17.レスカート
見つけて下さってありがとうございます!
後書きにも続きを書くので、最後まで見ていただけるとありがたいです
後書きはセリフのみです
一ヶ月放置してすみません!
これで過去編は終わりです
アメリアは宙に浮くレスカートに目を向けた。
今は一分一秒でも時間が惜しい。一刻も早く自らの師を奪った魔王を殺したい。
だが、レスカートに目を向けた瞬間から、その神々しい姿に目が離せない。
薄い水色の髪が風に靡き、アメリアを見据える稲穂色の瞳には、『死』を司る神であることを象徴する紋様が鋭く輝いている。
そして、魔王もまた、レスカートから目が離せないようだった。
「もう戻るわよ」
発せられた言葉には、有無を言わせない圧があった。
「......でもっ!」
しかし、アメリアはレスカートの圧に押されながらも、固い意志の元言い返した。
「私は師匠の仇を―――」
「眠りなさい」
人を従わせる絶対の力が言葉に乗せられ、アメリアの耳に届いた。
「あ........」
ドサッ
力を失った身体が、ゆっくりと地面に倒れた。
レスカートは倒れたアメリアを一瞥すると、今度は魔王の方を見た。
魔王はまだレスカートから目が離せないでいる。
「まだ四年経っていないのだけど」
「...........」
「......ああ、そういうこと。これは説得するのが大変そうね」
レスカートは興味無さげに魔王を見ると、地面に降り立ち、アメリアを抱き上げた。
「聞こえているかは分からないけれど、私は人の死に関しては干渉出来ないのよね。だから、あなたが死ぬという運命を変えることは出来ない。でも、その過程になら干渉は出来る」
「.....シノ.....カ....ミ.....」
「あら、喋れるのね、驚いた。まあ、私もこの世界に愛着というものがあるから、この子の為にもその過程に干渉させてもらうわね」
その言葉を言うと同時に、レスカートの足元が白く光り始めた。
「また会いましょうね、ルーア」
「.........!!」
魔王の瞳が一瞬揺れたが、レスカートは気にすることなく転移陣を発動させた。
********
―――教会にて
「ん.....」
「起きたわね」
「......!!」
場所はアメリアの自室。白い布の敷いてある、どこにでもあるベッドの上。
「どうして!?」
慌てて飛び起きるアメリア。その様子をレスカートは、冷静に眺めている。
「私があなたを眠らせたの。あのままだったら死んでいたから」
レスカートの言葉は事実だ。それだけに、アメリアはレスカートに言い返せない。
アメリアも気づいていた。あのままだったら、自分は死んでいたと。
だが、
「もう大丈夫です!行かせてください!!」
絶対に引けなかった。
仇を討つと決めたのだ。今はそれ以外、どうでもいい。
レスカートはそんなアメリアを見て、目を細めた。
「駄目よ」
そして、冷たく言い放つ。
「あなたでは勝てないでしょ」
「っ......」
その言葉に言い返せなくて、アメリアは下を向いた。
ルーア含め、騎士団の精鋭が束になっても勝てるかどうか五分五分の相手だ。アメリアには荷が重すぎる。敗北するのは目に見えていた。
「.....私が、もっと強くなればいいんですか?」
ぽつりとアメリアが言った。それにレスカートが答える。
「あなた一人では無理よ。それに、今から私が言うことを聞いたら、あなたは魔王を殺せなくなるのでないかしら?」
「......なんですか?」
妙な沈黙が、二人の間に降りた。だが、ややあって、レスカートが口を開いた。
「まだ、ルーアは死んでいないもの。.....あなたは本当に魔王を......いいえ、ルーアを殺せるの?」
アメリアはゆっくりと瞬きをする。レスカートの言葉が脳に届くまで少しの時間を要した。
そして、その言葉が脳に届くと同時にアメリアは大きく目を見開くと、口を何度も開閉させた。
「........私に、師匠を、ですか?.....待って下さい、死んでないってどういうことですか!?」
レスカートは最初、この事を秘密にするつもりだった。アメリアが魔王と戦う時、弊害になると考えたからだ。
だが、ちゃんと正直に話すことに決めた。アメリアには知る権利がある。それに、これ以上、無謀な戦いに身を投じて命を散らすことは、レスカートにとって許容出来ることではなかった。
ならば、正直に話し、アメリアに決断させた上で魔王を殺す方がいい。
殺すことに変わりは無いが、アメリアに決断させ、けじめをつけさせる事が大事なのだ。
「 死んでいないと言っても、生きているという訳では無いの。殆ど死んでいるわね。魔王の中に辛うじてルーアの意識が残っている程度。だから、魔王が死ねばルーアも本当の意味で死ぬ」
「!!......わ、わたしに師匠は、」
アメリアは唇を噛んだ。痕が残るほど手を握りしめ、更に下を向く。
葛藤しないはずがない。師が魔王に呑まれた上、その仇をとることすら封じられようとしているのだ。
「魔王は危険な存在よ。どちらにしろ殺さなければならないわ。あなたが殺るか騎士達が殺るかの違いよ」
「私は、」
決断が迫られる。
「アメリア、あなたはルーアに共に戦う仲間を見殺しにしろと教えられたの?」
違う。ルーアは弟子を見捨てると、堂々と宣言するほど落ちぶれてはいるが、騎士団の仲間を大切にしていた。
見捨てられた時だって本当は、戦いになった場合、アメリアを巻き込まないようにする為に逃げたのだと、今なら分かる。
アメリアの胸の中では、悲しみと怒りと葛藤がせめぎ合い、今にも原型を無くして押し潰されてしまいそうな程になっている。
しかし、その中から必死に出すべき答えの断片を掻き集め、形作っていく。
ぼろぼろになった心で出した答えは、意外にも崩れた所はなく、綺麗な形をしていた。
「.......いいえ、師匠なら出来るだけ犠牲が出ないような選択をするはずです」
「そうでしょう」
ルーアはそういう人だ。簡単に弟子を見捨てるくせに、死ぬのは認めない。そんな矛盾した性質を持っている人。
レスカートの次に、ルーアを長く見てきたアメリアだからこそ分かる。
あの人はきっと、弟子が殺しにかかって来ても拒否はするだろうが、そこに絶対譲れない理由があれば笑って切られる。
だからアメリアは、そのぼろぼろになった心をくっ付けて、今にも壊れてしまいそうだけど、皮を一枚も二枚も重ねて、絞り出すように言った。
「.....はい........私が必ず、師匠を倒します」
そう言ったアメリアのダイヤモンドの瞳は、灰色に濁っていた。
「アメリア、剣を出して」
「どうしてですか?」
「おまじないをかけるの」
「どんなですか?」
「秘密と言いたいけど、そうね、あなたが辛い思いを最後までしないようにするため」
「?よく分からないです」
「魔王を倒す時はこの剣に"死の神の導きに従え"と、言うといいわ」
「.......分かりました」
「でも、言わなくてもいいわ。あなたがルーアに最後でも会いたいと思ったら、そう言いなさい」
「師匠に、ですか?」
「ええ、ただし、この言葉を言ったら絶対に剣を離さないと誓いなさい」
「.......はい」
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