10.別れ
見つけて下さってありがとうございます!
「本当に、それでいいの?」
アメリアは自身の母に問い掛けた。声が震えている。答えを見つけても不安になってしまう。本当にそれが正しいのかと。
しかし、
「それがいいの。私達は貴方に期待しているのよ。出来ないなんて言うつもり?」
目の前にいる自身の母は笑顔で、瞳を優しく細めて、少し悪戯な表情をしている。
それが何よりの答えに思えた。
「····そんなことないよ」
「不安そうな顔をしないの。それじゃあ、こうしましょう!私達に貴方の夢を見せることが償い!これでどう?」
アメリアの瞳に涙が浮かぶ。この母親はどうあってもアメリアを連れて行く気は無いらしい。
それが悲しくもあり、嬉しくもある。なんだか複雑な気分だ。
「····うん、ありがとう」
精一杯の笑顔を浮かべる。きっと顔は涙でぐちゃぐちゃだ。しかし、その泣きそうで無邪気な子供みたいに笑う顔は、本当の意味で心が晴れたことを表していた。
「本っ当に手のかかる子ね」
「わっ」
アメリアの母がアメリアを抱き寄せる。頭を何度も撫でて、アメリアの目尻に浮かぶ涙をそっと拭い、言った。
「ずっと、愛しているわ」
子供の時は何度も言ってもらった、聞き慣れた言葉だ。しかし、拭われた後から溢れた涙は、ずっと聞きたかった言葉を言われたせいで止まらない。
ずっと聞きたかったし言いたかった。だから、崩れた笑顔を必死に戻して、でも綺麗にはならなくて、結局笑顔かどうかも分からない泣き笑いで
「私もお母さん達を愛してる」
優しく愛を囁いた。
******
「もう、大丈夫そうね」
母の胸に埋まっていたアメリアはその後、父や弟にも自らの想いを伝え、別れを告げようとしていた。
「うん」
「お姉ちゃん!僕、南の国の英雄の像が見たい!!」
「分かった」
「私はアメリアが綺麗だと思った場所。あなたは?」
「んー、難しいね。じゃあ、北の国に氷の洞窟があると聞いたから、それがいいかな」
「うん、絶対に見せてあげる」
「期待してるわ」
最後に家族全員と抱き合う。久々に感じる家族の体温は離れ難かったが、いつまでもそうしているわけにもいかず、アメリアは名残惜しげに離れた。
「そろそろいいみたいね、終わったら私の手を握りなさい」
いつの間にか様子を見ていたソルアテクがアメリアに手を差し出した。
「はい。ありがとうございました」
アメリアはソルアテクの手を握ろうと近づいた。手を握る直前、
「アメリア!少しは軽くなった?」
母がそう言ってきた。その質問にアメリアは
「もっと重くなったよ」
と、心が晴れたような笑顔で答えた。
「そう····」
最後に見えたのは、家族が優しくアメリアを見つめる姿だった。
********
『····とうに····ろうな···』
『だいじょう······よ··』
心地よい微睡みの中で声が聞こえた。一人はいつもお節介をかけてきていた人、もう一人はなんだか聞いたことのある声だ。
「ん····」
ダイヤモンドの瞳が開いた。
「ん?」
目を覚ましたアメリアは自身の体勢に疑問を持った。
(なんで膝を立てたまま眠れたんだろう)
■■■に刺されたことは憶えているが、まさかずっとこのままだったのだろうか。
「あ、起きたか」
その事について考えていると、聞き覚えのある声がした。声のした方を見ると、見慣れた聖職衣を見に纏った見知った人物と
(······誰?)
目も覚めるような美女がいた。
「ん?この人か?見たことあるだろ」
「え?」
アメリアはもう一人の美女をまじまじと見つめる。艶のある空色の髪に全てを見透かすかのような稲穂色の瞳。
(どこかで···)
アメリアが美女の正体を思い出そうとしていると、その美女が声を掛けてきた。
「こんにちは、不死の聖女。先程も会いましたね」
「あ、····」
聞くのも憚られる程の天上の美声。この声を持っている人物をアメリアは一人しか知らない。
「改めまして、『死』を司る神、ソルアテクです。この教会ではレスカートと名乗っています」
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