王女を救う勇者の一歩
「……ちょっと……魔術師さん。これは一体どういうことなんです?」
ふわりふわりと宙を漂う玉を追って、レイミール達が辿り着いたのは巨大な城壁の前。
ライラント王国の中心にそびえる白亜の城。ライラント城の城壁の前で、呆然とした様子でレシアムは呟いた。
そんな彼の呟きに、ティアはひどく遠い目をしながらライラント城を見上げながら答える。
「……どうも、こうも、……恐らく王女様は、この城の中なんじゃないでしょうか?」
「……そんなこたぁ、分かっているんですよ。私が知りたいのはどうしてマリア王女がライラント城へ居るのかということなんですよっ!!」
「そんなの私に聞かれたってわかるわけ無いじゃない!!」
「あんたの魔法道具が壊れてんじゃないんですか!?」
「な、なんですってぇええっ」
レシアムとティアの怒鳴り声が、城の鐘の音と共に辺りに響く。
と、同時にそれまで力無く漂っていた玉も、ポトリと地面に落ちるとそれ以降はピクリとも動かなくなってしまった。
「というかね、アナタそんなで、本当に良く勇者様のお供に選ばれましたね?」
「あんたも人の事言えないでしょうっ!」
「……うるさいのう」
時は夕刻。
空は真っ赤に染まり、東の彼方は若干暗くなり始めている。
とりあえず、ここで言い合いをしていても始まらない。何とかして城に入る方法を探したいところだ。
レイミールは未だに喧嘩を続ける二人に声をかけた。
「……おい、お前達。この城に入城する方法は何か無いのか?」
「……ライラント城は基本的に立ち入りは不可ですからね。恐らく門の前は警備されて近づくことさえ、儘ならないでしょう」
「……そうか」
レシアムの答えを聞いてレイミールは高い城壁を見上げた。
正面から入れなければ、当然、裏や脇から入るしかない。つまり、忍び込むわけだがそう簡単に忍び込めそうもない目の前の城を見て、レイミールは顎に手を添える。
と、しばらく眉間にしわを寄せて黙りこくっていたレイミールはレシアム達の耳にわずかに届く様な小さな声で呟いた。
「…………何の捻りもないが、侵入できないこともない……」
「え……何か良い案でも思いついたのですか?」
首を傾げるティアに、レイミールは静かに頷く。
「……都合の良いことに道具も揃っている」
***
「ぶわっくちっ!!」
「……ちょっ! 音立てないで!! 気付かれたらどうするの!?」
城の門のすぐそばの林で城の様子を窺う人影が二つ。男と女が真剣な目つきで城門を眺めていた時に、不意に男の方が大きなクシャミをした。
「全く……私達の事がばれたら、勇者様の計画が台無しになるじゃないですか!!」
「……すみません……」
返す言葉も無く、レシアムはティアに頭を下げる。
「それにしても……本当に大丈夫なんでしょうかねぇ……」
レイミールから聞かされた計画は単純明快。何かすごい仕掛けがあるとか、頭脳的な策略とかは一切関係ない、単純なもの。彼女自身ずっと眉をひそめたままだったことを考えると、あまり気の進まない計画なのかもしれない。
まぁ、結局それ以外に良い案も、手立ても無かったのでレイミールの計画を実行に移すことになったのだが……
「何者だっ!!」
門番と思われる野太い男の声が聞こえ、レシアムとティアの体は跳ね上がる。
「もう一度言う、何者だ!! 答えろ!!」
恐る恐る門の方へと二人は目を向ける。
門番がまた、何やら大きな声で言っているが、目に入った景色があまりにも強烈的だったが故に、門番のどうでもいい声などそれ以降は全く耳に入ってこない。
すでに夜の帳が下りたライラント王国で、門番は二人とはまた別の何者かに怒鳴り声を上げていた。
「……ちょっ、本当にあんなでいいんですか!?」
「良いも何もないわ、さっさと準備して!!」
騒ぎを聞きつけ徐々に警備の者が集まってくる。城門の景色を背にレシアムとティアの二人は行動を開始した。
林を後にする時、わっと門番達の悲鳴が聞こえた様な気がするが二人は振り返らなかった。
少し短いか……いや、いつもこのくらいだったかな?
まぁ、後二、三話でマリアの救出編も終わるかなぁぁ……終わるといいなあ。
とりあえず、全体のラストはもう決まってるけどそこに持っていくまでまだまだかかりそうですねぇ。年内には絶対終わらない気がする。
というわけで次回もお楽しみに。




