家出娘
美しい音色が街中に響き渡る中、レシアムとティアのきちがいじみた悲鳴が辺りに響いた。
「マリア王女がいなくなったってどういうことですか!?」
「恐らく、マリアと話し込んでいた店の主人が関わっているとみて間違いは無いのだろうな」
レイミールはそう言うと、茶色い衣で覆われたなんだかよく分からない食べ物を口に含んだ。が、あまりおいしくは無かったと見えて、若干不機嫌そうな彼女の眉間にはしわが寄る。
「呑気にモノ食べてる場合じゃないですよ!! 王女の身に何かあったら一大事ですからね!?」
***
「う~んっ…………ん? あれ?」
眠っていた記憶などないのに、自分が今まで意識を手放していたことに気付くマリア。驚くべきことに自分はフワフワとした羽根布団の中で横になっている……何故だ。
「お目覚めですか? 神聖アルテミス帝国、マリア王女様」
未だこれが夢なのか現実なのか寝ぼけた頭で考えていたマリアの眠気をすっかり覚ますほど冷たい声が彼女へと掛けられた。本能的に声のした方から距離を取って相手を確認する。眼に映ったのは張り付けたような笑顔を浮かべる長身の男だった。
「誰……ですか?」
「私は、ライラント王国国王に仕える唯の家令。名乗るほどのものではございません」
「そ、そうなんですか? ……で、でもどうしてライラント王国の家令であるあなたがこんなところに?」
マリアの問いににっこりと家令が笑う。
「単刀直入に申し上げますと、マリア様には祖国へお帰りになっていただきます」
「え……?」
「マリア様のお父様は大変心配なされているようでございます。周辺の同盟国へ呼びかけ、もしもお忍びの旅をしていらっしゃる王女様をお見かけになったらすぐに連れ戻すようにと」
謝礼はいくらでも……と言っていらっしゃいましたよ。と家令の男は付けくわえる。
「そんな……でも捜索隊は街に出ていなかったのに……」
「ええ、別に捜索隊など出しておりませんから」
「? どういうことですか」
マリアの言葉に家令は口元を歪ませ、深い笑みを浮かべる。がらりと雰囲気を変えた家令は気味の悪い笑みのまま話を続ける。
「あなたは疲れていらっしゃる。もう今日はお休みになってください」
家令はそれだけを言って踵を返すと、マリアの制止も聞かずにその部屋を後にする。続けて外に出ようと、マリアも部屋の扉のドアノブに手を掛けた。
瞬間
ガチャリ
金属的な嫌な音が耳に入る。慌ててドアノブを捻ってみるがびくともしなかった。
「開かない!?」
外から鍵が掛けられてしまっているのか中からはドアは開かない。……出られなくなってしまった。
ドアの目の前でマリアは力なくへたり込んだ。
このままでは、本当に連れ戻されてしまう。あの退屈な城の中に。そしてあの勇者とも離ればなれになってしまう。
「そんなのダメ……」
マリアは小さく呟いた。せっかくここまで来たのだ。こんなところで連れ戻されてはたまった物ではない。
「どうにかしてここから抜け出さないと……」
一旦マリアは部屋を見渡す。しかし、汚れ一つない白い壁に四方を囲まれて窓など一切ない。部屋の真ん中に羽根布団が置かれ、部屋の隅におまけの様なタンスが置かれている以外は何もない部屋だ。
綺麗な部屋ではあるが、キレイすぎる。いや無機質と言った方が良いだろうか。とにかくなんだか奇妙な感じがする。何と言うか見せかけの様な、偽物の様な……そんな感じがするのだ。
「……ううっ……どうしよう」
早速挫折。
どうしてか、この部屋にいると力が抜けてきて頭が働かなくなる。……どうしてなのかは分からないが、どうにも調子が悪くなるのだ。
勇者様ならきっと簡単に解決してしまうのだろうなと、マリアは頭の片隅で思った。
恐ろしい魔物を一撃で返り討ちにし、エルフの森では簡単に討伐を済ませてしまう。そしてそれを鼻にかけるわけでもなく淡々とした様子でいる勇者は一体何者だろうか。
この世界に……自分の全く知らない異界の地から、自分自身が勇者として召喚した彼女。一体彼女は勇者として召喚される以前、一体何をして過ごしてきたのか……、どんな暮らしを送っていたのか……場違いだとは思いつつ、マリアはそんなことを考え始めていた。
遅くなってごめんなさい。
遅くなった言い訳をすると、最近急に忙しくなりまして……がなんともベターでありますが事実忙しいのです。
今回は短時間でチョロッとつくった物なのでかなり雑な話でスンマセン。




