01-16
「だぁかぁらぁ、そういうの効かないわよぉ?」
「……わかってるよ、んな事。ずいぶんと、特殊な体質してるよね。」
男が自分の頬に手を添えて、バカにしたような笑みを浮かべながら、小さく首を傾げた。
エルミアの抜いたナイフが、どう見ても普通のナイフだからだ。
すると、エルミアの声が少し低くなった。
男を見る目付きが鋭くなり、冷たさを含んでいる。
完全に敵と認識したのだ。
抜いたナイフを逆手に持ち、軽く息を吐いた。
そしてゆっくりと数歩歩き、直ぐ男に向かって走り出した。
すると、一気にスピードが上がり、ラウルが瞬きした瞬間に、男の懐に、ナイフの間合いに入った。
「なっ……だけどっ。」
エルミアが一瞬にして懐に入った事に、男は驚いた。
だが、男の目にはエルミアが持っているナイフが自分には効かないと思い、ナイフからは避ける事はしなかった。
むしろ、チャンスと思い、その場所から少し下がり、右腕を振り上げて爪を立てると、エルミアに力を入れて振り下ろしてきた。
「―――――――――」
エルミアが小さく何かを言った。
ラウルの目には、エルミアの口が動いたのがしっかりと見えたが、何を言ってるかまでは聞き取れなかった。
だが、エルミアの口の動きが止まると、武器を持つ両手の甲の上に青い薔薇の紋章が浮かび上がった。
エルミアはナイフを逆手持ちから順手にペン回しのように持ち替えると、男が振り下ろしてきた右腕を左に避けて、ナイフを振り上げて小指と薬指だけを斬り落とした。
「キャーー! あたし、あたしの指が何で!?」
「魔鉱石を使ったナイフに、属性を加えた基本攻撃だよ。無属性が効かないなら、こうするでしょ。」
最初の銃弾は何も属性を付加してない普通の鉛玉。
それが効かないのであれば、武器に属性を付加した攻撃に切り替える。
そのため、出したナイフはそれ専門のナイフだ。
せめてナイフの材質ぐらい見抜けと、エルミアは再び逆手に持ち替えた。
「あたしの指が……アタシの、綺麗ナ指が…………男ジャナクテ、オマエカラ、食ッテヤル。」
「指2本ぐらいで……オカマって短気だね。」
男の目付きが変わり、獲物を狙い怒りに任せた獣のようになった。
たかが指2本だが、よほど頭にきたのだろう。
一番の標的をラウルからエルミアにと変え、考え無しなのか右腕で何度も攻撃を仕掛けてきた。




