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波乱(9)
「かつて、あなたと同じ目に遭わされた男子生徒がいたの。
残念ながら、その当時は監視カメラなどのシステムがなく、
その生徒も自力でなんとかプールサイドには上がれたものの、
その後救急車で運ばれたの。
体の方は特に異状はなかったんだけど、
精神的なダメージの方が大きく、
以後は登校できない、
半年くらい家で寝たきりの状態に追い込まれたわ。」
「その男子生徒って、まさか……」
冴子さんは続けた。「りーちゃんよ。」
「そんなことが…。」
「私たちが異母兄妹だということは知っているんでしょ?
父は自分の責任のように感じて、
とにかく学校と県教育委員会に連日の直談判をかけたわ。
でも犯人はわからず、
当時の学校管理職と県教育委員会はきちんと対応しなかった。
事件をなかったことにしようとしたの。」
「りーちゃんは、
母方の「梅原」の姓を名乗っていることからもわかるけど、
私の父を嫌っていたから、
何もするなと言っていたけど、
父は学校と教育委員会側への圧力はやめなかったわ。
父はりーちゃんの母親とりーちゃんへの
償いのつもりだったのかもしれない。
不器用だから、何にも言わないけどね。
ずっとりーちゃんたちのことは気にかけていたのはわかっていたから…」




