動き出す......闇
「中心部」の見学が終わり、外に出てみるとすでに日は落ちかけていた。
周平と涼稀はその場で輝喜と智晴にその場で別れを告げ帰路についたのだった。
今はバスに揺られているところだ。
「にしても凄かったな。朝日さんたち」
「うん。まさかヘリが迎えに来るとは思わなかったよ」
輝喜たちと別れてすぐに、二人がどのようにして帰るのか確かめようと振り返ると、先ほどまで自分たちのいた場所に、ヘリが向かっていた。
周平たちがまさかと思って見ているうちに、あっという間に二人を乗せて飛んで行ってしまったのだった。
「やっぱ五師家ってすげんだな」
「うん。本当にね。一般人とはスケールが違うよ」
こうして話しているうちに、時間は過ぎ、バスは周平たちの目的地にとまった。
外に出ると日はもうくれていた。
「涼稀、今何時だ?」
「えっと、もう7時近いね。早く帰らないと夕食に間に合わなくなるよ」
「そっか。それじゃさっさと帰るか」
二人は足早に旅館へ戻るのであった。
◆◇◆◇◆◇
部屋に一人の人影がある。
彼は上下に揺れる船内で、数日前からある連絡を待っていた。
ある作戦の大部分。約三ヶ月の時をかけた第一段階がそろそろで終わるはずだった。
男は初老と言ってもいい歳であり、元の黒髪にはすでにところどころ白髪が混じりっていて、黒ではなく灰色に見える。
しかし、椅子に座る背筋はしゃんとしていて、体には無駄なものは見当たらなかった。ほとんどない脂肪に必要最低限の筋肉。まさしく「武」の道に通じる洗練された肉体であった。
不意に、部屋に音が響いた。
扉がノックされたのだ。
「洪成様。よろしいでしょうか」
「張峯か。入れ」
「はっ」
張峯と呼ばれた男が入ってくきた。こちらはまだ青年であった。
黒髪を短く刈り上げたたくましい男だ。彼もまた「武」に生きる者なのだろう。洪成と同じく体には余分なものが一切ついていない。
「何のようだ」
「はい。ようやく内部の準備が整った。ということをお伝えにまいりました」
張峯が頭を下げながら、報告をいれる。
「そうか。この船の準備はどうなっている」
「私が部下からの報告を受けたあと、すぐに準備するように言っております。もうじき完了しますかと」
「わかった。それでは、私は怨命様にこのことを伝えてくる。お前は持ち場に戻り、準備ができ次第もう一度報告に来い」
「はっ。それでは失礼いたします」
一礼して張峯が部屋から退出した。
洪成は座ったまま数度深呼吸して、椅子から立ち上がった。
「ようやく始まるか」
彼は独り言を呟くと、そのまま部屋を出て怨命のいる部屋へ歩いて行った。
◆◇◆◇◆◇
周平たちが旅館へ戻ると夕食の準備はもう整っていた。
二人は急いで部屋に戻り、少ない荷物をおいで食堂へ降りて行った。
昼食の時と同様に氷華の挨拶で夕食は始まり、美味しい料理は次々に口に運ばれていった。
終盤、デザートのためにお皿がすべて運ばれたあと、それまで機会を伺っていた周平が口を開いた。
「天白先輩。それとみんな、少しいいですか」
「どうしたの周平くん」
それから周平は(ちょくちょく涼稀に助けてもらいつつ)昼にあったことを話した。
「というわけで、明日山門高校にいける人は、就寝までに俺に連絡お願いします」
聞いていた者たちは異口同音に了解を意味する言葉を発する。
その直後、デザートが運ばれて来たことで一旦その話はやめになり、食堂はまた他愛もない雑談の声で騒がしくなった。
◆◇◆◇◆◇
コツンコツンという足音と共に歩を進める。
階段というよりかは、梯子と言った方が正しいだろう。えらく急な階段をいく度か上り下りして洪成は怨命のいる部屋へ向かった。
「怨命様。洪成です」
「入れ」
感情のない無機質な声が返ってきた。
扉を開け一礼する。あまり広くない部屋には怨命が一人だけ、ゆったりと椅子に腰掛けていた。机の上には書類がきちんと整頓されておかれている。
「陸での準備が整いました。船内もそれそろ準備が終ります」
「そうか」
怨命はそう言っただけだった。
無言で洪成を見る彼の体は、細かった。洪成や張峯のように筋肉があるわけでもなくて、ただただ細いだけだった。構成と同じく髪に白いものが混じり、シワの多い怨命の見ためはただのひ弱な老人だった。
だが、よくみればその目には強い力がたぎっていた。それは時に見るものを魅了し、時に恐怖させてきた。
「張峯から準備完了の報告を受け次第、連絡を入れます」
各部屋には有線の電話が取り付けられている。洪成や張峯がわざわざ部屋に出向くのは、自分の部屋でじっとしているのが嫌だからだ。彼らの仕事はもともと自分の体を動かすことなのだ。
「わかった。準備にあとどれくらいかかる」
「15分以内には」
「そうか。ではそろそろ港に向かうよう指示を出す」
「了解しました。それでは私は以上にて」
洪成はまた一礼して部屋を辞した。
今後どのような動きで自分たちの作戦を成功させるか。思案にふけりながら、慌ただしくなってきた船内を歩いて洪成は自室へと帰った。
◆◇◆◇◆◇
周平たちが部屋に帰ると、さっそく翔と天悠が部屋に入ってきた。
「おじゃましま~す。周平、俺たちも一緒にいくから」
翔が勢いよく宣言した。
「おっけー。んじゃ涼稀よろしく~」
パソコンに向かって何やら打ち込んでいた涼稀が顔を上げる。
「たまには周平も手伝ってよ」
「雑用はおまえの仕事」
と、周平が言い終わると同時に着信音がなった。周平はポケットから携帯端末を取り出してメールが来ていることを確認すると読み上げはじめた。
「えっと、天白先輩からだな。『三年生も全員参加するからお願いします』だってよ。それじゃ涼稀よろしく」
「............」
涼稀が無言で周平に訴えかけていると、ドアが開いて秘都美が入ってきた。
「周平く~ん。2年生は全員行くってっ~」
「だって涼稀」
「もういいよ......」
涼稀は諦めたように、否。諦めて大きなため息をつくと、改めてパソコンに向かう。
「涼稀かわいそうだね天悠」
「そうだな」
慰めるの言葉をかき消すように、涼稀が言い放つ。
「それじゃ、朝日さんに送っとくから今日はこれで解散ね」
「だそうだ、翔、天悠、また明日な。多分明日の日程については30分ぐらいしたら涼稀がメールで送るから」
「ちょ、周平仕事増やさいないでよ!」
「それじゃ、涼稀よろしくな」
「よろしく」
涼稀の心を無視した挨拶と共に翔と天悠は部屋を出て行いった。
「まあまあ、涼稀。俺も一緒に考えてやるからそう落ちこむなって」
「いや、全部周平のせいだから」
「まあ、いいじゃねぇか。みんなで行ったほうが楽しいだろ? それにどうせみんな行くつもりだったんだろうから、山門高校の負担も減らせて一石二鳥だろ?」
ことの発端である周平が言い聞かせるようにいう。
「そうそう、二年生組も、行く予定だったし。ほら、一緒に考えるからがんばろう」
それまで黙って二人のやり取りを見ていた秘都美が口を開いた。
「わかったよ、それじゃ早くおわらせるよ」
三人は、明日の山門高校訪問のためのスケジュールを作り始めた。
話がかなりごちゃごちゃしていてわかりにくかったともいます。申し訳ありません。
もし、全くわけがわからん! という方がおられましたら教えてください。
よろしくお願いします。




