01-18
ラウルがそんな事を考えてる時、エルミアはある一点に対して少し焦りだしていた。
「……(ヤバイな、思ったより魔力が世界に馴染んでない。)」
昼間、熊(仮)を相手にした時は、簡単にお遊びレベルの魔術を使って凍らせる事が出来た。
だが、今男に気づかれないように詠唱をしているのだが、思うように魔力が練れないのだ。
日常的に使っていた術は必要な魔力が少ないため直ぐに出来たが、それよりも多くの魔力を必要となる術を使おうとしたら、なかなか集まらなかった。
今までの経験から、世界ごとに魔力の性質が違い、それに体が馴染むまでは普段通りには使えないのを、エルミアは知っていた。
魔力を使った身体能力はあまり変わらなかったため、他の魔力も直ぐに馴染むと思っていたのだが、エルミアが考えていたよりも性質が違ったらしい。
「……っ(さて、どうしたものか……)」
焦りだしたと言っても、意外と冷静に考えられる時点で、あまり焦っていないのかもしれない。
戦闘中、作戦通りにいかない事はよくある。
最初に考えた策が中々実行出来ない事に焦りはあった。
だからといって、勝てないという事ではなく、ただそれが一番負担なく終わるだけの事だった。
エルミアだけなら、血が出ようが、腸が出ようが関係無しに加減無く終わらせられる。
だが、おそらくラウルは戦い自体に慣れていない。
男を目にしただけで、脅えてた様子から、あまり色んな意味で戦い方は抑える必要がある。
だから、それが出来ないなら、他の方法にするだけなのだが、魔力の都合上出来る事は限られてくる。
銃とナイフを持つ手の甲に浮かぶ青い薔薇は、まだ薄い色をしている。
幸運な事に、男の攻撃は力はあるものの、単調なものしかなく、更にエルミアにまともに一撃が入らない事から、どんどん大振りなものになっている。
避けて下さいと言ってるようなものだ。
馬鹿力以外は、何とも楽な相手だ。
視覚的、精神的には強敵だが。
「下手に斬って、見たくないものが見えるのは、困るんだよな。」
「アラァ、イクラデモ見セテアゲルワヨ?」
「見たくないつってんだよ。」
男の言葉に、エルミアの手に力が入る。
ペースを乱されてはいけないが、つい一瞬ではあるが乱れてしまう。
「……精神的鍛練必要かな……っ!」
つい乱れてしまうペースに新たなる鍛練が必要かと呟いた瞬間、集中が途切れたのか男の右に胸ぐらを掴まれ、ラウルが隠れている岩とは別の岩に投げ飛ばされた。




