01-14
エルミアの足は早かった。
森の中を走っているにも関わらず、障害物であろう木の根や地面の窪みなど、全て無かったかのように避けている。
『流石、軍人だな。』
「そりゃどうも。この近くで少しでも良いから開けた場所ってある?」
『それなら、5分ぐらい走った先に小さな原っぱがある。』
「じゃあ、そこだね。」
訓練で森や山を使う事はよくあったため、慣れた足どりで進んで行く。
ラウルに聞き行き先が決まると、エルミアは更に走るスピードを上げた。
少しでも速く原っぱに行き、男を待ち構える体勢をとりたかったからだ。
『アイツ、来るのか?』
「キミを諦めない限り追ってくるだろうね。ただ、ピンヒールで森の中だから追い付きはしないでしょ。」
エルミアが茂みに入ったのはそれもあった。
ピンヒールで森の中を走るなんて、誰がやってもバランス崩して遅くなる。
そうなれば、こちらが隙を狙えるものと考えたのだ。
「アイツに追いつかれる気はn……」
「追い付いたわよぉ、お嬢ちゃん。」
「『ピンヒール早っ!?』って、マジかよっ。」
ピンヒールで追い付く事は無いと思った瞬間、男はエルミアの横に並んだ。
もちろん、自分の足で走ってだ。
エルミアは、ついラウルとツッコミを入れてしまうも、更にスピードを上げて走り出し、男から距離を開けていく。
だが、男もそれに合わせるようにしてスピードを上げてきた。
『エルミア、アイツ早い! マジで早い!』
「うるせぇ!! 流石にピンヒールであそこまで早いなんて予想外だよ!」
ラウルが更にエルミアの腕の中で騒ぎだしたため、エルミアは抱える腕に力を入れた。
余程怖いのか、身を微かに小さくしている。
『やだ、やだ、転生したばっかりなのに、あんな変態に喰われるとか!』
「あー! ラウルうるせぇ! 勝つから、お前守って、あの変態に勝つから、少し落ち着け!」
『……エルミア?』
「〘ブルーローズ〙はこれぐらいじゃ負けないから、今だけで良い、私が勝つ事を信じろ。」
エルミアは、走ったままラウルを自分の視線まで、両手で持ち上げて、しっかりとした強い笑みを見せた。
ラウルは、エルミアの笑みを見て落ち着いたらしく、小さく頷いた。
それをしっかりと見たエルミアは、改めてラウルを片手で抱え、少し落としていた走るスピードを上げ治して、原っぱへと走った。




