助けたい!
更新だけ
とてつもない爆音からその幕は下りた。
バスが揺れた。
とてつもない衝撃とともにバスが横倒しになる。周平は、バスが傾いているのが分かった。とっさに目をつぶっる。しかし、一度目の衝撃以降、一向にからだに衝撃が伝わることはなかった。周平は目を開ける。
目の前は淡い黄金色をしていた。いや、体中が黄金の光に包まれている。
なぜ?
周平の率直な疑問の答えはすぐに分かった。
「緑谷! 大丈夫か!」
泰然の声だった。
「ああ、お前のおかげでな」
だんだんと黄金色の輝きが薄くなっていく。バスは間違いなく横倒しになっている。周りには、周平と同じく膝をついた状態で金の壁から現れた者たち。そして2つ、薄くなっていく白銀の壁から出てきたのは駿太郎と泰然だった。
「まったく。自分だけ防御魔法をしないのだから。緑谷家次期当主が聞いてあきれる」
泰然は少し怒った様子だった。
「お前が助けてくるだろうと思ってたんだよ」
「......それでカッコいいこと言ったつもりか! 今はそれどころではないんだぞ」
「わかっているさ。氷華。とりあえずこのバスは使えんな」
皆が呆然とする中、駿太郎が氷華に尋ねる。外部からの一度の爆発だけで、それに誘発されるように起こるはずの二度目の爆発が起きていないことを、駿太郎は冷静に悟っていた。
そして、それが冷却魔法に優れる氷華の魔法によってであることも。
「ええ、爆発の寸前温度を急激に下げたから、機械系の方がダメになってると思う」
「よし。輝とりあえずこのバスから出してくれんか」
そういうと、駿太郎は全員分を覆う防御魔法を使った。
「もちろんです............欠片」
今にも崩れ落ちてきそうなバスの中で輝善がいった瞬間、横倒しになったバスは一瞬にして約10センチ四方の欠片になって崩れていった。
バスの残骸の中で少年少女が立ち上がる。
「さてと、これからどこに行く駿太郎」
「五師八弟戦場に向かう。そのほかは、真利奈。頼めるか」
真利奈は、少し悲しそうな顔をしたが、すぐにピシッとした顔になり、分かったわ。と言った。
周平は視線を気にする。もちろん輝善からの。
連鎖的な爆音とそれに伴う悲鳴が街のあちこちで上がっている。
ところどころに銃を持った男たちが立っていて、逃げ惑う民間人に向かって発砲していた。まだそれは脅しに使っているようで、人にあたっていないようではあったが、それを一目見た周平は許せなくなった。
周平の目線の先の先にいた女性が一人、大陸系の大柄の男たちににつかまった男の方は5人ほどで、手には銃を持っている。彼女は人質になるのだろうか。それを周平は許せないのに、なかなか行動には移せなかった。
五師八弟家。氷華、駿太郎、泰然、輝善。そしてなぜか智晴は、戦線へと移動していく。おそらく、狙われることになるだろう「中心部」へ。
魔法と違い、銃などの兵器を防御した経験は周平にはない。魔法でさえ、それ用のMMOを装備しているから戦えるのだ。こんな本気で人の命にかかわるような戦いはしたことがない。
残っているのは、真利奈、天悠、翔、秘都美、鈴、采聖。そして周平。
周平は何もできない自分に嫌気がさした。
「とりあえず、私たちは山門高へ行く......」
「わたしはあの人を許せない!」
「ちょっと、秘都美!!」
真利奈が叫ぶ。
だがすでに秘都美は飛んでいた。男たちが女性に乱暴しようとしたところだった。
乱暴を働こうとした男にけりを入れたあと、女性を下がらせてかばうように立った秘都美は、どこからともなく懐中電灯と様なものを取出し、スイッチと思を押した。
キュウィン! という音がして、刃が出てきくる。秘都美は愛刀を構え、宣言する。
「わたしはあなたみたいな人たちを許さない!」
「××××××××××××××××」
何を言っているのか分からない、蹴られた男が大きな声でわめく。
と、いきなり一人が銃を撃ってきた。彼我の差は女性が這いながらも懸命に下がってくれたおかげで5mはあった。
秘都美は銃の発射に合わせて思いっきり刀を振る。
斬撃は相手の撃った銃弾は、剣圧によって落とされる。相手があからさまに驚いているのが見える。
今度は秘都美が攻撃する。
一瞬にして間合いを詰める。
男たちは動くことができない。
五人の真ん中にいた男のみぞおちに剣の柄を当てると、今度は刀を裏返して相手二人の膝小僧に思いっきり当てる。
一人が胸を抑えて倒れ、二人が足を抑えてうずくまる。
秘都美はなおも動きを止めない。残る二人も鮮やかに倒すと、女性に声をかけて真利奈のほうへ今度は走って向かった。
「秘都美! 何やってるの!」
真利奈が怒る。
「先輩。私はやっぱり戦います。このまま一般人が傷ついていくのを魔術師である私が黙ってみているのは嫌です!」
秘都美が訴えかけた。真利奈も目を伏せて黙る。
今度こそ。周平は胸に誓って真利奈へ言った。
「先輩。俺も戦います。俺も、このままここの人たちが傷つけられているのを見てるだけなんて嫌です」
周平は懸命に訴えかける。ほかの者も、どうやら同じ意見だったようだこうしている間にも、銃声が至るところで響いている。
「分かった。それじゃあ、私が言う人だけついてきなさい。それ以外は住民を助けながら山門高へ行くこといいわね。これは風紀委員としての命令だからね」
真利奈の意を決した顔に、皆は頷くしかなかった。
「それじゃあ、秘都美、采聖、周平は私についてきなさい。それ以外は住民の保護を最優先として、山門高へ行くこと。以上、行くわよ」
真利奈はそういって走って行き。あとに3人が続く。
残された鈴、涼稀、天悠、翔は、真利奈に言われた通りにすることにした。
◆◇◆◇◆◇
要塞内からの合図を見て、洪成は迷うことなく侵入を命じた。
一気に森から出て、入り口まで走る。10人の警備のための兵を一撃ずつで仕留め扉の前に立つ。扉に触れると、それまで固く閉ざされた扉が次と開いていった。
「中に入るぞ」
29人の部下とともに、洪成は疾風のように駆ける。
「中心部」まで駆けにかける。おそらく時速に換算すれば100キロ近く出ているだろう。もし魔法を使っていたとしても、とてもではないが常人の真似できることではなかった。
それを可能にできる。だからこそ、今回の作戦に彼らが選ばれたのだった。
目的地についた。あとは侵入して情報を抜き取るだけだ。
「青瑛」
「はっ」
洪成に呼ばれた青瑛が、一歩前に出る。
「我に宿る鬼よ。己が力を開放し、無限なる力を我に与えよ。鬼神の力!」
青瑛は軽くこぶしを前に突き出す。
それが壁に触れた途端、強大な壁に穴が音を立てて崩れ落ちた。
青瑛を先頭に30人は次々とその穴から侵入を開始する。途中で出会った相手は、必ず一撃で仕留め、壁があれば青瑛が一撃の元に破壊する。
彼らは音もなく。奥へ、さらに奥へと駆け抜けていった。




