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カタログを見てみよう。

 

 羊皮紙は水溜まりに落ち燃え尽きずに残っている。その下には黒い本がいつの間にか出現していた。


「ふう…ここが俺の部屋になるのか…」


 狭い部屋の中は壊れた木片、ほのかに香る水溜まり。

 見渡すとかなり混沌とした状況である。

 うん。調子に乗らなきゃよかった…。


 ベッドにある藁で身体を拭き取りながら考える。

 本当に自分の名前はおろか家族や出身地すらわからない。

 今までどうやって生きてきたのかすら思い出せない。

 しかし、生きる術や言語などの知識は残っている。明らかに人知を超えた不思議な力が働いているのを実感する。


 一体、俺の身に何が起きているのか、誰が何の目的で俺にこんな仕打ちをするのか?…ダメだ。情報が少なすぎて分からない。


 今はとりあえず少しでも情報を手に入れるべきだろう。唯一の情報源である黒い本を読む必要がある。

 考えるのはそれからだ。


 新たに現れた黒い本をペラペラめくってみると通販カタログのようになっており、商品名の横に簡単な説明と消費DPが記入されている。


『ゴブリン』

 亜人。身長100cm程度。皮膚は緑色。知能は低いが簡単な命令にしたがうことが可能。また簡単な道具を扱うことが出来る。DP10P。


 ◆能力値

 HP:30

 MP:5

 STR(筋力):5

 VIT(耐久):5

 INT(知力):3

 MIN(精神):3

 DEX(器用):5

 AGI(敏捷):5

 LUK(幸運):5


 スキル:

 ・道具使用LV1


 これを召還して侵入者と戦えと言うのだろうか?

 しかし、このステータスが強いのか弱いのかすらわからない。

 ゴブリンと言えば一般的に弱いモンスターだ。試しに呼び出すなんてDPが限られているのだから無駄使いはできない。


 取りあえず期間は一月もあるのだ。焦る必要はない。まずは情報収集が先決だ。


 カタログを見ていくとモンスターや罠、ダンジョン増設。

 それ以外には装備品やアイテム。

 他にはダンジョンに直接関係ないような日常生活品。畑や牧場、鍛治場や研究所。様々な物が購入出来るようになっている。

 なぜか温泉やカジノといった謎の娯楽施設まであった。


 凄い…。通販カタログもびっくりの品揃えだ。DPさえあれば生活どころか何でも出来そうだ。


 ただし空白のページが多い。俺のレベルが上がれば者類が増えていくのだろうか?


 黒い本を読んでいくと『ダンジョン内にある物品は生命以外はダンジョンマスターの所有物である場合に限りDPに還元する事が可能です。ただし、価値の半分となります。』と注意点に書いてあった。


「お!不必要な物は、DPに還元出来るみたいだな。とりあえずベッドと椅子以外は使い物にならんな‥それ以外を還元!」


 部屋の中は生活困難と断定出来る程にごちゃっとしている。『還元』でゴミ掃除だ。


『羊皮紙と残骸を101ポイントで還元しますか』

「ふあぁっ!?誰なの!?」


 部屋の中に響き渡る機械的な声。

 驚いて辺りを見渡すが誰もいない。


『私はダンジョンコアです。マスターをサポート致します。本からの召喚だけでなく、目の前にスクリーンを表示して状態の確認や命令を行う事が可能です。』


「便利な機能だな。とりあえず承認。」


『合計1101DPとなりました』


 ルールに基づき還元を試してみる。するとベッドと椅子以外は消える。


 ああ…床は濡れたままだ…流石に還元してもらえませんでした。黄金水だぞ!何故還元されん!


 …ごめんなさい。価値などある訳ないですね。

 もしかしたら俺の所有物と認めて貰えなかったのかもしれないしね。要らないから体外に排出されたんだもんね。


 モンスター召喚だのダンジョン作成以前に、とりあえずびっちょびっちょの床をどうにかしたい。

 濡れた床をどうにかするため黒い本の生活の項を見る。


『掃除セット10P:バケツ、箒、雑巾、ちりとり、はたきの5点セット』


 よし!これにしよう。

 異世界にきて初めての召喚が掃除セットって…


『10ポイント使用して掃除セットを召喚しますか?』

「承認!」


 目の前に一瞬で現れた何の変哲もない掃除道具。早速掃除をしようとするが水場がない。

 生活空間を確保せねば…トイレ…キッチン…風呂…黒本を読み漁る。

 そこで一つ目に付く、初心者住居セット?そこにはこう書かれていた。


『超お得!6畳1間にキッチン、ユニットバス付きで100P!』

 貧乏学生並みですね。


 しかし、悩んで居る場合ではない。侵入者が殺しに来ると脅されているのだ。こんな所にポイントを消費出来ない。


「承認!」


 すると何もなかった部屋の壁に扉が現れた。…不思議だ。一体どんな力が働いているのだろうか?

 その扉を恐る恐る潜り抜けて中に入ると、6畳の部屋にキッチンとユニットバスがある。


 ああ…トイレだ…万感の思いで便器に駆け寄り頬擦りする。これを求めていた!!何故最初からついていないのだ!



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