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《研究室の光》

「全く……まったく、まったく、まったく、まったく、まったくっ!!」


 薄暗い魔王城の廊下でズンズンと足をふみならして歩く少女が一人。

 後ろで二つに束ねられた金色の髪を揺らして、体中から怒りのオーラを発散している少女の名はソフィア。

 とある世界の(ひんがし)の方に存在すると言う恐怖の代名詞、魔王族の一人。肩書きは現魔王の第三王女である。


「……一体なぜ、ソフィア様は、あれほどお怒りになっておられるのですか?」


 ようやく目を覚ましたバルジャックが滝のような汗をかきながら小さな声で、隣を歩くエミリアへと問うた。


「……知りたいのですか?」


 ぞっとするほど冷たい声でエミリアがそう呟く。彼女の何の感情も宿していないガラス玉の様な瞳がこちらに向けられて、バルジャックは震え上がった。


「い、いいいいいいいえいえいえっ!! めっそうもございませんっ!!」


 ちぎれるのではないだろうかという勢いで首を良くに振るバルジャックは、今度は別の声によって体をビクリと跳ねさせることになった。


「おいっ!! バルジャック! 何をもたもたしている!? 早くついてこいっ」


 目を向ければ廊下の先には鬼子母神ですら恐れ入るオーラを纏ったソフィア。

 

 バルジャックは目からも汗を流しそうになっていた。




***




「やれやれ、まだまだ第三王女は子供ですなぁ……」


 結局役に立たず、ソフィアの怒りを爆発させただけの黒いモノをしまいながら、ノウン・ミシェール博士はぼやく。

 怒りを爆発させたソフィアはあろうことか、動かなかった原因すら解明する前にこの黒いモノを見るも無残な姿に壊してしまったのだ。これほどまでに完全に壊されてしまってはさすがに博士にもどうしようもない。処分するしかないようだ。

 

 所で、いまだに椅子に腰かけたままの魔王の側近が酷く面白そうにこちらの様子を見てくるのも博士にとっては気に入らなかった。


「……一体あなたはいつまでここにいらっしゃるので?」


 コーヒーも飲み終わり、ソフィア達も退散したと言うのに全く部屋から出ていく気のない魔王の側近に、少々言葉に棘を含ませながら尋ねてみる。


「……ええっと、すこし博士にお尋ねしたいことがあるのですが……」


 と、博士の質問を完全に無視し、口元をニヤケさせながら魔王の側近は逆に問い返してきた。


「第二王女の失踪、博士自身はどうお考えでしょうか? ぜひともお聞かせ願いたい」


「……私は探偵では無いのだから、そんなの分かるわけない。 そんなことのためにいつまでも私の研究室に要られては困るのだけれども?」


 大きくため息をついた博士は、瓦礫同然と化した自らの発明品を抱えてとある部屋へと向かう。


「お手伝いいたしましょうか? 博士」


「結構っ!! 所で君、いつまでもいるのはかまわないが私の物に不用意に触らないでくれたまえよ!?」


 そう吐き捨てると博士は側近をそのままに、その部屋を後にした。




 魔王城の一角に設けられた研究室。

 研究室と言っても、ノウン・ミシェール博士以外使う者などいないので、博士の私室と言っても過言ではない。現に博士は飲食寝泊りをほとんどこの部屋でしているのだ。

 自分の家もあったはずなのだが、もう長いこと研究室から出ていないために自宅の場所がどこにあるのかも覚えていないという始末。


 まぁ、博士自身が気にしていないし、それについて他人がとやかく言う必要はない。

 

 実のところ、研究室の広さはその辺の民家など比べ物にならないほどに広い。無論博士の元々の自宅よりもこの研究室の方が広いのだ。博士が家にわざわざ帰らなくても十分快適というわけだ。まぁ広いだけではなく、たくさんの部屋があって迷路のように入り組んでいるから性質(たち)が悪いのだが……。

 たくさんの部屋に自分の研究の成果を置けるのはいいのだが、時々自分でも何が何だか分からなくなってしまうことがあるのだ。急いでいるときなどは非常に困る。

 

 だが、わざわざ家に帰るのも面倒なので博士の中ではこの問題がグルグルといつも宙を回っている。


 博士はぶつぶつと文句をこぼしながら、二、三度部屋を間違えて、漸く目当ての部屋へと辿り着いた。


「本当に、この空間は合理的でないっ……一体どんな設計師が作ったのやら……」


 重たい鉄の扉をゆっくりと開けて博士はその中へと入る。

 ……いや、入ろうとした。入る直前に「博士っ」という呼び声が聞こえたので足を止めたのだ。


「……一体何だね君は……まだ帰っていなかったのか」


 にこやかな笑顔を向けてこちらに歩み寄ってくるのは魔王の側近。彼の名前は知らないし、彼自身に興味もないがそろそろ鬱陶しくなってきた。


 もう何でも良いのでさっさと帰ってほしい。

 自分にはこれからやらなければならない(・・・・・・・・・・)ことがあるのだ。

 

 魔王の側近はカツリカツリと足音を立てて、とうとう博士の目の前までやって来ていた。


「……博士、言っておりませんでしたが実は私は魔王陛下の側近だけでなく、王位継承争いを潤滑に行えるように監視する、言わば監視官の役も受け賜わっているのでございますよ」


「? ……それがなにか?」


「ええ、ですのでこのように魔王族の王位継承争いが滞るような事態が起これば我々は四方に手を回し、その原因を排除するように動かなくてはならないのです」


「……ほう、では尚更こんなところで時間をつぶしている暇は無いんじゃないのかね」


 博士は気味の悪い脳味噌頭を少しだけ震わせて笑うと、彼から視線を外して部屋へ入ろうとする。

 が、側近の口から出た言葉で一瞬体が固まった。


「……実は第二王女であらせられる、レイミール様が失踪なされた日の夜、この研究室から奇妙な光が漏れ出ているのを見たという者が城内におりまして…………一体博士は何をなさっておいでだったのですか?」



 



 思ったより進まんかったなぁ……

 うつらうつらしながら作った話なのでなんかおかしいところ多いかもしれないですね、今回の話は。

 とりあえずそろそろ本格的に物語は動く……はず。(毎回そう言ってる気もしなくもない)

 次回もお楽しみに。

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