■砂漠越えは計画的に(仮)
【あらすじ】
灼熱の砂漠で水不足!
瀕死のヒヨナとエミーダを救うのは、水か、それともイケメンか?
いつもどおりのふたりは、今日も元気に砂漠越えです。
空は快晴。気温は灼熱。見渡す限りは砂の丘。
そうです、ここは言わずと知れた砂漠地帯。
「み、水ぅ……」
水筒に詰めた水も無くなり、力なく砂丘を歩き続けるわたしたち。
「オ、オトコ……」
あぁ、ついにエミーダも暑さで頭がおかしく……いえ、いつもどおりの平常運転でした。
とはいえ、このままだと本当に干からびて死んじゃうかも。
『あぁ、まるで蜃気楼のように魔力がよどんでいく……』
どうやら、わたしたちの身体に影響されたのか、マイちゃんもおかしくなっているご様子。それでも自分の役割を見失わないマイちゃん。
『このままでは棺桶に収まる前に、ミイラになる可能性があります。なので、おふたりには休むことを強く推奨します』
日陰もないこの広い砂漠で、どう休めと?
『テントかタープは装備してないのですか?』
ナイスアドバイスだよ、マイちゃん!
わたしはリュックを下ろし、すぐにタープを出して組み立てることにしました。
って、エミーダ!ちょっと、どこ行くの!
フラフラと歩き続ける彼女を連れ戻し、マイちゃんの提案に従ってタープを組み上げました。
「オトコ……オトコ……」
タープの下で横になるエミーダをかいま見ながら、わたしは現状打破する方法をマイちゃんに相談してみました。
『水魔法は使えないんですか?』
天からの啓示が降りてこないと使えないことを告げると
『命の危機に直面しているというのに、なんとも薄情な神ですね』
皮肉にも似たマイちゃんの言葉に、わたしは怒る気にも笑う気にもなれませんでした。
だいたい魔法なんて、おとぎ話のように都合よく使えるもんじゃありません。特にわたしたちのような魔女では。
『あれだけ砂漠越えには充分な水が必要だと、何度も警告したじゃないですか。正直、ふたりの屍の遺品になるのだけは嫌ですよ』
今日に限って小姑ぽいマイちゃん。正直、今は黙っててください。
とはいえ、生死をさまよう境界線。きっと後悔先に立たずとは、まさにこのことなのでしょう。
と、タープ下の日陰から砂漠を眺めていると、地平線にキラキラした光が垣間見えます。
「あれは……もしかしてオアシス?」
目をこらし、疲労困憊の視力でもって再確認。揺らぐ大気の中、水辺のようなものが見えます。
「エミーダ!水がある!水、水っ!」
瀕死状態のエミーダのお尻を叩いて、わたしがたきつけると
「えー……水ぅ?それがどうしたってのよぉ?」
なんですか、この危機的状況と噛み合わないリアクションは?なのでテキトーなことを口にします。
「ほら、あそこの水辺にイケメンたちが水浴びしてるよ!」
刹那。エミーダがガバッと起き上がり、ボサボサになった白金色の髪を整え、表情を引き締めます。
「行くわよ、ヒヨナ」
あ、蘇った……。
その変わり身の早さに、わたしの乾ききった口がふさがりませんでした。……が、なにはともあれ、命を繋ぐ水に向かって走りました。
ざぱーーーーんっ!
「きゃー!冷たくて、気持ちいい!」
エメラルド色の豊かなオアシスに飛び込んだわたしは、溺れるほどに水を飲みました。
「ねぇー!見て見て、ヒヨナ」
呼ばれてオアシスの畔に目を向ければ、なぜかイケメンたちに囲まれ、優雅にくつろぐエミーダの姿が。
大きなパラソルの下、大きなうちわで扇がれ、マッサージを受けている光景に、わたしは赤面してしまいました。
だって、イケメンのみなさん、上半身裸なんですもの。しかもムッキムキのたくましい小麦肌。
こんなことなら、もっと大人っぽい水着にすればよかった。
なにはともあれ、わたしたちは砂漠の中で天国を見つけたことには違いありません。
「ふぅ、おなか、ペコペコ……」
おなかが空いたわたしは、水辺から上がり、用意されたテーブルにつきました。同時にイケメンさんたちが炎天下でバーベキューセットを用意し、肉を焼き始めました。
熱い鉄板の上で跳ね上がる肉汁。見ているだけで、汗が噴き出ます。
暑いのに、なんでバーベキューなんだろう?
とはいえ、イケメンさんたちの善意を無碍にするわけにもいかず、わたしは肉が焼き上がるのを黙って待ちました。ですが、いつまで経っても肉をひっくり返す気配もなく、イケメンさんたちは爽やか笑顔で談笑中。
そう、トングをカチカチ鳴らして。
「カチカチ?」
不思議なことに全員がトングをカチカチさせてるのです。
いったい、この光景はなんなのでしょう?……と思いきや、いつの間にか、わたしの背後にもイケメンが。もちろんトングを持って。
その異常な様子に、わたしのまどろむ意識は現実世界へと放り出されました。
ハッ!
目を覚ますと、毒を持つといわれる岩サソリが目の前で、お尻のハサミをカチカチ鳴らしていたりします。その数、10匹以上。
「エミーダ!岩サソリ、岩サソリ!!」
慌てて起き上がり、隣で寝ている親友を見れば……白骨化した遺体が無残に横たわってました。
「うそ……」
骸骨と白金色の長い髪。その骨の隙間で岩サソリがカチカチさせながら這い回ってたりします。
その変わり果てた親友の最期に、わたしも死を覚悟しました。
『……という未来しか見えません』
マイちゃんの悲壮感あふれる空想話に、思わず笑っちゃいました。
「いや、ないない。絶対、ありえないから」
旅慣れしているわたしたちです。それだけに、そんな危機に陥るわけがありません。するとエミーダが
「マインド・ナンチャラのわりには、ずいぶんと心配症ね。まったく誰に似たんだか」
「だとしたら、きっとわたしね」と主張するわたし。
「笑わせないでよ、ヒヨナ。もし似るなら、あたしのほうっしょ」と胸を張るエミーダ。
『いえ、それは断じてありません。この場合、むしろふたりの反面教師……』
「見て!ヒヨナ、ヨミ砂漠よ!」
エミーダの声に、わたしも目の前に広がる砂漠を一望します。
大自然が生み出した広大な砂景色に、胸を弾ませていると、マイちゃんが、また警告してきました。
『もう一度、言いますが、おふたりとも考え直しませんか?』
「ここまで来たんだもん。今さら引き返すのもねぇ。迂回すれば一ヶ月の道のりだけど、このショートカットを利用すれば三日の距離だよ。だったら、考えるまでもないよね?」
『わかりました。でしたら、わたしもおふたりが死なないよう、できる限りの支援をいたします』
「お願いね。じゃあ、行こうか」
こうしてわたしたちは砂漠に足を踏み入れ……ものの見事に生死をさまよったのでした。
【おしまい】
※エミーダサービスカット




