16.宣言
見つけて下さってありがとうございます!
「ししょう」
声を掛ける。もう、何度目になるか覚えていない。
「...........」
ザシュッ
「ッ.....し、しょう」
アメリアは口から血を吐いた。白銀に輝いていたルーアの剣は、今や血を吸う喜びでも覚えたのか、鈍く邪悪な光を纏っている。
「...........」
「なんで、早く一緒に―――」
ドスッ
「か、あ...」
白かった聖職衣は最早見る影もなく、白い部分を探すのが困難な程血に染まっている。
聖力ももうじき尽きるだろう。聖力が尽きれば生き返ることは出来ない。
だが、そんな事実に気づかない程、今のアメリアは目の前の事に必死だった。
「何か、言ってください....ほら、数日前みたいに、いつも通りに.....」
「...........」
「一緒に帰って、また訓練して下さい....私、もっと強くなって――」
ザクッ
「ッ...強くなって、師匠に勝ちたいんです、それに、もっと料理食べさせて下さい....は、話もしたいです。だから、」
必死に言葉を言い募る。目の前が涙で滲んで見えなくなった。
「...........」
グサッ
鈍く光る剣がアメリアの脇腹を貫いた。
「だから、早く一緒に帰ってほしい....ですッ」
アメリアは自分の脇腹に刺さっている剣を握った。力を込めたせいで手のひらからも血が流れたが、気にしなかった。
ルーアの姿をした何かはアメリアから剣を抜こうと四苦八苦している。声は届いていないようだ。
アメリアは更に剣を握る手に力を込めた。絶対に離さないという意思を込めて、ルーアの姿をした何かを見る。
「.....ッ!..それに、師匠が居ないと寂しいです......」
普段のアメリアなら絶対に言わなかっただろう。態度では出すだろうが、言葉にはしない。
ルーアの姿をした何かはやがて諦めたのか、剣から手を離し、足元に落ちていた石を拾った。その石の先端は鋭く尖っている。殴りつけでもすれば、充分凶器になるだろう。
「私が寂しいなんて言ったら、きっと師匠は笑いながら茶化します」
ルーアならそうする。今までだってそうだった。アメリアが感謝を言葉にすると、驚いた後に笑いながら突っついてくるのだ。
目の前に居るのはルーアじゃない。
「..........」
「......もう、居ないんですね」
伽藍堂の瞳がじっとアメリアを見つめている。その瞳には、喜びも悲しみも怒りも浮かんでいない。ただ、悪意だけがある。
「..........」
アメリアは薄く嗤うと、脇腹に刺さった剣を引き抜いた。
血が溢れ、既に赤かった聖職衣が更に血に染まり、黒に近い色になった。
一瞬前のめりになるが、直ぐに体勢を整える。整えた時には、傷は最初から無かったかのように綺麗に塞がっていた。
アメリアは、前のめりになった時に俯いていた顔をあげる。
そして、絶望と悲嘆と決意が混ざった紅い瞳をルーアの姿をした何かに向け、一言言った。
「あなたは誰」
最初から分かりきっていた事だが、希望を持ちたかった。目の前に居るのはルーアだと。だが
「......マ、オ.....ウ」
発せられたのはとても拙い言葉だった。まだ小さい子供のようだ。ただし、子供のように無垢で愛らしい要素は欠けらも無いが。
アメリアは最後まで残っていた希望を捨てた。
「あなたは私の大切な人を奪った。だから、私はあなたを絶対に殺す」
もう、躊躇わない。目の前に居る仇を討つ。後、何回生き返える事が出来るのか分からないが、そんな事はどうでもいい。
今、やらなければいけない。
そんな決意と共に、アメリアは足を踏み込もうとして―――
「それ以上死んだら、生き返れないわ。戻りなさい」
全てを従わせるオーラを纏った天上の美声が、美しい唇から紡がれた。
アメリアはバッと顔を上にあげる。その先には、
「先生.....!...どうして、」
宙に浮かんだレスカートが居た。
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次で過去編は終わる、はず




