理解し難い関係
増岡から事情を聴いた川野は、さっそく翌日、小林をランチに誘った。
現在、彼女が増岡をどう思っているのか、確かめるためだ。
佐渡と以前、オムライスランチをしたカフェに、入った2人。
だが決して、川野が好物のオムライスを食べたいがためだけに、選んだ訳ではない。
ここなら、会社からまあまあ離れているので、他の社員に聞き耳を立てられる事も無いだろう。
30〜40代であろう、若めの夫婦が営んでいるカフェなのだが、照明が暗く、純喫茶の様に落ち着いていて、込み入った話もしやすい。
「いただきまーす。⋯はぁ、やっぱり美味しい。」
オムライスを口にする川野。
トロトロの玉子に、舌鼓を打っている。
「いただきます⋯。んっ!このえびドリアも美味しいです。」
元気が無かった小林の顔も、思わず緩んだ。
「良かった⋯。(モグモグ)⋯凪ちゃんさっ。こんな事聞いて何たけど。この前、アムールのチョコ買って行ったじゃん?⋯あれって、増岡へのチョコだよね?」
小林の手が止まった。
「⋯そうです。」
「だよね!いや、何かさっ。増岡が小林さんから貰えたけど⋯そのっ、⋯義理チョコなのかなって言ってたからさ。」
「そんな訳ないですっ!⋯そんな訳ないんですけど⋯。」
「ゴメンね!私が間に入る事じゃ無いってことは分かってるんだよ?でも、アイツは聞く勇気が無いみたいで⋯。」
「いえ⋯。」
小林の顔がどんどん曇って行く。
川野は、なるべく小林が嫌な思いをしないように、そっとフォローをしたいのだが。
すると、小林が思い切ったように話し出した。
「私は増岡課長が好きです。推しとして、遠くから見るだけの存在でしたが、さりげなく会話を出来るまでの距離になれました。だから、遊園地に誘ってもらった時には、本当に嬉しかったんです。⋯でも、私、気づいちゃったんです。⋯増岡課長は、私をデートに誘いたかった訳じゃない。⋯私なんかより、川野さんの事ばかり考えてる。仕方ないですよねっ。そんな姿を見てしまったら、告白なんて出来ませんでした。」
またか⋯。
以前も、増岡に彼女が出来た時に、こういう事があった。
2人の仲を疑われた、苦い思い出。
今回こそは、ちゃんと上手く誤解を解きたいと思い、川野は焦った。
「いやっ!凪ちゃん、それだけは無い。増岡とはずっと友達だし、一度もそういう、雰囲気になった事が無いよ?遊園地の事は、私が哲也君の事でウジウジしていたから発破をかけてくれたの。だからきっと、そっちの作戦で頭が一杯になってしまって、凪ちゃんとのデートに集中出来なかったんだねっ。本当にゴメンね。」
川野は、何とか小林をなだめようとした。
だが、逆効果だったらしい。
小林の目が、潤み出してしまっている。
「川野主任は分かってないです⋯。良いんです。所詮、私は、増岡課長のファンの一人に過ぎません。増岡課長が川野主任を想っていても、私には入れないテリトリーなので、目くじら立てられる立場ではありません。それに、私は川野主任の事も大好きです。だから、これ以上、増岡課長と距離を縮めようとは思いません⋯。」
そう言って、小林は悲しげに笑った。
「そんな事ないよっ!本当に、そんな事無いんだよ?でなきゃ、増岡だって、本命チョコか義理チョコかなんて気にしないでしょ?」
「じゃぁ⋯証明しましょうか?」
必死に否定をする川野の言葉を、全く受け付けない小林。
「増岡課長と川野さん、それに山本係長も一緒に飲みに行きましょう。私、幹事やるので。近日で早く帰れそうな日、よかったら教えて下さい。」
「分かった、良いよ?」
飲みの席で証明するとは?
小林が何を思っているのかは知らないが、逆にこれは誤解を解き、増岡と小林をくっつけるチャンスだと思い、川野は受けて立つ事にした。




