やはりグレイは良い友人
「なるほど?面白い本ではあるな...」
「そうでしょう?テオにはまだ早いと思いますのでこちらに持ってきましたの」
週明け、私は購入した本を部室に持ち込んでいました。
グレイが興味を示したので紹介したところ、私が知る中で1番興味を持ってページを捲っています。これは非常に珍しい光景です。
お勉強はそこそこできるというのに本人は実戦がいいと、座学は若干蔑ろにしていた印象でしたが、古代文字で書かれた本を読めるあたり、やはり見くびってはいけないようです。
「いや、お前ほどスラスラと読むことは出来ないからな?」
「その割にはページを捲るのが早いではありませんか」
「なんとなく、わかるところがあるからな」
「アレクサンドラ嬢、グレイはこれでも青クラスでは成績上位に入っているんだ」
「まあ、そうでしたの?」
「成績首位のノアには言われたくないし、2年の学力ではありえないほどの知識量のお前にも言われたくないがな」
本を眺めながら拗ねるように言ってしまいました。
「でも、なかなに興味深い内容でしょう?リリーの仰っていた通り掘り出し物が見つかってよかったですわ」
「アレクサンドラ嬢は他にどんな本を買ったんだ?」
「弟のテオのために魔術基礎の本、それから今グレイが読まれています戦術の本、それから、香料の本ですね」
「香料?その薬草学の本ではなくか?」
「あら、こちらは私の私物ですわ。オリヴィア先生にお貸しするために持ってきたものですの」
確か、おばあ様が誕生日に送ってくださった本です。
かなり貴重な文献でなかなか人にお貸しする機会はありませんが、オリヴィア先生ならば問題ないでしょう。オスクリタも先生に興味を持たれていましたし、おばあ様もお会いしてみたいと仰っていました。
「すまない、少し遅くなって、あれ、僕が最後じゃなかったようだね?」
「マシュー様、ごきげんよう」
「やあ、アレックス。あれ、グレイが熱中して読書を...?」
「以前、書物の交流市にて購入した戦術所に興味を持たれたみたいでお貸ししていましたの」
「なるほど?にしてもすごい集中力だけど...」
普段の騒がしい様子からは想像がつかないのでしょうか?お気持ちお察ししますわ。
「本日はアウロラ様は少々遅れられるようで、ジャクソン様は公務があるそうですわ」
「ジャクソン様は最近忙しそうだね...」
「聖女関連で色々とありますものね...」
主に神殿との話し合いが忙しいようです。
それに加えてアウロラ様との婚約発表の準備まで。そちらに関しては非常に嬉しそうな顔をされています。楽し気に意見を出してはアウロラ様に却下され、そしてまた懲りずに意見を出す。
アウロラ様も呆れつつもどこか幸せそうに見えます。
「アレックス?」
「いえ、少々考え事をしていただけですわ。そうです、マシュー様にもお見せしたいものがございましたの」
「僕に?」
「ええ。ぜひこちらを」
私が香料に関する本を出すとマシュー様は瞳を輝かせました。
「これも、交流市で?」
「ええ。リリーと仲の良い店主からいただきましたの。出店はもうおしまいにするとのことでいただきましたの」
「すごい...これは、貴重なものじゃないか」
「やはり、マシュー様は分かってくださいますか?一目見た時に思いましたの。廃れたと思っていた昔の技術が書かれているだなんて本当に貴重ですわ」
「これは、少し読んでみてもいいかな?」
「もちろん、と言いますが、こちらはマシュー様に差し上げようと思いまして持ってきたものですわ」
「え?こんな貴重なものを?」
「もちろんです」
収穫祭の時はかなり助けていただきましたし、何より、パートナーの証交換にて素敵なブローチをいただいておきながらその場でハンカチしかお渡しすることが出来なくて少し後悔しておりました。
「普段から助けていただくことが多いのでそのお礼を兼ねて受け取っていただけないでしょうか?」
「でも、本当に、こんな貴重なものを、いいのかい?」
「もちろんですわ。ぜひ、受け取っていただけると嬉しいです」
マシュー様は少しはにかみながら受け取ってくださりました。
やはり、眩しい笑顔の方ですね。こうしてファンを増やしているとはさすがです。
「アレックス、オレには何もないのか?」
「グレイにですか...?」
「おい、なんだ、その目は?オレもさんざん世話を焼いただろ。主にブレーキ役として」
「婚約者のいらっしゃる殿方に贈り物だなんて...」
「棒読みで言うな。お前、そんなこと気にするような奴じゃないだろ?」
「そんなことありませんわ。本をお貸ししますので転写してくださいな」
「...マシューと扱いの差があり過ぎないか...?」
「そんなことございませんわ。しかし、グレイは贈り物よりも実践訓練の方が嬉しいのでは?」
「ということは?」
「ご安心ください。お兄様には話を通してあります。思う存分動けますよ!」
「おまえ...」
グレイが顔を引きつらせてしまいました。
何故でしょう?騎士団の部隊長との手合わせなんてなかなかできることではありませんし、普通はもっと喜ばれるものでは?
「お兄様もグレイと久しぶりに手合わせをしたいと仰っていましたし、良かったですね、グレイ」
「...。せめて、傷薬と回復薬を用意してくれないか?」
「まあ、グレイがそんなことを仰るだなんて珍しいですね。腕によりをかけて新たなものをご用意いたしますわ」
「いや、普通のを...」
いくつか試したい調合がありますし、良い機会です。
1番効果が良さそうなものをグレイに差し上げましょう。
「グレイ...元気出せ...」
「慰めるなら、お前もともに実験台になれ、ノア」
「それは嫌だ」
私は薬草学の本を開きながらいくつかの薬草に目星をつけました。
屋敷で栽培しているものを中心に調合のレシピを組み立てるとしましょう。




