長い前置き
「......で、どうしてこうなったんだ?」
現在、周平を含むバトルマッチの一年生メンバー五人がいるのは......。
「いや~。一回観光に来てみたかったんだよね〜。奈良」
軽い口調で現在の心境を綴るのは、周平の横に立つ涼稀だ。軽口を叩くのが趣味のようなこの少年の顔にも、今回ばかりは心からの言葉のようである。
「そうよ、周平くん。せっかく来たんだから楽しまないと」
そして、その涼稀のそのまた隣に立っているのは紫乃だ。彼女はすでに、奈良の観光をすることにやる気満々である。
「いや、そういうことじゃなくて......」
と言う周平の口調が疲れている理由は、彼の右隣にいる「美」の付く少女にもあるのだが、現在それは保留。
まずは、なぜ彼らが奈良に来ることになったのか、話をしなければならない。
◆◇ ◆◇ ◆◇
時は三週間さかのぼる。
秘都美のことを思い出し、急いで銭湯から出た周平は、急いで服を着替えて外に飛び出して行った。
「周平、おれたちは先に式場に行っとくからな〜」
服を着る涼稀の声が聞こえたのか聞こえてないのかよくわからないが、涼稀には周平が若干頷いたように見えた。
「まあ、周平には一応伝えたことにして、おれたちはさっさと式場にいこうか」
「本当にあれでいいのか? 」
天悠が涼稀に聞く。ちなみに駿太郎はすでに式場に向かっていた
「いいんじゃない? もしもの時はこれもあるし」
と言って、着替え終わった涼稀はポケットから携帯端末を取り出す。
「それって、普通のスマホじゃないの? 」
どこからどう見ても、機能的には自分の所持する携帯端末と大した変わりばえの無いそれを見てに、翔が首をかしげながら質問する。
「うん、外見はね。でもこれにおれの魔力を流すと、周平に俺の居場所がわかるようになってるんだ。
原理の説明はめんどくさいから省かせてもらうけどね」
涼稀の言葉によくわからないながら、ふ〜 ん。と相づちを打つ翔と天悠。
「ま、周平ももしもの時は涼稀の特性スマホでなんとかなるみたいだし、先に式場にいこっか」
翔が言い、服の着終わった3人は銭湯を出て式場へ歩を進める。
「ハァハァハァハァ......」
秘都美のいる専用治療室の前まで、全速力で走ってきた周平の息は大いに乱れていた。
「ハァハァ......スゥーハァー、スゥーハァー......よし」
乱れた呼吸を無理矢理正常に戻し、ドアを開けようと心を決める。
しかし、スライド式のドアのとってに手をかけようとすると、ドアは勝手に動き出した。
完全に開いた入り口の向こうに立っていたのは、
「青影先輩」
悲しそうな目をした秘都美だった。
「しゅ、周平くん......」
周平の顔を見て、その目は喜びを隠せなくなっていく......のかと思いきや、隠せなくなっていったのは、涙であった。
「もう、周平くんのばか。いつまで女の子を待たせてるんだよ? 待っても待っても来ないから、寂しかったんだよ?」
初めは少し理不尽な思いもあったが目から零れ落ちそうになる涙を見て、周平は仕方なく反省の言葉を口にする。
「すみません、連絡入れられなくって。緑谷先輩に無理やり連れて行かれたもので」
「うん、もういいよ。それより、そろそろいかないと遅れちゃうよ」
「え?」
「だから、閉会式だよ」
「あ......」
最終的な目的を忘れていた周平はあわてて電源を切ったままの携帯端末を取出し、電源を入れる。
「さ、行こうよぉ~」
端末が起動するまでの少しの間も無駄にできないと、秘都美りはいつもの調子に戻り、周平の腕をつかんで歩き出す。
「あ、ちょっと待って下さ......あ、ついた」
電源の入った端末には、案の定。涼稀からのメールが10件以上入っていた。
「電源が入ってなけりゃ意味ねぇもんなぁ~」
涼稀の魔力で送られてきたそれも、機械の電源がついていないのであれば意味がない。
(今度電源も自動的に入るように改造してもらっとくか)
基本何でもできる秀才の周平だが、秘都美がいると、いつもの調子が狂ってしまい、ほとんどのことを上手くこなすことができなくなってしまう。残念なことに、こればかりは周平自身では解決できない大問題である。そして彼がこの大問題を解決するためには、
(まあ、重要なとこでの涼稀の助言が必須だわなぁ)
改めて親友の大切さを思い知った周平は、大問題の源で、自分の腕に張り付いている秘都美に目を向ける。
秘都美が、透き通った青色の髪を揺らしながら周平を見つめ返した。とたん、口の両端が上がった。
「どうしたの周平くん? 私のことが好きになったの?」
「いや、そういうわけではないです」
いきなりの面倒な質問に周平は何でもないように適当に答えを返す。
「じゃあ、なんでこっち見たの? 」
「............」
「ねぇねぇ、なんでぇ~?」
「あ~もう、そんなにベタベタされると気になるんです!」
主に二の腕のあたりに当たる柔らかい感触とか。
「あ、顔が赤くなった。やっぱり私のこと好きになったんでしょ?」
「............」
周平は何か言い返そうとするが、言葉が見つからず、結局黙るしかなくなってしまった。
先ほどまでは、確かにあった秘都美への後ろめたい気持ちは知らぬ間にどこかへ消えてしまい、周平にとっては嫌がらせ以外の何物でもない(現在進行形で抱きついている)ことをしてくる秘都美が、本当に自分のことを待ってくれてたのかさえ疑わしいと思うようになってきた。
と、考える周平は足を止めることなく、秘都美と共に式場へ向かうのであった。
中途半端で申し訳ありません
続きは近日中に更新する予定です。




