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不死身の聖女  作者: 金木犀
不死身の聖女の弟子
43/43

17.レスカート

見つけて下さってありがとうございます!


後書きにも続きを書くので、最後まで見ていただけるとありがたいです

後書きはセリフのみです


一ヶ月放置してすみません!


これで過去編は終わりです

アメリアは宙に浮くレスカートに目を向けた。

今は一分一秒でも時間が惜しい。一刻も早く自らの師を奪った魔王を殺したい。

だが、レスカートに目を向けた瞬間から、その神々しい姿に目が離せない。


薄い水色の髪が風に靡き、アメリアを見据える稲穂色の瞳には、『死』を司る神であることを象徴する紋様が鋭く輝いている。

そして、魔王もまた、レスカートから目が離せないようだった。


「もう戻るわよ」


発せられた言葉には、有無を言わせない圧があった。


「......でもっ!」


しかし、アメリアはレスカートの圧に押されながらも、固い意志の元言い返した。


「私は師匠の仇を―――」


「眠りなさい」


人を従わせる絶対の力が言葉に乗せられ、アメリアの耳に届いた。


「あ........」


ドサッ


力を失った身体が、ゆっくりと地面に倒れた。

レスカートは倒れたアメリアを一瞥すると、今度は魔王の方を見た。

魔王はまだレスカートから目が離せないでいる。


「まだ四年経っていないのだけど」


「...........」


「......ああ、そういうこと。これは説得するのが大変そうね」


レスカートは興味無さげに魔王を見ると、地面に降り立ち、アメリアを抱き上げた。


「聞こえているかは分からないけれど、私は人の死に関しては干渉出来ないのよね。だから、あなたが死ぬという運命を変えることは出来ない。でも、その過程になら干渉は出来る」


「.....シノ.....カ....ミ.....」


「あら、喋れるのね、驚いた。まあ、私もこの世界に愛着というものがあるから、この子の為にもその()()に干渉させてもらうわね」


その言葉を言うと同時に、レスカートの足元が白く光り始めた。


「また会いましょうね、ルーア」


「.........!!」


魔王の瞳が一瞬揺れたが、レスカートは気にすることなく転移陣を発動させた。




********



―――教会にて





「ん.....」


「起きたわね」


「......!!」


場所はアメリアの自室。白い布の敷いてある、どこにでもあるベッドの上。


「どうして!?」


慌てて飛び起きるアメリア。その様子をレスカートは、冷静に眺めている。


「私があなたを眠らせたの。あのままだったら死んでいたから」


レスカートの言葉は事実だ。それだけに、アメリアはレスカートに言い返せない。

アメリアも気づいていた。あのままだったら、自分は死んでいたと。


だが、


「もう大丈夫です!行かせてください!!」


絶対に引けなかった。


仇を討つと決めたのだ。今はそれ以外、どうでもいい。

レスカートはそんなアメリアを見て、目を細めた。


「駄目よ」


そして、冷たく言い放つ。


「あなたでは勝てないでしょ」


「っ......」


その言葉に言い返せなくて、アメリアは下を向いた。


ルーア含め、騎士団の精鋭が束になっても勝てるかどうか五分五分の相手だ。アメリアには荷が重すぎる。敗北するのは目に見えていた。


「.....私が、もっと強くなればいいんですか?」


ぽつりとアメリアが言った。それにレスカートが答える。


「あなた一人では無理よ。それに、今から私が言うことを聞いたら、あなたは魔王を殺せなくなるのでないかしら?」


「......なんですか?」


妙な沈黙が、二人の間に降りた。だが、ややあって、レスカートが口を開いた。


「まだ、ルーアは死んでいないもの。.....あなたは本当に魔王を......いいえ、ルーアを殺せるの?」


アメリアはゆっくりと瞬きをする。レスカートの言葉が脳に届くまで少しの時間を要した。

そして、その言葉が脳に届くと同時にアメリアは大きく目を見開くと、口を何度も開閉させた。


「........私に、師匠を、ですか?.....待って下さい、死んでないってどういうことですか!?」


レスカートは最初、この事を秘密にするつもりだった。アメリアが魔王と戦う時、弊害になると考えたからだ。

だが、ちゃんと正直に話すことに決めた。アメリアには知る権利がある。それに、これ以上、無謀な戦いに身を投じて命を散らすことは、レスカートにとって許容出来ることではなかった。


ならば、正直に話し、アメリアに決断させた上で魔王を殺す方がいい。

殺すことに変わりは無いが、アメリアに決断させ、けじめをつけさせる事が大事なのだ。


「 死んでいないと言っても、生きているという訳では無いの。殆ど死んでいるわね。魔王の中に辛うじてルーアの意識が残っている程度。だから、魔王が死ねばルーアも本当の意味で死ぬ」


「!!......わ、わたしに師匠は、」


アメリアは唇を噛んだ。痕が残るほど手を握りしめ、更に下を向く。

葛藤しないはずがない。師が魔王に呑まれた上、その仇をとることすら封じられようとしているのだ。


「魔王は危険な存在よ。どちらにしろ殺さなければならないわ。あなたが()るか騎士達が()るかの違いよ」


「私は、」


決断が迫られる。


「アメリア、あなたはルーアに共に戦う仲間を見殺しにしろと教えられたの?」


違う。ルーアは弟子を見捨てると、堂々と宣言するほど落ちぶれてはいるが、騎士団の仲間を大切にしていた。

見捨てられた時だって本当は、戦いになった場合、アメリアを巻き込まないようにする為に逃げたのだと、今なら分かる。


アメリアの胸の中では、悲しみと怒りと葛藤がせめぎ合い、今にも原型を無くして押し潰されてしまいそうな程になっている。


しかし、その中から必死に出すべき答えの断片を掻き集め、形作っていく。


ぼろぼろになった心で出した答えは、意外にも崩れた所はなく、綺麗な形をしていた。


「.......いいえ、師匠なら出来るだけ犠牲が出ないような選択をするはずです」


「そうでしょう」


ルーアはそういう人だ。簡単に弟子を見捨てるくせに、死ぬのは認めない。そんな矛盾した性質を持っている人。

レスカートの次に、ルーアを長く見てきたアメリアだからこそ分かる。


あの人はきっと、弟子が殺しにかかって来ても拒否はするだろうが、そこに絶対譲れない理由があれば笑って切られる。


だからアメリアは、そのぼろぼろになった心をくっ付けて、今にも壊れてしまいそうだけど、皮を一枚も二枚も重ねて、絞り出すように言った。


「.....はい........私が必ず、師匠を倒します」


そう言ったアメリアのダイヤモンドの瞳は、灰色に濁っていた。






「アメリア、剣を出して」


「どうしてですか?」


「おまじないをかけるの」


「どんなですか?」


「秘密と言いたいけど、そうね、あなたが辛い思いを最後までしないようにするため」


「?よく分からないです」


「魔王を倒す時はこの剣に"死の神の導きに従え"と、言うといいわ」


「.......分かりました」


「でも、言わなくてもいいわ。あなたがルーアに最後でも会いたいと思ったら、そう言いなさい」


「師匠に、ですか?」


「ええ、ただし、この言葉を言ったら絶対に剣を離さないと誓いなさい」


「.......はい」








最後まで読んで下さりありがとうございました。


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