01-26
「よく教えてくれる人がいたね。目を合わせていたら、今頃はどれかの栄養になってるわ。」
『俺頑張ったわ、マジで。それで見ないようにしながら大学を卒業して就職したら目を合わせてもいないのに、幽霊が俺を追ってくるようになったんだ。』
エルミアはラウルを見つめた。
見つめたと言うよりは、軽い霊視に近いものだ。
幽霊が見えるなんて、日本で探せばそこそこにいる。
だが、追ってくるとなると見える以外の何かがラウルにあるのではと思った。
『攻撃とか何かをしてくる事はなくて、ただずっと外を歩くと一定の距離を空けたままで、一度だけ幽霊の真横を通った時、慌てたように何時もの距離になるぐらいに離れたんだ。』
「それもまた珍しい……(あの変態も狙ってたけど、特に珍しい感じはしない。魔力が強いぐらいか? もしかしたら、今まで見てきた中で一番強いかも。)」
ラウルの話を聞きながら、エルミアはラウルから感じるものから狙われる理由を考えた。
一定距離を空ける事にも疑問が残るが、それよりもラウルの魔力に、エルミアは気になった。
可愛らしい毛玉姿は一見非戦闘のペットにしか見えない。
エルミアが簡単に抱っこ出来るお手軽サイズの何処に膨大な魔力があるのか、謎である。
弱い魔物がたまたま強い力を持って生まれ、強い魔物の糧になるのが、自然的な事だが、ラウルは仮にも転生者だ、たまたまなんて事はない。
『だから、あまり気にならないようになったんだけど、それが駄目だったみたいだな。』
「何があったの?」
『何時も通りに会社に行って、普通に仕事してたら、何かが後ろで割れた音がしたんだ。振り向いても何も無くて、気にしないで、その日は独りで2時間ぐらい残業したんだ。』
「それで?」
『帰ろうとパソコンを消して立ち上がった時、「邪魔なものが無くなった」って声がして、振り向いたら鋭い何かが首にあたって、何もわからずに暗くなって…………多分、殺された。』
「…………ラウル。」
『で、気付いたらこの姿で、今向かってる場所の奴らに助けられたんだ。』
殺されたと言うラウルに、エルミアは言葉が出てこなかった。
ラウルが生きていたのは日本だ。
普通に生きていれば、寿命を全う出来る国で、どの国、世界よりも安全と呼べる場所。
そんな世界で得体の知れないものに殺される恐怖など、エルミアは知らない。
言葉が見つからないエルミアは、静かにラウルの頭を撫ぜた。




