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IKAZUCHI  作者: 雪 渓
1章-校内大戦-
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一番忘れちゃダメなこと

 

 (ここは?)


 周平は初めてみる白く幻想的な世界に戸惑う。


 (そうか。俺たちは負けたんだったな)






 目あけると白い光に包まれていた。

 5人を包むその光はだんだんと淡くなり、数秒の間に消えていった。


 ここは会場の外、バトルマッチ本部のすぐ隣にある強制転移専用施設。

 校内行事であるバトルマッチでは、安全のため(一定以上の魔法的)ダメージを受けると、あらかじめ受け取っていた専用MMOにより会場の外に強制転移される。そしてその強制転移先が、ここなのだ。

 広さは普通の教室程度。もちろん今回の大会のためだけに建てられているため、プレハブ作りになっている。出入り口には「専用治療室」と書かれた紙が張られている。


「周平く~ん」


「............青影先輩」


「惜しかったね~。

 ほらほら、あなたたちもそんなところに突っ立てないでこっちに来て着替えなよ」


 5人はそろって自分の格好を見る。


 専用のMMOによって魔法的なダメージは受けないが、物理的なダメージ(例えば、魔法によって起こされた「炎」によって燃やされることはないが、魔法によって作られた「氷の玉」が当たることによる衝撃など)は通ってしまうため、特に、真利奈(まりな)の魔法によって吹っ飛ばされた周平は、いずれにしてもたいしたケガには至っていないとはいえ、ところどころ服が破け、血で汚れている。


「閉会式までしばらく時間があるし、シャワー室にいって汗でも流しておいで。あとケガのある人は言ってね。あ、小さい怪我だからって黙ってちゃだめよ。戦闘後の選手のケアをするのも生徒会のお仕事だから。というかそれをしないと今回の行事は開催が認められないんだけどね」


 そう言う秘都美(ひとみ)にいつものチャラい感じは無く、仕事に対する誠実さが伝わってくる。


(いっつもこうだったらいいのにな)


 周平は心の中でつぶやく。そして、まあ無理なんだろうな。というあきらめの声を、0.2秒後に上げることになった。


「周平くんは、私と一緒にお風呂にはいる? 」


「......先輩。もうそう言う冗談はよしてくださいよ......お前らもそんな目でこっち見てんじゃねえよ!」


 涼稀(りょうき)、天悠(てんゆう)、翔はニヤニヤしながら周平を見つめ、紫乃(しの)は、顔を赤くしながらうつむいている。唯一の救いだったことは、この部屋に6人だけしか人がいなかったということだろうか。


「え~。私は案外本気なんだよ~。周平くんさえOKしてくれ......」


 と、秘都美が言い終わる前に、入り口のドアが開いた。


「周平君たち、お疲れ様」 


 外から、氷華(ひょうか)たちが入ってきた。


 先ほどまで戦い合い、そして完敗した相手の登場に周平たちは戸惑う。


「あら、そうなに気まずい顔をしなくてもいいじゃない」


 あらかさまに戸惑っている5人を見て、氷華は少し不満に思ったが、微笑みをながら話しかける。


「氷華、私シャワー浴びたいんだけど? 行ってもいい? 」


 しかし、氷華の機嫌が何となく悪いことを敏感に感じ取った真利奈は、珍しく気を使った言葉を氷華にかける。その心に気付いてか、氷華もそれ以上は言わなくなった。

 が、逆にそれが重たい空気を作り出す。


「......じゃ、じゃあ、私はシャワー浴びてくるから~」


 数秒後、ぎこちなく真利奈が言うと、そこから時間が動き出した。


「それじゃ、俺もシャワーを浴びてくるかな。一年生(おまえら)も一緒に来い。どおせ浴びにいくつもりだったんだろう?」


 駿太郎(しゅんたろう)がそう言って男子を連れて行く。


「そうですね〜。私もシャワーを浴びるつもりですが、菖蒲(あやめ)さんも一緒に行きませんか?」


「え?」


 まさか自分が氷華に声をかけられるとは思っていなかったため、オドオドとしてしまう紫乃。そんな紫乃にたいして氷華は、今度こそ優しく声をかける。


「さっきは少しツンツンしてたかもしれないけれど、もう大丈夫よ。さあ、行きましょう」


 優しく話かける氷華に少し安心した紫乃は、すでに先に行ってしまった氷華を追いかけて行った。






「はぁ~~~。まだ出ちゃいけないのかな~~~」


 周平の声。


 シャワーを浴びるといった駿太郎について行った一年生男子は、結局、校内にある銭湯まで連行されたあげく、たっぷり1時間のあいだ。お湯に使って今日の戦闘についての話をさせられることになった。現在は、涼稀がその相手をしている。


「なるほどな。涼稀が書いていた魔法陣の上に魔法を放つと、そこで使った魔法が別の魔法陣に移動してそこから魔法が放たれるということなのか」


「はい。正確には、魔法陣の内側に魔法の発動者の体をすべてを納めていなくていけません。それと、僕が書いた魔法陣には、「収束の陣」と「発散の陣」の二つがあって、この二つをつなげることで魔法を別の場所で発動でいるようになっています」


「ほう。それで、魔法はどうやって魔法陣の間を移動するんだ? 」


「まず、ストーンから魔法に使用する魔力情報を抜き出してMMOに送りそれを処理します。ここまでは通常と同じです。そして「収束の陣」に送られた情報は主に電波情報によって「発散の陣」に送られ、そこで魔法が発動します」


 涼稀は、得意げに説明する。しかし、納得のいかない駿太郎は質問を重ねる。


「どうして、「発散の陣」に情報が送られた段階で魔法が発動するんだ? 」


「えっと、それはあんまり言いたくないんですけどね。緑谷(みどりや)先輩の頼みなら仕方ないですね。

「収束の陣」に送られた段階での魔力情報には、攻撃対象の位置を示すための「座標」が魔法式の中に組み込まれていません。「座標」のない魔法式は魔法式として不完全なためでこの段階で魔法は発動はしないのです。

 そして、「発散の陣」。今回は僕の手のひらに書いてあったのですが、ここにはさっきの段階で組み込まれていなかった「座標」の情報をあらかじめ組み込んでおきます。

「座標」の情報を組み込まれていない魔法式と、「座標」の情報のみを組み込んだ魔法陣を無理やりくっつけます。

 残念ですが、この無理やりというのは意味の通りで、無理やりとしか言いようがありません。ただ、この段階がスムーズにいかないために、魔法陣を通した魔法は、通さないで普通に使った魔法よりも圧倒的に威力が劣ってしまいます。」


 長い説明を終え、少し疲れた顔を見せる涼稀。しかし、五師家の時期当主になろう男に自分の考えを話すことができたことに、大きな満足感を得ることもできたようだった。


「そうか、まだまだ聞きたいことはあるんだが、どうもこいつらがのぼせそうだしな。そろそろ出るとしよう」


 そう言うと駿太郎は、もう出るぞ。と涼稀以外の一年生に告げ、自分はさっさと出て行ってしまった。






「どうだった涼稀。ずいぶんと満足そうな顔をしているけど?」


「ああ、周平がいきなり緑谷先輩に、涼稀が言いたいこと有るそうですよ。って言ったときはどうなることかと思ったけど、やっぱり器の大きい人だなって感じたよ」


「フッ。そんぐらいじゃねぇと次期当主はつとまんねぇよ」


「そうだね。そういえば周平。何か忘れてることないかな?」


 銭湯で考え込む2人。しばらくして、周平が声を上げる。


「あ! 青影先輩......」


 そういう周平の顔がみるみる青ざめる。


「なんか、緑谷先輩があんなこと言うからラッキーて思ってついてきたけど、こんなに長居するとは思っていなかったし......」


「そうだね。ひと姉のことだし、まだ専用治療室で待ってるかもしれないよ」


 次の日の登校の風景を頭に思い浮かべ、最悪の危険分子の存在に気付いた周平は大急ぎで銭湯を出て行った。




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