01-13
エルミアが体勢を直しながら、先ほどいた場所を見れば、少しだが地面が男の手によって砕けていた。
避けなければ、怪我確定である。
それを見たエルミアとラウルは口をひきつらせた。
『……マジ?』
「見たままの馬鹿力かっ。」
伸ばした手を振り下ろしただけのように、エルミアの目には映った。
強化系の術等を使った様子もなかった。
だが、自分がいた場所は砕けているから、素の力だけでかなりの力が入っていた事になる。
ゴツイマッチョは伊達ではなかった。
避けて正解だった。
構えはしたが、エルミアがそのまま受け止めていれば危険だったかもしれない。
エルミアは、片手でラウルを抱え直しながら男を見据えた。
爪や腕が伸びたなら、攻撃してきたなら、人間だろうがそうじゃなかろうが、こちらが攻撃出来る口実が出来た。
そして、避けた際に下に向けてしまった銃口を、改めて男に向け、額、左胸、腹と3ヶ所にめがけて3発銃を放った。
「嫌ねぇ、鉛は嫌いなのよぉ」
勝ちにいく為に狙った場所だった。
普通に当たっていれば、運が良くても重傷か致命傷になる。
だが、放たれた銃弾は男に当たったが、全てすり抜けて背後にあった木に命中し、男自身に傷は無い。
『はぁっ!? 何あれ!?』
「あー……」
当たったのに!?と、ラウルがエルミアの腕の中で騒ぎだした。
端から見たら完全に当たっていたであろう銃弾が、何も無いかのようにすり抜けたのだ、普通なら驚くのも無理はない。
だが、逆に銃を放った本人であるエルミアは、全く驚いてなかった。
銃弾がすり抜けたぐらいなら、過去に何度も見たことがある。
普通の銃弾が効かないならと、エルミアは次の手段を考えながら、視線だけを動かして、この場所の状態を見渡せば、この場では少し不利だと判断し、深く深呼吸した。
「……移動するよ。」
『うわっ……!?』
「あら、鬼ごっこかしら?」
すると、ラウルを抱えたままエルミアは、男に背を向けて茂みの中に走り出した。
勝つためには、先ず不利な場所では戦わない。
戦術の基本として、エルミアが大切にしている事の1つだ。
移動出来ないなら、その場で戦うしかないが、男はまだ余裕を見せているため、簡単に走り出せた。
男はどこか楽しくでもなってきたのか、怪しい笑みを浮かべながら、数歩歩いてからゆっくりと走りだし、エルミア達を追いかけだした。




