えするのはさすがに大変ですので極力控えたく存じますわ。テオは簡単に理解してしまいましたが、他の方はそれなりに時間がかかるでしょうし。
うちの弟は純粋で素直で賢いのです。
「アレックスの言ってることはわかるけどね...。さすがに新入生や2年生では知識的に一緒に活動するのが難しくなるよ。アウロラ様はそこをカバーするためにはアレックスから学ぶのが最適だけどそうするとアレックスのやりたい研究をする時間が無くなってしまうと言ってるんだよ」
「なるほど...理解できましたわ。ありがとうございます、マシュー様」
「実際、3年に上がりたてでもかなり難しいと思うけどな...。いっとくけど、マシューが優秀だからお前の助手として成立してるのは忘れるなよ?」
「グレイソン様、4年生に上がりたてでも難しいと思うのですが...」
アウロラ様が困ったような表情を浮かべてしまいました...。
「1人2人ならば全員で様子を見つつ各々好きなことをしつつお教えできると思っていたのですが、これでは難しそうですね...」
「しかし、この人数を一気に断るにも心が痛く思いますわね...」
「なるほどな...。アレックス、他のクラブではどうしていると言っていた?」
「アメリアの所は興味を持ってくださった方が見学に来た際に迎え入れると仰っていましたわ。リリーの所はそもそも入部希望者が少ないとも。それ以外は積極的に声を掛けられているのではないですか?グレイも1年生の時に勧誘されたでしょう?」
「武術系のクラブにな...。基礎としては良いと思うが」
声を掛けていないのにここまで集まったことが問題なのですよね...。実際、生半可な気持ちで臨んでしまっては危険なこともありますし。
「あ、それなら、入部希望者に対してテストをしてみたらどうだい?」
「テスト、ですか?」
「割と閉鎖的に知識を深めるクラブではそう言ったことを行うと聞いたことがあるんだ」
「閉鎖的に知識を深めるってどういうことだ...?」
「詳細は教えてはくれなかったんだけど、特定の専門分野の問題を出して入部できるかどうかを見極めるらしい」
「それでしたら、ある程度ふるいにかけることが出来そうですね。でしたら、テストの問題は私が、」
「いえ、アウロラ様、ここは私達にお任せください」
「しかし、」
「ジャックとの婚約発表がもうじきですよね?そちらに集中した方が良いとアレックスは考えているみたいです」
婚約発表までひと月もないのです。ジャクソン様はその準備と公務に追われて本日は欠席されています。ノア様はシャーロット様の諸々の手続きのために欠席だそうです。
「それでは皆様にご負担が...」
「問題ありませんわ。アウロラ様。ここは私達にお任せくださいませ」
「アレックス様...」
「ジャクソン様が以前仰った通り、アウロラ様が美しくて素晴らしい方であると知らしめる必要がありますもの。その機会を大切にするための準備は必要ですわ」
「もう、アレックス様はすぐに人をお褒めになるんですから...。でも、私は貴女がまた無理をするのではないかと少しだけ心配なのです」
「私が無理をしそうになったらグレイやマシュー様が止めてくださりますわ」
「グレイソン様は、少し心配ですが、マシュー様がいらっしゃるなら大丈夫そうですね」
グレイが少しだけ落ち込んだ様子を見せています。見なかったことにしましょう。
それに、私が作問するにしても難易度の調整はどなたかにお願いしなければならないのです。アウロラ様やノア様だとレベルが高すぎるものできそうですし、ジャクソン様は極端に甘すぎる結果になりそうです。
その点、グレイやマシュー様なら問題の意図を理解しつつ丁度良い感じで収めてくださいそうな気がします。
「私も問題を確認したいので後ほど見せていただけますか?やっぱり、仲間外れは寂しいですし」
「もちろんですわ!テストの説明はアウロラ様が行った方が良いと思いますもの」
「では、優秀な方が入ってくださるように頑張りましょう」
アウロラ様はそう仰ると私の隣に腰掛けて日程についてお話をされました。予定が詰まり始める後半よりも前半である程度は終わらせたいとのこと。
私はそのお話を聞きつつ、どの系統の問題を出すべきかの検討を始めました。




