二年生ー戦闘開始ー
昨日の午後の授業も無事に消化し終え無事帰宅した周平は、今日も涼稀と一緒に登校してきた。
秘都美も一緒に登校したかったかったようだが執行部のほうで色々あるらしく、先に学校に行っていた。
「周平、涼稀おはよう」
「おはよう」
靴箱の前で、翔に声をかけられた。後ろに天悠もいる。
「翔と天悠は家は同じ方向なのか? 」
「うん、実は翔とは中学からの付き合いなんだ。それにしてもよく分ったね」
徳帝高校は、電車通学がほとんどなため駅から徒歩で来る人が多い。それゆえ一緒に来ていたからといって同じ方向から来たとは限らないのだ。
「北にある正門をくぐって靴箱にくるまでお前らの姿は見なっかたからな。
入ってきたのは南の門か? 」
「当たり~。さすが優等生」
「どうも」
周平はわざとらしく言った翔にこれ以上付き合ってられんと適当に流す。
「さて、無駄話はこの辺にしといて教室に上がりながら今日のことを話さないかい? 」
「俺もそうしたかったところだ」
「それじゃ行こうか」
翔と周平に見かねた涼稀の意見に天悠が賛同したため、涼稀と天悠は歩き出した。
「おい、まてよ」
周平と翔も急いで付いていく。
第3棟に入り周平たちの教室がある4階まで上がって行くと、ちょうどそこに柴乃が立っていた。
「ちょうど良かった菖蒲お前も一緒にこい。涼稀、この際屋上まで行かないか? 朝のHRにはまだ時間があるだろ」
周平が涼稀に問いかける。
「そうだね、菖蒲さんも一緒にきてよ。今日のことについて少し打ち合わせをしときたいんだ」
最初なんのことか分らなかった紫乃だったが、だんだん内容が掴めたらしく先に行ってしまった周平たちの方へ階段を上って行った。
6階にある第3棟の屋上の真ん中で、5人の生徒が輪になって座っている。
「さて、今日の対2年生の作戦なんだけど、言ってもいい? 」
すでに5人の軍師役的な立ち回りになっている涼稀が4人に問いかける。無論、反対はない。
「昨日2年の決勝戦を見にいったんだけど、思っていたよりも強くてこのままだと周平がいても勝率は4対6ぐらいなんだ」
「やっぱり先輩たちは強いんだね。でも、涼稀くん。考えはあるんでしょう?」
劣勢を語っておきながらも楽しそうにしている涼稀の顔を見て、確信した様子で紫乃が問いかけた。
「まーね。それでも、勝てるって決まったわけじゃない。相手はやっぱり先輩だからね。だから、おれはこの『4対6』を『6対4』まで持っていくことを考えてみたんだ」
「で、内容は?」
「色々考えたんだけど、先輩たちは百地先輩を中心に緊密な連携を取ってるから、一人ずつ倒すのはでもこれは難しいかなと思うんだ」
「なるほど」
「だから、こっちはこっちの最も得意とすることで押し切っちゃうのが一番いいかなって思ったんだ」
「俺たちの得意なことってなんだよ」
純粋に疑問を呈する周平に対して、涼稀は周平の方を指差した。
「お前だよ」
涼稀の顔は、とても嬉しそうだった。
「多分、おれたちの一番得意な戦術は、5人それぞれの最大威力で相手を蹂躙していくスタイルなんだよ。やっぱり、なんといってもあったばっかりで、先輩たちみたいな連携は難しいしね。けど、向こうも中途半端な威力じゃ落ちてくれないっていうのはみんなもわかると思うんだ」
「確かに、僕の際火力で先輩たちをKOするのは無理だと思う」
「まあ、俺でも無理だな。けど、普通にやればっていう理解でいいんだな、涼稀?」
「正解。けど、おれが思うように魔法を発動させようと思うと、下準備に時間がかかるんだ。しかも、使えるのは一度きり。みんなに時間を稼いでもらうことになって、申し訳ないんだけど……」
「それで勝てるんなら、俺はそれでいいよ」
「当然だ。何をしてでも勝てばいいとは思わないが、勝たないと面白く無い」
涼稀の言葉に翔と天悠が返し、紫乃がうなずく。周平は涼稀の考えている事が分っているのか片頬に笑みを浮かばせている。
「さて、それじゃあ役割分担から行こうか」
仲間の同意を受けて、涼稀はそれまで自分が考えていたことを説明し始めた。
『それでは、これより2年生代表対1年生代表の試合を開始します。司会は、放送部部長、佐久間利彦がいたします。両チーム、準備はいいですか? 』
魔法により拡張された司会からの確認の声が、100m×100mの試合場と化した第1練習場に響く。
試合開始前に魔法を発動させないようにするための結界の中で、涼稀と采聖がうなずく。
『それでは、レッツ、ゲーム!! 』
司会の宣言とともにプレーヤーを囲っていた結界が消えた。
2年生の決勝戦のときと同様に鈴が火属性の複合魔法で上昇し、秘都美が消える。それと同時に天悠が仲間5人を囲む備えて神聖なる障壁の詠唱を始めた。最初の一撃に備えるためだ。
瞬間移動で現れた秘都美の太刀が涼稀を襲う瞬間、何とか神聖なる障壁が完成し、その太刀を防いだ。
「やるわね~。これじゃあ愛刀が刃こぼれしちゃうじゃない」
神聖なる障壁にそのままの刀では勝てないと悟り、秘都美は40mほど離れた采聖のいる方へ華麗な跳躍で飛びすさる。
「天悠!」
その瞬間を狙って、涼稀が声をかける。天悠が神聖なる障壁を解いた。
「散! 」
涼稀の号令に従って、4人が涼稀から説明された相手に散らばった。
周平は采聖、魔法を解いた天悠は秘都美、晴樹と知樹の相手には翔と紫乃とがそれぞれが当たる。
4人が散らばったのを確認した涼稀は、自作の魔法式を発動した。そして、上空にいる鈴と試合場の各所で始まりつつある戦闘に目を配りながら走り始めた。
涼稀が無秩序に走り出したのを訝しく思いながらも、采聖 は急速に接近して来る周平から目を離せなかった。
周平が、手ぶらの手であたかも剣を振りかぶって切りかかってくるようにしながら采聖に向かって来た。その手が降りお降ろされる直前、何もなかったはずの手には雷剣握られていた。
采聖はこれに対して防御魔法を発動するのではなく、避けることを選択した。その選択は間違っていなかった。
すでに発動していた身体強化魔法の効果を極限まで引き上げ、後方へ跳んだ。彼がさっきまでいた場所には、小さなクレーターができていた。臨時的に発動した生半可な防御魔法では、完全に押し負けていただろう。
采聖は周平の器用さとパワーに驚きながら、魔法の詠唱に取り掛かった。
天悠の神聖なる障壁に攻撃を阻まれて後退していた秘都美を、数本の光の矢が襲った。跳躍中だった秘都美は、空中で瞬間移動を使ってこの攻撃をかわした。
「先輩に喧嘩を売る可愛い後輩はだ〜れだ? 」
「俺です」
再び現れた秘都美に、光の矢ーー|《聖なる矢を放った天悠が答える。
天悠は防御魔法専門と言っていいほど防御に特化した魔術師ではあるが、初級魔法であるこの程度の攻撃魔法は扱うことができる。
秘都美が愛刀を構える。天悠は、さっきまで使っていたMMO(魔力情報の処理をするもの)の電源を切り、自分が実戦で得意とする九つの魔法に特化したブレスレット型のMMOのスイッチをいれた。
秘都美が動く。天悠の手首ににノート程の大きさの盾が現れた。ベースのような形をしており、尖っている先端部分が手の先と同じ方向を向いている。これが九つの魔法の中の一つ目、大地の盾だ。
「へ~え。面白いもの持ってるのね。楽しくなりそう」
笑みを浮かべる秘都美に、天悠は無言で構えた。




