鍛錬の練習
あの後、ダリア様はご家族と話し合った結果、引き受けてくださると仰ってくれました。
現在の家としての立場や、ダリア様個人の立場、そして本人の意思を尊重した結果だそうです。また、学園内で私やアウロラ様と定期的に報告会を行い、ダリア様のサポートを適度にしていくことにもなりました。
私だけでなくアウロラ様にも気を遣わせて申し訳ないと恐縮していましたが、神殿側の状況や動向、ユウリ様について探りを入れる必要があるのでこちらとしては問題ないことをお伝えすると少しだけ肩の力を抜いてくださりました、
「それで、ダリア嬢は大丈夫そうなのか?」
「ええ。どうにか上手くやられているようですわ。ダリア様のお家はそれなりに発言力がございますし、そのご令嬢であるダリア様も貴族として欠点のほぼない教育を受けられています。断る理由があちら側にはないでしょう」
「それに、お前と一度対立していると認識されているから余計にな」
「その通りですわ。グレイ、先ほどからノア様とジャクソン様の顔色が悪いのですが心当たりはありますか?」
私達が呑気な会話をしている間、ノア様とジャクソン様はこちらを凝視して顔を青ざめさせています。
「アレックスが何かやらかしたんじゃないか?」
「そんなことありませんわ。グレイがまた何かしたのでしょう?」
「...。お2人とも、剣のお稽古をしながらお話する内容ではないと思うのですが...」
「「え?」」
本日は、グレイがお兄様と鍛錬をするための練習をしておきたいと仰ったので闘技場をお借りしております。普段使用している部活も今日はお休みで鍛錬用の道具も多数あるので非常に使い勝手が良いです。
「息を乱さず、激しく打ち合いながら話す内容ではございませんわ...」
「まだ準備運動の段階でしたので、つい、」
「あれでか!?アレクサンドラ嬢は分かってはいたが、グレイもそちら側だったのか...」
「どういう意味だ?ジャック」
「それにしても、私が練習相手で良いのですか?私とお兄様のスタイルは違いますし、何より私はお兄様に見劣りしてしまうのですが...」
「アレクサンドラ嬢、懸念すべきはそこではない...。むしろ当然のように始めたからこちらは驚いたんだ」
「そうですわよね...グレイ、やはり私ではなくノア様と練習された方が良いのでは?」
「何故そうなるんだ...?」
だって、力技だと私は分が悪いですし、正統派な戦い方をする相手とも練習した方が良いと思うのです。
「リックはまあ、型をきちんと収めて隙が無いからノアやジャックと似たタイプではあるが、本気出したらそれをやめるだろ?なら最初から予測不能な戦い方を見て慣らしておきたい」
「それでは私が常に型を無視しているみたいじゃないですか」
「その通りだろ」
否定はできません...。しかし、力が弱い以上工夫しなければ生き残ることなどできないのです。
「と言いつつ、何故先ほどから動きを止めのだ!?準備運動ではなかったのか?」
「あら、これから勝負に入るのですもの」
「その通りだ。いくぞ、アレックス」
「どこからでもかかってらっしゃい。泣き顔を晒して差し上げますわ」
一度距離を取ってから勝負は始まりました。
グレイは鋭い連撃を放ってきます。力で押し通すつもりなのでしょう。しかし、いつまでもそれを続けることは難しいものです。
ほんの一瞬、動きが鈍くなりました。その隙を狙います。
「ぐ、よけ、たか」
「あら、当てたと思いましたのに...」
形勢逆転です。
力を込めるのはほんの一瞬、剣を振り切る時で良いのです。
滑らせるように滑らかに急所を狙う、と見せかけて足を狙います。
「な、」
反応の速いグレイはすぐに避けようとします。
そして、足元に集中するあまり、剣を握る手への配慮が疎かになる。私は力を込めてグレイの手から剣を落としました。
そして、のど元に剣を突き付けます。
「今回も私の勝ちですわね」
「くそ、」
「以前より反応速度は上がったのではないですか?」
「余裕そうに言いやがって...それで、今回の反省点は?」
少し悔しそうにした後、グレイはいつも私にフィードバックを求めます。
すぐにでも反省点を潰したいのでしょう。
「...ノア殿、あの2人何をしていたか見えたか?」
「細かくは見えなかったが、一瞬でアレクサンドラ嬢が戦況を覆してしまったな...」
「...あの2人、本当に何故赤のクラスではないのだ...」
ノア様とジャクソン様は何やら仲良くお話されているみたいです。
「アレックス様もグレイソン様もお疲れ様です。こちらのタオルをお使いください」
「アウロラ様、ありがとうございます」
「それにしても、凄かったね...。惚れ惚れするような動きだったよ」
「それにしても、今日も本気を出さなかったか...」
「きちんと真面目に向き合ったのですが...」
「アレックス、休憩したらもう1戦だ!今日こそは勝つ」
グレイの不屈の心が疼いてしまいました。こうなると体力が切れるまで非常にめんどくさいです。
「グレイソン様、アレックス様は私にも剣術を教えてくださると約束してくださりましたの。一人じめはいけませんわ」
「僕も指導してもらう予定なんだけど...」
「グレイ、私以外と戦ってみるのも良い経験ですわよ。ほら、ノア様とジャクソン様がこちらを見て鍛錬に加わりそうにしていますわ」
「ち、ちが、」
グレイは嬉々とした表情でお2人に元へ行かれました。
私は休憩をしつつアウロラ様とマシュー様に基礎的な動きの指導を始めました。




