美点
「まさか、グレイまでアレクサンドラ嬢の側につくのか...。」
「ジャック、すまん。今回に関してはアレックスの方が的を射ている」
「それでは、私がいつも見当違いを起こしているようではありませんか。非常に遺憾ですわ」
「間違ってないだろ」
さて、マシュー様とノア様には中立の立場としてこの議論を見守っていただくことになりました。
「アレクサンドラ嬢、わかっているとは思うが、必要以上の口撃でジャクソン殿の心をへし折らないように」
「そのためにグレイがこちら側にいらっしゃるのです。問題ありませんわ」
「早速雲行きが怪しくなってきたな...。マシューはどう思う?」
「現状、アレックスが優勢だと思いますが、ジャクソン様が如何に情で揺さぶるかがポイントになってくると思いますね
「なるほどな。では、アレクサンドラ嬢から主張を聞いてもいいか?」
「もちろんですわ」
意外とノア様もマシュー様もノリノリなのですね。このような形式の議論はあまりしたことがないので当然と言えば当然なのでしょうが。
この中で唯一楽しまれていないのはジャクソン様のみとなるのでしょう。
「現在、学園と神殿の2か所に聖女候補が降臨しましたわ。そのことは国中の多くの方々の周知の事実となっています」
「だからこそ、立場を固めるために、」
「話は最後まで聞いてくださいな」
「あ、はい」
ジャクソン様は口を噤みました。
「国民の多くには『聖女伝説』が浸透しています。美しき聖女は王族やその他の有力貴族と結ばれるもの、そう願っている方々も多いことでしょう。神殿側もその理想を利用して接触してくる可能性があるということです。そうなった場合、最も攻撃を受けるのがアウロラ様となる可能性が高いのです」
「だが、アウロラは関係ない、私がアウロラを愛し、アウロラが私を愛しているからこそ結ばれるのだ」
「この場合当人同士の感情は関係ありませんわ。人々は興味深い美しいドラマを求めるのです。特に厄介なことが起こっている事実をジャクソン様はご存知ですか?」
「厄介な事実?」
首をかしげているあたり、本当に把握されていないのでしょう。
「現時点で聖女候補に優劣があるのです。ご本人の資質や学ぶ姿勢に要因はあると思いますが、非常に厄介な問題です」
「しかし、今回のものとは関係ないのでは、」
「時期や状況によってはそうも言ってられないのです。教養や実力で勝てないと踏んだ場合、最も接近されるのは王族ですわ。確かに私とオスクリタは外堀を埋めるために大々的に行った方が良いと進言は致しました。しかし、方法を誤ればそれは批判の対象となってしまうのです。私はその批判にアウロラ様が巻き込まれることは看過できかねますわ」
「アレックス...。それは遠回しにジャックなら批判の対象になっても問題ないと言ってはないか?」
「グレイは私の味方なのですよね?さすがにそこまでは申し上げませんが、まあ、責任を取られるのが上の立場というものです」
「ジャクソン殿、何か意見はあるか?」
私の一通りの発言が終わったと見做したのかノア様はジャクソン様に話を振りました。
「いや、舞い上がり過ぎていたのだと思う。愚かな私を止めてくれたアレクサンドラ嬢とグレイには感謝を申し上げる」
こういう素直な所は美点なのでしょう。
「さしあたって、どのような発表にすればよいか皆に意見を聞いても良いだろうか?」
ジャクソン様のお願いに皆様首を縦に振りました。
厳しい意見がありつつも、やはり友人のお目出度いことは素直に祝いたいのです。
それからジャクソン様には過去にあった聖女伝説並びに国民が国家予算についてどのように考えているのかをグレイと共に大変詳しく解説いたしました。
話を終えた後のジャクソン様の顔色は大変悪くなっていましたが、それも成長に必要なものだとして目を瞑ることに致します。
ある程度意見がまとまったら別の問題について考えなければなりませんが、今はアウロラ様が幸せそうなので話がまとまるまでは考えないようにすることにします。




