何で好きになったの?
山本は、今まで行き場のなかった思いを、全てぶつけるかのように、川野を激しく求めた。
その、あまりにも情熱的な姿に、気持ちが高揚し、切ない吐息を漏らす、川野。
ギシッギシッと、ベットを軋ませ、2人はあっという間に、快楽の果てに落ちて行った。
「光っ!お寿司来てるよ〜。」
川野がシャワーを浴びている間に、配達員から何食わぬ顔で、寿司を受け取った山本。
先程までの色気がほとんど抜け、爽やかになっている。
「ありがと〜。さぁ、食べますかっ☆」
化粧を落とした、これまた、いつも通りの色気より食い気の川野が出て来て、そのままキッチンに寄り、ペアの琉球グラスに氷を入れ、ローテーブルに運んで行った。
「あっ!これっ!勝手に、俺ん家から持って行ったでしょっ!」
山本が口を尖らせて、そう言った。
「ごめん、ごめんっ!でもさ、プレゼントしたのは私だから、邪魔になっちゃうかと思ったのっ!」
山本の拗ね具合を、少し面倒臭そうにしながら、ケーキのロウソクに火をつける川野。
「そんな事ないよっ⋯気に入ってたんだから。無くなってて、かなりショックだったんだからね。」
山本の機嫌は、なかなか直らない。
確かに、自分がプレゼントしたとはいえ、他人の物を勝手に持ち出すのは、良くない行為だ。
「ごめんて。ほらっ!ハッピバースデー、トゥーユー♪⋯」
電気を消し、手を叩きながら山本に笑顔を向け、歌い出す川野。
拗ねていた山本の顔が、ほころんで来る。
「ハッピバースデー、ディア哲也君〜♪ハッピバースデー、トゥーユー♪」
「フッー!」
長いロウソク3本を、素直に吹き消した山本。
パチパチパチ―
「イェーイ!誕生日おめでとう♪」
そう言って川野は、山本を優しく抱きしめた。
「ありがとうっ。まさか今日、光に祝ってもらえるなんて、思ってもみなかったから⋯。めっちゃ嬉しいっ。」
川野に抱きしめられながら、ニヤニヤが止まらない山本は、思わず両手で自分の顔を覆った。
「うふふっ、良かった。私も、哲也君のお誕生日、祝えて嬉しいっ。⋯さて、今日は何を飲みましょうか?」
「もちろん、泡盛で!」
それから2人は、つまみや寿司を食しながら、泡盛を堪能した。
その空間は、とても和やかで居心地が良く、昨日まで別れていたのが嘘のようだ。
デザートのチョコレートケーキまで食べ終え、以前の様にソファーで寛ぐ2人。
今日は、山本の肩に川野がもたれ、頭をゆっくりと撫でてもらっている。
「ねぇ、光?⋯⋯光は何で俺の事、好きになってくれたの?」
山本が、少し遠慮気味に尋ねた。
実は今まで、こんな質問はされた事がなかった川野。
「えっ?うーん⋯。」
考え込む川野。
それを不安そうに見つめる山本。
「⋯⋯何だろうねぇ。好きな所は、いっぱいあるよ?格好良くて可愛いし、甘えん坊だし、優しいし、声も匂いも好きっ⋯⋯ヤキモチ焼きな所も、ほどほどなら。好きになった理由は、一言では言い表せないなっ。でも、何だろう。⋯⋯別れてから、こんなに思いを引きずった人は、初めて。」
そう言って川野は微笑み、山本の頬にキスをした。
別れた人を、2ヶ月近く引きずるなんて⋯。
一般的にみたら、よくある事なのだが、きっぱりと切り替える川野の、今までの恋愛からみれば、到底、あり得ないことなのだ。
少し泣きそうな山本。
自分が思っていた以上に、ちゃんと川野から想われていた事が、嬉しかったようだ。
「ありがとっ。⋯⋯⋯俺も、なんで光を好きになったか言って良い?⋯⋯。これ言うと、引かれちゃうかな⋯。」
「うふふっ、何?何?ぜひ聞かせてっ!」
不安そうな山本をよそに、興味津々の川野。
迷った挙句、山本が口を開いた。
「分かった⋯。いつか言おうと思ってたから⋯⋯。実はね、俺、前にも光と会ったことがあるんだ⋯⋯。」
「えっ?⋯。」




