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友人に絶交宣言をされたので、本来の自分が戻ってきました  作者: 葵
2年生

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実は上澄み

「デリック様とグレイソン様の手合わせ、すごかったですね...」

「確かに...現役の騎士にあそこまで挑めるってグレイもすごいんだね」


 アウロラ様とマシュー様は先ほどまで繰り広げられていた手合わせを振り返りつつ呟かれました。

 ノア様も同意と言わんばかりに頷いています。

 実際、行われたのは剣術の手合わせが1回、魔術を含めたものが4回と、新人騎士の訓練と比較してもハードなものだとお兄様が教えてくださりました。

 特に魔術込みの手合わせは慣れていないと1回行うだけでも相当大変なものとなるそうです。それを回復薬を6本消費したとはいえ、こなすのはなかなかのものでしょう。


「アレクサンドラ嬢だけじゃなく、グレイも相当な上澄みだったのだな...」

「ノア様、先ほどのジャクソン様と同じことを仰っていますわ。それにしても、グレイソン様、大丈夫でしょうか?」


 現在のグレイは床に寝そべり空を仰いでいます。


「落ち込んでいるわけではありませんから平気ですわ。そうですわよね?グレイ」

「当たり前だろ。こんなところで落ち込んでいられるか」

「あれは、空元気というのではないか...?全敗していたようだが...」

「ノア、全敗だったが、今回は惜敗だ!リックを回復薬を飲むまで追い詰めたんだ!なかなかの成果だろ!」


 グレイの言葉にノア様は驚きつつも呆れていました。


「アレックス、グレイは本当に大丈夫なのかい?」

「マシュー様、心配されなくともいつものことですわ。それに、今は即効性の回復薬を使うのは控えたいですし、せめて立てるくらいまで自力で回復してもらわなければなりません」

「なるほど...?手合わせに使っていたのは即効性があるものだったよね?」

「ええ。お兄様も学園長に用事があると仰っていたのでそこまで時間は取れませんでしたから」


 今回、私が用意したのは即効性の高い回復薬です。魔力と体力を両方回復できる優れものではありますが、それ故にいくつかの欠点があります。

 まず、ある程度体力や魔力を削らないと体調を崩す可能性が高いこと。1日に使用できる回数が決まっていること。そして、使い過ぎると反動で一時的に魔力や体力が回復しづらくなることです。


「改良は考えてはいるんだよね?」

「もちろんです。ですが、そもそも使用する機会が少ないので後回しにしてしまっていて...」

「アレックス様は魔力力が多いので枯渇することが少ないのですよね?」

「それもありますわね...」


 実際は魔力が切れたとしても、そもそも持っていないことがあるので物理攻撃に即切り替えるのですが...。

 今回は手合わせのあ内容わかっていた故に用意できたものです。普段はあまり調合すらしません。


「グレイ、体調はどうですか?許容量を超えた、ということはないと思うのですが...」

「前よりも飲む量が減ったから。気持ち悪くなることないと思うが、移動はもう少し待ってくれるとありがたい」


 予備の薬を出すことが無くて安心しましたわ。

 絶対に味に難癖をつけられますもの。


「アレックス、改善点を言ってくれないか?」

「なんですか?急に?」

「今回は回復薬を飲ませることに成功した。次は2本目を開けさせるためにどうするかだ」

「なるほど...それはぜひとも反省点を潰さねばなりませんわね」


 お兄様が手合わせで回復薬を使われることは滅多にないこと。次、グレイとやる時は万全の状態でしょうし、そこを崩せるようになればかなりの快挙と言えるでしょう。


「そういえば、赤のクラスでは実習で回復薬をどれだけ飲んだかを競うのだろう?」

「ノア様、アレックス様の前でそれを言ってはいけませんわ」

「は?」

「学園祭の時に、色々とありまして...。」


 グレイが私を訝し気に見ます。

 グレイだって同じことを思うはずです。私は間違っているとは思いません。


「えっと、アレックス、聞いてもいいかな...?」


 マシュー様に遠慮がちに尋ねられてしまいました。グレイも話せと視線で訴えかけています。


「...防音の魔術を使いますわね...」


 さすがに赤のクラスの生徒がいたらもめ事に発展しかねません。


「それで、いったい、何が...?」

「グレイ、1つ質問をします。意図を深く考えずに答えてください」

「わ、わかった」

「もしも、赤のクラスと実習を行った際、回復薬が余っているとします。一方で共に実習を行った方が最後の最後で回復薬を使い終えた状況で魔獣が現れました。貴方はどう戦いますか?」

「その者に魔獣の攻撃があまり向かないようにしつつ迅速に終わらせることを心掛けるな」

「その後、その方が回復薬を使い切ったと誇らしげに話しているのが聞こえてきました」

「まあ、使い切ってまで生き残ることができたなら良いのではないか?次からは使う本数を減らせたら成長というものだろう」

「以上です」

「何がだ!?オレは今いったい何を聞かれたんだ?」


 ノア様もマシュー様も呑み込めていないように感じられます。

 これは、伝わっていないようですわ。さて、どうしましょう...。


「アレックス、お前がアウロラ様に話したことを一言一句違わず言ってみろ」

「にゅ、ニュアンスがあっていれば良しとしていただけますか?」

「いいだろう。言ってみろ」

「え、えっと、その、」

「お前が防音魔術を展開したんだ。不味い発言でもオレ達なら胸にしまえる。早く言え」


 視線が一気に向けられました。...仕方がありません。


「えっと、回復薬の消費量を誇るということは、自らの実力不足を見せびらかしているようなものでは、と...」


 あ、マシュー様の顔が引きつっていますし、ノア様も目線を逸らしてしまいました。


「も、もちろん、その場で聞いている方は少なかったですし、何より、回復薬の売れ行きが凄かったですので、アレックス様を非難される方はいらっしゃりませんでしたわ」


 アウロラ様、やはり聞く人が聞いたら反感を買う発言だったのですね...。反省いたします...。


「アレックスは、間違ったことは言っていないのではないか?疑って悪かったな」

「グレイ!?」

「グレイ、大丈夫ですか?お兄様との手合わせで良くないところを打ちましたか?」


 グレイが私の主観的な意見に全面的に肯定するなんて、少し心配です。


「お前の中でオレはどういう存在なんだ?」

「私の主観的な意見に客観的な批判をくださる調整役です」

「ったく、回復薬やポーションは不足を補うためのものだろ。その消費量を競うなんて実戦とか素材収集だったら死ぬぞ。特に緊急用のものが切れたら猶更リスクが上がるだけだろ」

「グレイの意見にも一理ある、か...」


 ノア様?それなら私の意見にも賛同してくださいませ。


「確かに、そう言われるとアレックスの言葉は強いけど間違ったことは言ってないね」

「今後は思っていても口に出さないように気を付けますわ」

「いや、むしろこのことをリックに伝えてみろ。面白いことになるはずだ」


 グレイが何やら悪い顔をしていますが、お兄様に伝えるべきことではあるのでしょう。

 毎年、新人教育に頭を悩ませていますし。

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