2年生の最終日
あれからそれなりの頻度でダリア様とお茶をする機会を設けた結果、徐々に私達が和解したという噂が広まり、信じられるようになってきました。
表向きにはですが。
本当に和解したのかを探る方や良からぬ取引や私がダリア様を派閥へ入れるために脅していると勘違いされている方も見受けられます。
いや、どの派閥にも属していないというのに引き入れる意味はあるのでしょうか。
「アレックスは古代文字研究部という独自の派閥に属しているじゃない」
私が真剣に悩んでいるとアメリアが呆れたように仰りました。
本日は学年の終了日。2年生として最後の日となります。それ故にどのクラブも活動はなく授業もいつもより早く終わるので友人と集まる人が多いそうです。
「でも、本当に驚きましたわ。和解されるなんて...本当に危ないことはない?」
「大丈夫ですわ、カミラ。危ないことは何もありませんもの」
「アレックスからしたらそうなんだろうけど、それでも私達は心配なのよ。もちろん、ダリア様もお辛い事情があったのでしょうけど、それでもアレックスを害そうとしたことには変わりないもの」
「リリーもそこまで心配なさらなくても...」
アメリアに視線を向けるも首を振って取り合ってくれません。自分でどうにかしなさいということなのでしょう。
「皆様、心配しすぎですわ...。グレイやジャクソン様には正気を疑われましたし...」
「むしろそれが普通の反応なのよ...。アウロラ様も心配されていたでしょう?」
「それは、まあ...」
最近、部活内で問題児扱いされている感が否めない気がするのですが...。困りましたわ...。
「正気を疑うのはどうかと思うけど...。やっぱり私達から見たらアレックスは優しすぎるんじゃないかって心配になるの。今回のことだけじゃなくて、2年生に上がってからずっと」
「私は、特段優しすぎるわけではないのですが...」
「優しさは受け取った方がどう感じるかで決まるものよ。でも、そういう貴女だから仲良くなれて良かったわ。最初に話しかけて良かった」
「そういえば、1番初めに話しかけてくださったのはアメリアとリリーでしたわね」
「結構な勇気だったのよ。あんなことがあったからもう少し間を開けてからでも良いんじゃない?って言ってもアメリアは聞く耳を持たなかったんだから」
「だって、そうしないとアレックスまた学園に来なくなるかもと思ったんだもの」
「それはわかってるけど...でも、返って来た反応があまりにも可愛らしくて驚いちゃったわ」
確かに、もう少し言い様があったのではと今になっては思いますわ...。
「感動で打ち震えていた、だなんて...。普通は新興貴族の家の者に話しかけられた時の反応ではないもの」
「あ、あれは、本当にうれしくて、その、クラスの方と親しくお話しできたことが...家族に話したら嬉しそうにしてくれて、それで、」
「本当にそういう所が可愛いんだから」
「リリー揶揄わないでください」
リリーはいつも私の頭を撫でたり抱擁をしたりと温もりを分けてくださります。
「カミラはどうなの?高位貴族として一応の面識はあったのでしょう?」
「面識、と言っても私もそこまで話したことはなかったのです。アレックスは体調をよく崩しがちで、とデリック様が説明されていましたから、集まりにもあまり顔を出すことがなかったですし」
「そういえば、1年生の時も休みがちだったわね...」
「ええ。だからこそ、すごく控えめで繊細な方だと思っていましたの。家族からも困らせてはいけないと言われていましたし、その愛らしさと美しさを遠くから眺めることしかできなくて歯がゆい思いをしていましたわ...」
「そ、そうなの...」
リリーとじゃれている間、アメリアとカミラもお話が盛り上がっているようです。
「でも、いざ仲良くなってみたら気さくで誰よりも表現としてはどうかと思いますが、紳士的で驚きましたわ」
「わかるわ!アレックスって普段は小動物みたいで可愛いのにいざとなると凛々しくてカッコ良いのよね」
「リリーもそう思いますか?本当に殿方でなくてよかったと何度思ったことか...」
「2人とも、落ち着きなさい。アレックスが複雑な表情を浮かべているでしょ」
「あ、ごめんなさい。決して淑女ではないとかそういう意味ではなくて、」
「いえ、カミラのお気遣いは伝わっておりますわ。気を付けていたつもりなのですが、3年生に進級するからには今以上に気を引き締めてまいりますもの」
「アレックス、そういう所よ...」
「アメリア!?どういう所ですか?」
アメリアは諦めたように首を振りました。諦めないでいただきたいのですが...。
「アレックスはこのままでいいのよ。今年こそは婚約者探し頑張らないとね」
「王妃様とお母様にも言われましたわ...」
まだ遠い話のようですが、焦らなければならないようです...。
「アレックスならいい殿方が見つかりますわ。身近にもいらっしゃるではないですか」
「リリーアレックスだけじゃなくて私達も探さないといけないのよ」
「わかってるわよ。だから、カミラにたくさん話を聞くのよ。ね?カミラ」
「わ、私ですか!?」
私を慰めていたカミラはいきなり話を振られて驚かれてしまいました。でも少しだけ嬉しそうです。
2年生の最終日、私達はいつものように楽しく語らいながら下校時刻まで過ごしました。




