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リコさん(1)

 保健室に入ってきたのは、リコさんと、ボクの両親だった。


 「大丈夫か?」リコさんが口を開く。

 「ケガはないの?大丈夫なの?」母さんが尋ねてくる。

 オヤジは気が動転しているのか、顔が青ざめていて、何も言わない。


 しばらく、誰からも、何も、言葉は出ない。


 そのうちに、教頭と先生方が入ってきた。


 ボクは知っている。

 こんなとき、なぜか校長は来やしない。


 中学校の時の同級生から、聞いたことがある。


 ウチの県の校長は、小学校だろうと中学校だろうと、高校だろうと、

肝心な場面では出てこないと。


 中学の時、近所のタケちゃんが何か迷惑行為をして、

近所のコンビニの店長が学校に抗議のためにねじこんで来た時だって、

対応したのは教頭と、生徒指導担当の教師だった。


 これはすぐにボクたち生徒の間でも噂になったことだ。


 だけどまさか、ボクの時でさえこんな扱いになるとは思わなかった。


 これにはオヤジがかみついた。


 「なんでこんな時に校長が様子見にも来ないんだ?

  生徒が一人、殺されかけたんだぞ?」


 オヤジの声の後、教師の誰かがオヤジに何か言ったようだ。


 オヤジは激高する。

 「なんだと、今、何て言った?」


 あれほど激怒するオヤジを初めて見た。



 だが、本当にゾッとするほどの凄みを見せたのは、リコさんだった。

 「実咲さんは連れて帰ります。」


 「着替えさせますので先生方には退室していただきます。」


 「あなた方は昔とちっとも変っていない。

  同じことが起きたのに、相変わらずだ。」


 低く強く、しかし冷たい声だった。

 ボクはこんなリコさんの声も、初めて聞いたんだ。

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