二つの集い
二年生たちとの対戦に無事勝利した周平たちは、下校中に喫茶店に寄って5人で机を囲み、祝勝会を兼ねて明日の対決の話し合いをしていた。
「明日は会長たちとよね~。涼稀くん、どう思う? 」
紫乃が尋ねる。
「う~ん。質問があいまいだけど、今日みたいに魔方陣を描くような隙は作ってくれないだろうし、おれにも奥の手は考え付かないんだけど」
「ああ、涼稀が強力な魔法でも使えれば話は別なんだがな」
「周平。それは仕方がないよ......」
涼稀が力なく答える。
「なら、涼稀が魔法を使ったように見せてかけて攻撃してみればいいのではないか? 」
「天悠、それはどういう事だい」
先ほどまで黙って聞いていただけだった天悠の質問に、涼稀が回答を促す。
「涼稀が強力な魔法を使えないという事を、三年一同は知っているだろ。だから、涼稀はあまり警戒してこない可能性が大きい。警戒されている事といえば、今回みたいに不自然な動きをしたようなときだけだと思う。だったらなんの前触れもなく、涼稀が強力な魔法で相手に攻撃しているようように見せかければ問題ないと思ったのだが」
天悠の説明に、3人は納得する。しかし納得していない1人は、
「天悠、でもそれは難しいんだ。魔法っていうのは、人間がは圧胴させるものだから同じ術式を使った魔法でも、魔法を発動した出者の個体や癖で若干の違いが生まれてるんだ。特に、天白先輩級の魔術師になると、相手が5人なら放ったかでさえわかってしまうんだ。
だから、おれが放ったように見せかけてるのは、天白先輩たちが相手じゃすこし無理があるよ」
涼稀は、自分の懸念を天悠に伝える。
「でも、涼稀。やってみる価値はあるんじゃねの。実際、現時点でお前にもいい案もないんだろ」
「まあ、そうなんだけど......」
「んじゃ決まりだ、細かい事はあとで考えようぜ。とりあえずなんか別の話しないか? さっきから悲愴的な話ばっかで疲れちまった」
雰囲気をど事なく暗くしていた原因である、明日の試合の話題を周平が切り捨てた。
「そういえば、紫乃の魔法は何がおきていたんだ? 」
それまで気になってはいたのだが、それまでの雰囲気もあってなかなか聞き出せなかった紫乃の魔法について、翔が「すみません我慢できませんでしたと」いう顔で尋ねる。朝の打ち合わせのときも、紫乃のあの魔法のと事はまったく聞いていなかったのだ。
「それは......」
「あ、いや、別に言いたくなかったんならしゃべらなくってもいいんだ」
紫乃がうつむき口を濁す。まずい事を聞いたのかと聞いた本人である翔はあわてる。
というのも今の時代、相手の魔法の組み方。特に、その人オリジナルの魔法について無闇に聞き出すのはマナー違反なのである。
翔は出会って少ししかたってはいないとはいえ少しずつ強くなっている絆を信じつつ、このマナーの事も頭に入れて出来るだけ控えめに聞いたつもりだったのだが、彼女の反応をみて改めて少し後悔してしまった。
「いいえ。これは別に隠さなくてはならない事ではありませんし、皆さんの事は信頼しているので。それに涼稀くんはもう知ってるしね」
少し改まった口調と、緊張した笑みを浮かべて紫乃は翔の言葉に答えた。
「私の家は、源氏の将。那須与一を先祖とする家系」
紫乃が語りだす。
「源平の時代より今まで、途絶えそうになりながらも続いてきたの。私の家はその本流。まあそれはおいといて、今日の試合で使った魔法の説明をするわね。
まず、私は目標を定めると多少目標がずれてもそれを追尾して別の魔法を当てる事が出来る魔法を持っているの。
今回はそれの応用版。まず、短弓型MMOを軸として、さらに九つの魔法による弓を作り出す。この弓は、もちろんあらかじめ目標を決めておくの。
そして、作ったた弓に火と水の魔法で作った矢をそれぞれ一本ずつセットして相手に向かって射る。
これがあの魔法の基本よ」
紫乃は、苦笑いしながら説明する。
「でもそれだけじゃあ、あの氷と白い炎の弓は説明できねえぜ?」
「それがこの魔法の大事な部分よ。はっきり言ってここまでは、普通に出来るの。
それで、あの魔法は......まあ、我が家の秘伝奥儀ね。ごめんなさい、これは話せないの」
「そんな大事な奥儀をあんなとこで使って大丈夫だったの? 」
少し本気の話になってしまったので、翔が慌てて確認する。
「大丈夫よ、あれはまだ序の口。十二まである秘儀の2つ目でしかないわ。あ、1つ目は複数展開のやつね。
ただ、あの奥儀を使う時は、自分が自分でなくなっちゃうみたいで少し怖いのよね。意識はあるんだけど、それが奥の方に封じられて体が言う事を聞かないっでいうか......」
「たしかに、あの時の紫乃は少し神憑っているように見えたしね。目が薄紫に光ってたし」
少し困惑気味になった紫乃に、涼稀が笑う。
「でも涼稀。あれは笑い事じゃねえぞ。俺だって一瞬見とれたからな。そうだろ翔? 」
「いや、俺は周平みたいに余裕じゃなかったし。でも、あの無神経な周平が見とれるとは......ぜひ見たかったなぁ」
天悠もその隣で軽くうなずいた。
「ほら涼稀。こいつらでさえこんなんだ。さっさと告白しとかないと他の男子に奪われるぞ? 」
周平の冷やかしに涼稀はあわて、その隣で紫乃は赤くなっていた。その反対側では、周平と男2人がその情景をニヤニヤしながら見ていたのだった。
そのころ、誰もいなくなった学校では、3人の三年生がバトルマッチの本部に集い、集会を開いていた。
「ねえ、周平君たちの事どう思う? 」
いつになく不安げな声で、真利奈は2人に問いかける。
その二人とは、もちろん氷華と駿太郎。しかしふたりは、真利奈の声とは裏腹に、何の不安も感じていなかった。
ふたりとも真利奈の不安げな声が、ただの遊びだとふたりとも知っていたから。
そしてこれは、彼らの自信ゆえでもあった。
「ま、大丈夫だと思うけどね。万が一って言うのもあるけど。あれだけの大技を出しといて、まだ奥の手があるとは思えないし」
「俺もそう思う。油断は禁物だがな。特に周平には」
今日の試合は氷華たちも見ていた。もちろんそこでも周平の強さも。
「そうよね、まったくあの子は......。まさか采聖相手に互角どころか圧していたとはね」
「まったくだ。采聖が近距離があまり得意ではない事を含めても、1年でしかも入学したばかりの子の時期であれは異常だ」
氷華も駿太郎もあきれるばかりだ。
「でも、学校にハッキングかけるぐらいだから互角にやりあうくらいは予想してたけどなぁ」
それに加え、真利奈もあきれている。一方、彼女の場合は周平が鍵を壊した時からだが。
「それより氷華。周平君とはあのままでいいの? 」
「え、っと......それどういう意味かしら? 」
氷華が引きつった笑みを浮かべる。
「いや~、会長さん。隠しても無駄でございますよぉ~。初めて会った時から、惚れちゃってたんでしょ~。
いいのかな~。このままじゃ秘都美にとられちゃうよぉ~? 」
真利奈がそういって赤くなった氷華に詰め寄る。
「た、確かにこのままじゃいけないとは思ってるけど......」
「だったらさ......」
「真利奈。そのくらいにしておけ。さすがにかわいそうだろ。
それに、他人の恋愛に無理やり干渉する事はない。そういうのは必要な時だけにしておけ」
駿太郎は真利奈の考えている事が大体分っているので、すかさずとめにかかった。
(どうせ明日勝ったら告白しろとでも言うんだろう)
「も~。駿君たら。ここからがおもしろいのに」
とはいつつも、長年の経験から真利奈もこれ以上言ってはいけないと思っていた。昔氷華の逆鱗に触れて大変な事になったのだ。(ちなみにその時も駿太郎が止めてもらった)
「さて、明日の事は心配ないだろう。今日はこれで解散としないか? 」
いまだに回復しきれていない氷華の代わりに、駿太郎が解散の提案をした。
「そうね、そろそろ帰らなきゃね。それじゃあ氷華も帰ろうよ」
「はぁ~、そうね。帰りましょう」
先ほどの事はなかったかのような真利奈の振る舞いに怒りを通り越して半ば呆れながら、氷華は下校の準備を始めた。
そして明日、一年生と戦う事に少しの期待を抱き、夕暮れに染まるドアの外へと足を踏み出した。
なぜにこうなった?
(下手くそ実況)バトルのはじめの方も書く予定だったのに......。
そして無駄に文字数が多こと申し訳ないです。
こんな作者ですが、暖かく見守って下さいよろしくお願いします。




