ボクの秘密兵器と、笑わない長身メイド(2)
明らかに、動揺している。
「ちょっと待てちょっと待てちょっと待て。
現在のオマエ……キミとアタシの距離から、推定されるバストサイズを、
仮にπ、違ったf、違ったxとおき、
現在の年齢を16歳、
現在推定できる成長率を性、いや正の定数aと仮定すると、
下に凸の2次関数のグラフが得られる、だと?」
早速、数学Ⅰがこんな風に役に立つとは思わんかったわ。
数学って、変な所で役に立つもんやなぁ。
「で、2学期最初のテストの結果が発表されるとき、
ボクのバストサイズはどうなっているの?」
「推定では、
最小値でF、
最大値でGが……
いやっ、そんなはずは……」
「それは、楽しみですなぁ。
ほれほれ~、よく熟していますよ~。」
あ~あ。美しいお顔がひきつっているわ。
顔はモブ、身長150cmの中肉中背のブサ女子の、唯一の武器。
我ながら、こんなに破壊力があるとは思わんかったわ。
しかし、敵もさるもの。
ガラッと元の状態に切り替わったわ。
なんて女(じゃなかった男)。
「分かった。考えておく。」(すっかり冷静さを取り戻している。)
「そう、考えといてね。」
「そんなことより、解法を読め。
途中の展開の意味が分からない時だけ、
アタシに聞け。」
1時間半後。
「まだ途中だが、これをまずは毎日続けていく。
ここしばらくは軌道に乗るまで、毎日来させてもらう。
時期が来たら、復習の仕方を教える。」
「それに加えて、明日は英語の学習の仕方を教える。何か質問はあるか?」
「う~ん、これもタケ君の話になるけど、
タケ君、英語どころか、
日本語でさえ危ないタイプだったでしょ?
そういう時はどうするの?」
リコさんはまたジュラルミンケースから本を取り出した。
『小学1年生 漢字にぐーんと強くなる』(くもん出版)
「類書は多いが、これが1番だと思っている。
たとえば、『一年生』の『一』を書かせる問題があって、
その同じ行の真下に『いち』と読ませる問題が書いてある。
当たり前のように聞こえるかもしれんが、
意外と異なる読み方を同じ行でさせているドリルが多い。
『いち』と読ませる問題のすぐ下の問題で『いっ』と読ませる問題が
書かれているということだ。
学力的に厳しい子にとって、この違いは大きい。
この『漢字にぐーんと強くなる』のシリーズは、
もっぱら漢字の読みに特化して使用する。
日本語の難しい言葉は、たいてい漢字で書かれていることが多い。
読めれば、なんとかなる。
それでもわからなければ、その場で質問すればよい。」
「リコさん、すごいわね。準備にぬかりないじゃない?」
「当たり前だ。これがプロの仕事だ。」
クールに決めているけど、明日も来るっていうのは
ほんとは別の楽しみを見つけたからじゃないのかなあ~。
まあ、いいか。
見た目と違って、なんだか楽しい人。




