帰り道
部屋に残ったのは、氷華、駿太郎、真利奈、周平の四人になった。
「俺たちも帰るか」
駿太郎が声をかける。窓を覗けば、もう空が赤く染まっている。
「そうね、帰りましょう」
3人は帰る準備を始める。そしてもう1人は、
「じゃあ、今日は私もうちょっとやりたいことあるから、みんなに帰っちゃって。ああ、鍵は私がかけとくから」
といって、携帯端末を取り出し、生徒会議室にあるパソコンに接続する。
渡邊先輩何の用事だろう?
「わかったは、真利奈なら鍵のことも心配ないわね。それじゃあ、真利奈さようなら」
氷華のあいさつ。そして駿太郎。
「もうすぐ最終下校時刻だからな。早く帰れよ」
「分ってるわよ、駿君。じゃあみんなさようなら」
「失礼します」
最後に周平が挨拶をして3人は部屋を出る。
駿太郎のことを「駿君」と呼ぶ真利奈を少し意外なと周平は思った。その気持ちを読んだかのように、氷華が話しかける。
「真利奈の呼び方に驚いたのでしょう?見た目がクールだし、普段は愛想が悪いからよく勘違いされるけど、彼女けっこう人懐っこいのよ。しかも、駿君と真利奈は幼稚園からの幼馴染で、とっても仲がいいの。ねえ駿君」
「ああ、とっても仲がいいかどうかは別とて、ほどほどの関係ではあると思う。恋愛的な要素は何もないがな。まあ、今となっては、どう見ても悪友としか言えんが」
そうか、俺と灰桜みたいな感じか。こっちは男同士だけど。
「で、どうして天白先輩も緑谷先輩を呼ぶとき、駿君なんですか」
「う~ん。それはね簡単に言うと、私と真利奈の仲がとても良かったからかな。私、入学式であいさつしたんだけど、そういうのした人って近づきにくいじゃない。中学のときそうだったから、私不安で。でもそんな時、教室に入って最初に声かけてくれたのが真利奈だったの」
氷華の目は、虚空を見つめ、脳裏にその時のことを思い浮かべる。
「それで真利奈はね。私にすごいっていてくれたの。どうやったらあんな言葉が出てくるのか、なんであんなにスラスラしゃべれるのか。そんなことから、話が盛り上がって......。そのときはまだ真利奈の成績はよくなくって。だから私と仲良くなって色々利用するつもりだったらしいけど。馬が合っちゃってね。もうすっかり親友になちゃった。
それにしても、初めてだった。いきなり知らない人から声をかけられるなんて。自分でいうのもなんだけど、優秀すぎる人とそう出ない人では、ちょっとした壁があるのよね。特別扱いされるのが嫌で、私の方から避けていたのかもしれないけど。とにかく、いろんな人と関わり合うことについては、真利奈にはすっごく助けられたわ」
その気持ちは周平にもわかるような気がした。優秀すぎることだけが一人でいる理由では無かったが、周りから外れたところにいたのは同じだった。涼稀がいなかったら、どうなっていたことか。孤独というものはなかなか辛いことである。
今度は駿太郎が話し出す。
「天白と俺があったのは、当然ながら高校からだ。真利奈と仲が良かったから自然と会う機会も多かったし、そのせいでいつも間にか、駿君呼ばわりだ。全く......いい迷惑だ」
ため息をする、駿太郎と笑っている氷華。そしてそろそろ話をやめて家まで直行したい周平。
「まあ俺と天白の場合実際には、中学に入る前には、お互いの顔と名前くらいは知ってたけどな」
しかし、残念ながら先輩たちのお話はしばらく続くようだった。




