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第八話 ~買物~

とりあえず、熱もある程度下がったので更新します。

最初の方も若干書き換えたところもあるのでそちらも見てくれるとありがたいです。


では、どうぞ。


「しかし、久しぶりというか、不思議な感じだな」


「懐かしい?」


「まあ、そうなのかな。そういう真雪はどうなんだ?」


「・・・べつに。ただ、懐かしいえば、そういえなくもない」


「曖昧だな。そういうもんか?」


「うん」


「そっか」


俺たちは今、人間の街に来ている。お花見用の食材などの調達のためだ。里の中でもある程度は揃えることも出来るのだが、足りないものはどうしてもあるのだ。

ちなみに里を出る方法は、神社の表の階段を下りることだ。

九凰神社は人里と隠れ里との境界線。普通の方法では狭間の世界、隠れ里に入ることは出来ないが、九凰神社は二つの世界の中継点の役割を果たしている。普通の人間は特殊な結界に阻まれ、境界線を越えることは出来ないが、妖怪や魔術師たちは越えることができる。

他にも行き来する方法はあるのだが、今回は関係ないので割愛させてもらう。


「そういえば、真雪にもそういう服あったんだな」


真雪は今、いつもの着物ではなく、白を基調とした洋服を着ている。一見すれば何処かのお嬢様学校の制服に見えないこともない。


「うん。円香がくれた」


ああ、多分、似合うと思って買ったんだろうな。何か二人とも仲いいし。


「似合ってる?」


「ああ、似合ってる」


これはお世辞でも何でもない。純粋に心から出た言葉だった。いつも着物姿に見慣れているが、こういうのも悪くない。


「ありがと・・・」


若干、頬を赤らめて俯き、恥じらっている様子は少し反則だ。最も、そんな真雪の様子を周りの男どもが獣のような眼で見てくるため、それを散らすのに俺は躍起になっていた。


「ここって、鏡が住んでいた街?」


「いや、違うけど。何で?」


「ずいぶん歩き慣れているなと思って」


「俺が住んでいた場所は隣町。で、ここには買い物とかには良く来てたからな」


「へえ。じゃあ、知り合いとかもいるの?」


「まあ、いるっちゃいるな。けど、今は俺を俺だと認識出来ないから、そういう意味ではいないともいえる」


「そう。そういえば、ソレの効果ちゃんとあるみたいね」


「ああ。でなきゃ困るけどな。流石は退魔協会ってところか」


そう言って、俺は胸元の首飾りを見る。三日月を模った金細工に紫水晶を嵌め込んでいる。

一応言っておくが、俺にアクセサリーの類を身につける趣味はない。これは必要があって付けているのだ。


「そうね。というかこういうのあるならさっさと寄越せばいいのに」


「いや、まあ、色々事情もあるんだろうよ」


これは、退魔協会から支給されたもので、街に降りる前に九凰神社で受け取ったものだ。その効力は妖怪の力の遮断。封印しているわけではなく、力を外に漏らさないようにしているわけである。

つまり、俺の夜叉としての力も働かない、というわけで。


「でも、それがあれば、鏡も人間の世界で暮らせるんじゃないの?」


「無理らしいぞ。夜叉、というか妖怪としての能力全てを隠せるわけじゃないから、結局ボロがでる」


「なるほど。ほんの少し街にいるだけならまだしも、生活するとなれば弊害が出るのね。わたしなら、気を抜くと周囲の気温を下げてしまうし、鏡なら・・・何かある?」


真雪は首を傾げながら聞いてくる。確かに夜叉の力では、幻覚を見せてしまうというもの以外は、問題ないように思える。


「力加減間違えれば、人を殺す可能性がある。なんかこう、グシャっと」


「生々しいのね」


「まあね。その辺、退魔協会の認定が厳しいらしくて、まず許可はおりないらしい」


どうしても許可が欲しい場合は、妖怪の力を封印するしかない。そうして、人間とほとんど同じ能力となることで比較的に協会の認定は甘くなる。

ただし、それは同時に自衛のための力をも失うことを意味している。

当然、自由に封印が解けては意味がない。よって、協会の人間にしか封印は解けないようになっている。もし、封印が解かれない状態で外敵に出くわした場合、諦めるしかない。

協会所属の妖怪といえど、狙われないという保証はない。もちろん、所属していない妖怪よりは危険性は遥かに低いが、私怨で狙ってくる人間や依頼された退魔師、聖霊教会の人間や、たまに魔物ハンターなるものまで現れるのだ。

俺は、そんなリスクを負ってまで、人間の街で暮らしたいとは思わないし、そこまでの執着はない。

他に例外として、妖怪寮や魔術関係の事務所のように、特殊な『場』を形成することで、限定的な力の制限を掛けることができる。これはある一定以上の力を出せなくさせ、それ以上の力が必要な場合は、時間制限付きで能力の解放ができるというものだ。問題はその場合、営業目的でなければならないということと、利益の一部を退魔協会に納金する義務があるということだ。

まあ、俺はそのどちらもやるつもりはないが。


「やっぱり、わたしたちには里の方が合ってるわね」


そう言って、真雪は俺に微笑みかけてきた。俺はその微笑みを見て、思う。


「そうだな」


真雪の言う通りだ。このゴチャゴチャとした人間の街よりも、ゆったりと時間が流れる隠れ里の方が俺には合っている。本来なら人間の街が俺の故郷なのだが、里の方が故郷だと心から感じている。俺に向けられるこの微笑みがある場所こそ、俺の居場所なのだと自然に思えた。


「・・・なに笑ってるの?」


「え・・・いや、別に何でもないよ」


どうやら無意識に笑っていたらしい。少し自重せねば。


「・・・ま、いいけど。それより、これからどこに行くの?スーパー?」


「いんや、家電量販店」


「・・・なんで?」


本気で理由が分からないのか、真雪は首を捻って考え込んでいる。


「湯沸し器を買いに行くんだよ」


「・・・え、なかったっけ?」


「ありませんとも。君は家事の手伝いとかしたことないから、分からないかもしれませんがね」


「・・・・・・」


真雪はあさっての方向を向きながら口笛を吹く真似をしている。全く出来ていないが。


「ええと、わたしの家にはあるけど・・・」


「は!?マジで!?」


「うん、マジ」


理不尽だ。湯沸し器を使いもしない、こともないだろうが明らかに使用頻度の多い俺の家になくて、何故この娘の家にあるのか。というかそもそも、レンジもあって、ポットもあって、ついでにオーブンもあって、何で湯沸し器がないのか。わざとじゃないですよね、コレ。


「と、ともかく、湯沸し器を買ってから、花見の買い物をしよう」


「わ、わかった」




というわけで、大手家電量販店の中です。

広い店内の中、見渡す限り家電製品が広がっている。さて、どこに目当ての湯沸し器があるのか。


「真雪、一応はぐれないように・・・ってあれ?」


はぐれないように注意しろ、と言うつもりだったのだが、一歩遅かったらしい。


「・・・はあ、なんとかなるか」


別にはぐれたからといって、見つけられないほど広い店内でもない。そのうち見つかるだろう。


「お、あったあった」


店内を散策し始めてすぐに湯沸し器が見つかり、手頃な値段のものを選んでさっさと購入した。特にこだわりもないから、決めるのもすぐだ。できるだけ長持ちすればそれでいい。


「さて、後は真雪だが・・・」


これが探してみると、なかなか見つからない。意外とかくれんぼとか得意だったのだろうか。いや、この場合関係ないか。


「・・・やっと見つけた」


「・・・鏡」


店中探しまわってやっと見つけたと思ったら、真雪はテレビコーナーの前でしゃがみこんでいた。

こちらに気がついて一目見たと思ったらまた、画面に目を戻してしまった。


「欲しいのか?」


「少し」


「よし、金貯めて自分で買え」


「・・・けち」


「真雪の家も、俺の家も地デジ対応だろうが。それにこんな大画面高すぎて手が出ません」


具体的に何型とはいわないが、とんでもなく大きいとだけいっておく。


「それじゃ、さっさと花見の買物済ますぞ」


「あれ?鏡、買わなかったの?」


真雪は俺が何も持っていなかったのが不思議だったのか、そんなことを聞いてきた。


「いや、買ったぞ。ただ、九凰神社に届けてもらうことにしたんだ。流石にここから持っていくのは疲れるからな」


「ああ、そういうことか」


「んじゃ、行くぞ」


「うん」




「結構、いろいろ買ったわね」


「まあ、大人数だからな」


俺と真雪は、家電量販店の近くにあったスーパーで買い物を済ませ、帰宅の途中である。俺の両手は大量の食材の詰まったビニール袋で塞がっていた。真雪も買物袋を一つ持ってくれている

しかし、こうして買物袋を提げて並んで歩いていると、もしかして恋人同士か、新婚夫婦に見えるのだろうか。っていやいや、それはない、つーか何でそんな発想がでてくるんだ?まあ、俺と真雪だとせいぜいが兄妹ってとこか。似てないけど。

そうか、そういえば・・・


「・・・どうかしたの、鏡?」


少しボーっとしていたのを心配に思ったのか、真雪が言った。


「いや、前にさ。こうやって、妹と買物をして並んで帰ってたなって思いだしてさ」


「妹、さん?」


「ああ、いつも俺と妹で料理作ってたし、仲は良かったからよく一緒に帰ってたんだ」


「いたんだ?」


「・・・言ってなかったっけ?」


「うん」


そう言われれば、教えた覚えもない。無理に教える必要のあることではないし、教えてなかったかもしれない。


「どうしても知りたいって言うなら、教えるけど」


「・・・いいわ。遠慮する」


真雪は少し考える素振りそ見せた後、首を横に振った。


「そっか。でも何で?」


「だって、今の鏡は妖怪だもの。なら人間の妹さんとは鏡もわたしも会う機会は、多分ないと思って」


「そりゃ、そうだな」


真雪の言うことも一理ある。確かに、妹と再び会うことはないだろう。

妹はただ普通に幸せになってくれればいいのだ。俺のことなど忘れて、誰かいい男と結婚・・・するのかアイツが!?なんだろう、そう考えると、少し心配になってきた。やっぱり、一目でも見ておいた方がいいのだろうか。

っていかんいかん。何で思考が会う方向に向いているのか。むう、シスコンではないと思ってたんだがな。


「それに、噂をすれば影っていうし、一応ね」


「何か言った?」


「ううん、べつに。それよりも、早く」


「ああ」


俺は真雪に手を引かれながら、九凰神社へと歩いて行った。



この時、俺は気づいていなかった。俺たちの後ろをこっそりと付けてくる人影に。

すみません。遅れました、やっと完成です。まあ、また修正することにはなると思いますけど。

ちょっと、長めになりました。

次回は花見編になります。話は短めで前編後編に分けたいと思います。

しかし、今回の最後、露骨すぎましたね。今後の展開が読みやすいったら。


というか例の特効薬(T)よく効きますね。一気に熱が下がりました。まあまだ数日安静なんですが・・・


では、また次回。

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