二年生ー決着ー
今回は、予告どうり早めに更新。
涼稀は、「ソレ」が完成して思わずにやけてしまった。ただこれは、空から自分を見ているであろう鈴への演技でもあった。
「周平! 」
涼稀は親友の名前を叫ぶ。それに反応した周平が、激闘中にも関わらず笑みを浮かべながらこちらを振り向く。
さらに、そのさらに前方で五張りの弓を展開して翔の援護に回っていた紫乃。
その弓が涼稀の声に反応して十張りに増えた。紫乃が詠唱を始め、翔への援護射撃が一度止まる。
一方、すでに限界に近い翔だったが、力を振り絞って晴樹と知樹の相手をしている。
天悠は、涼稀の方を視野にいれつつ秘都美との交戦を続ける。
不意に紫乃の紫の瞳がほのかに光だし、髪が揺れる。
「焔と水よ。互いを高め合い、我にさらなる力を与えよ......十ノ弓ー氷牙白炎」
目標を向いた十張りの弓それぞれに、2本の矢が現れる。
一つは鋭い光を放つ氷の矢。
もうひとつは煌々と燃え盛る焔の矢。
1人につき二組の矢が二年生に向かって音もなく飛んで行く。
狙われた者たちは、それぞれに防御の形を取った。
秘都美は天悠から離れ、晴樹と知樹はお互いを守るように最大出力で防御魔法を発動させる。
采聖が鈴と自分の前に防御魔法を作った。周平は仲間の作った相手の隙を見逃さない。
一瞬で涼稀の立っているところまで走って行く。
「またせたね周平」
そう言った涼稀の顔には、疲れが見える。
「それはあいつらに言ってくれよ」
他にもいろいろ言ってやりたいが、せっかくのチャンスを無駄にはできない。もうみんな崩壊寸前である。
「それじゃあやるか」
「ああ」
涼稀が左手に持っていたMMOを周平に渡す。途端、周囲に静電気が起こる。
「周平、詠唱はしてよ......? 」
「分かってる」
涼稀の問いに周平はいつになく真剣に答える。自分も暴走はしたくない。
「我らの描きたる円陣にて、雷神よ我が命に従いて彼の者たちを焼き尽くせ............雷霆爆散!」
詠唱の終了と同時に、会場が複雑な模様に光り出す。そして......。
会場全体に、落雷がいくつも落ちたような爆音が鳴り響いた。
涼稀によって会場全体に描かれた魔法陣の内側では雷が波打つように流れている。
それは、はたから見れば、美しくも見えた。
翔と戦闘状態だった晴樹と知樹は最初の一撃で強制移転。采聖は防御魔法をフルに使ったが、押し寄せる雷に遂に耐えきれず場外へ。
また、高度をさらに上昇させた鈴だったが、雷の手は天空にも及び彼女を襲った。
全体魔法にありがちなのが、攻撃する範囲全体にその攻撃が当たってしまい、仲間に魔法が当たることがあるということ。
翔が使った「狂荒刃風」はこれの典型である。
全体魔法の効果発動の領域は、その術者の力で決まる。そして、仲間に魔法が当てずにフルパワーで魔法を発動するにはかなりの腕が必要になる。それこそ、五師八弟家の当主のような強さが。
しかし、翔をはじめとする1年は誰一人としてこの魔法をの攻撃を受けていない。
なぜか?
涼稀によって描かれた魔法陣には仲間に魔法が当たらないように術式が組み込まれているからである。
普通の手段では不可能な技術の盛り込まれたこの魔法に、観戦にきていた氷華たちが驚いていたことは涼稀たちは知らない
雷の波紋が収まった会場には、1年生の面々と秘都美。
秘都美は、瞬間移動を連発して上空を移動していた。鈴のように可視できる場合は攻撃もできるが、彼女のように不変速的に上空を移動する物に攻撃をしかけるのは、さすがの周平でも無理があった。
彼は雷霆爆散という大技の発動持続に、ほとんどの処理能力を割いていたのだ。
緊張して臨戦体制に入る一年生組をよそに、秘都美は仕方がなさそうに両手をあげる。
彼女もまた、瞬間移動の連続使用によって戦えない状態になっていた。ましてや、5対1である。瞬間移動の使えない秘都美に勝機がないのは明らかであった。
一拍、
そして試合会場は歓声に包まれた。
「いいものを見せてもらったよ」
周平たちが会場から出ていくと、采聖が残念そうに。それでもほおを硬直させて周平に声をかけた。
「今回はこいつらの手柄ですよ。俺は涼稀の作った魔法陣に魔力を流し込んだだけです」
「そうか。だが、何故涼稀が走っているのか考える時間もなかったな」
采聖はため息ながらに言った。
「それも、涼稀の作戦です」
と言って、周平は隣にいる涼稀を指差した。
「前回の試合を見た感じ、指示を出していたのは百地先輩だけでしたので、先輩が指示を出すを防げば、こちらの作戦も通りやすいと思ったんです。
瀬戸先輩も、反射的な頭の回転はいいですがじっくり考える方ではないと思いましたので」
涼稀が説明する。
「そうか。それで俺たちはツボにはまったということか。
ところで、あの魔方陣はどんな術式で作ったんだ? 」
「残念ですが、それは言えません」
「そうか。それならいい」
「おーい。采聖! いつまでそこで話してるの。もういくよ〜」
「おっと、鈴のお出ましだ。それじゃあな」
鈴の呼び出しに、采聖が応じて周平たちから離れて行った。
「いつ見てもあの2人はラブラブだよね」
「菖蒲、2人のこと知っているのか? 」
「当然よ。この学校の生徒会コンビといえばあの2人は有名よ。生徒会行事の司会をいつも2人でやっているらしいし」
紫乃によってもたらされた新たな情報に、あの2人ならやりかねん。と思いつつ周平はすでに明日のことを考えていた。




