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ローリングサンダーと、スペシャルな黒髪メイド(3)

 リコさんは、運転しながら話を続ける。


 「高2の秋、ふと思い立って、1か月間毎日、

  ボクシングジムに通った。

  1か月、左ジャブと、ボクサーがよくやっている縄跳びがあるだろ、

  それだけ教えて欲しいと頼んで、

  1か月ほぼ毎日それだけをひたすらコーチしてもらった。」

 「なんでまた?」


 「オレ………アタシの好きな昭和のボクシングマンガで、

  キャラクターの一人が

  0.数秒の間に3発のパンチを打ち込む

  必殺ブローを得意にしている者がいた。

  左手1本で戦うそのキャラクターにあこがれた。

  彼は逆境をはねのけ、

  無敵の強さを手に入れた。

  彼の技だけでなく、

  生き方にもあこがれた。」


 「ボクシングジムに行ってその話をしたら

  ボクサーたちに最初は鼻で笑われたが、

  こちらの本気度が伝わったのかもしれない。

  縄跳びも本格的なレベルまで教えてもらった。

  1か月たってジムは辞めたが、

  今でも毎日左ジャブのシャドーと縄跳びは続けている。」


 それにしても、人間業とは思えないスピード。

 練習して、あんなマンガみたいなレベルになるのかね。


 「ポイントは、『限定』したことだ。

  左ジャブとフットワーク、せいぜいこの2点にしぼって、

  それ以外は捨てたことだ。」

 「勉強でも同じことが言える。

  いろいろな科目があるが、

  必要なことは、教材が『読める』ことと

  『計算』ができることだ。

  その2点さえ今のうちに抑えておけば、

  あとはそれを『鍵』にして、

  必要な科目を学べば

  なんとかなる。

  今はわかりやすい教材・テキストが

  書店にあふれている。

  その気になり、

  『読み』と『計算』の能力があれば、

  何でもできる。」

 「左だけでいいの?」

 「人間の体はバランスよくできている。

  一度、右ストレートを繰り出したら、

  自分でも驚くほどのスピードと拳圧が生じて

  恐ろしさを感じた。」


 『俺、強ええー』ってやつかな。

 リコさんが真剣に、力説するほど、

 何か、微笑ましい。


 

 100円均一の店に着いた。

 ルーズリーフとそのフォルダー数冊を買った。


 ボクとの会話では饒舌なリコさんは、

 他人の目がある時は一切しゃべらない。

  


  

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