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倉庫の光さん〜左遷先で恋が動き出しました〜  作者: 桃山あんづ


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季節が巡るのは早いですね

2月3日


いよいよ、川野と佐渡がバディを組んで進めていた、バレンタイン企画がスタートした。


今日は土曜日で本来は休みなのだが、買い物客が疎らになる、20時から特設会場の設営を行う。

そのため、川野たちは午後から出勤をして、搬入の準備を行っていた。


この大型スーパーの特設会場は、3階建てのうちの、1階の食品売り場の横にあり、催事が無い時は主に、テーブルや椅子をいくつか設けて、買い物客の休憩スペースとして活用されている。


2階には衣料品売り場、ミニゲームコーナーがあり、3階には文房具屋、本屋、100円均一など、テナントがいくつか入っているが、会場の真上は天井まで吹き抜けになっており、広々とした開放感がある。


今回は、川野と佐渡に加え、沼田さん、三浦君、喜多見と加藤が手伝いに来てくれた。

皆、動きやすい服装に、軍手とヘルメットを装備している。


喜多見は27歳、加藤は25歳と若干の歳の差があるが、2人はとても仲が良い。

お互い、ギャルマインドを持っており、非常に明るくポジティブなところが似ている。

増岡チームで一緒に仕事する事も多く、職場の先輩後輩という関係より、マブダチの様な関係だ。

そして、こういう手伝いの時は、2人とも快く引き受けてくれる。



佐渡の指揮のもと、会場への搬入作業が始まった。


スーパー側が発注したチョコレートたちは、三笠企画の作成した設計図を基に、すでにショーケースや棚に置かれ、上から白いシートが厳重に被さっている。

三浦君の考案したギフトカード類も、きちんと設置してあった。


チョコレート売り場の奥に、装飾物を運び込む川野達。

大きくて重い備品は、佐渡・三浦君ペア、川野・沼田さんペアで運び込み、こまごまとした段ボールを、喜多見と加藤が台車に載せ、せっせと何往復も運んだ。




完成イメージはこうだ。


食品売り場の方から特設会場に入る際、川野と佐渡が考案した、てっぺんにハートのついた2m程の2本の柱が、ゲートとして左右対称に置かれ、買い物客をお出迎えする。

淡い銀色のラメで覆われた柱。

川野と佐渡の意見が割れていた、てっぺんのハートの差し色は結局、両方採用する事となった。

銀色のハートに、パステルピンクとショッキングピンクのラインが、仲良くマーブリングされている。


バレンタインチョコレートを購入すると、会計時にハート型のくじを一つ、引くことが出来る。

くじをベリベリッとめくると、小吉・中吉はポジティブな一言と、ラッキーカラーやラッキーフードのみが書いてあるのだが、店長の考案で、吉はそれに加え、次回のお買い物から使える200円引きクーポン、大吉は500円引きクーポンが付いて来る。


チョコレート売り場のレジから、そのまま奥へ真っすぐ足を進めると、休憩スペースのテーブルや椅子がいくつかあり、端には佐渡が考案した、絵馬を書く、細長いテーブルが設けられている。


絵馬を書き終え、さらに奥に真っすぐ足を進めると、光沢のある赤やピンクのバルーンで埋め尽くされた、アーチゲートが現れる。

そのゲートをくぐると、3方面を深紅の幕で覆ったスペースになっており、絵馬をかける木の柵が設置されている。


公にはしたくはない、でも言葉にはしたい秘めた思いを、ここにひっそりと飾ってもらうのだ。






まず、男3人がかりで会場入口の2本の柱のオブジェと、アーチゲートを設置し、喜多見と加藤がアーチゲートに手際良く、膨らましたバルーンを縛り付けていった。


2人とも美的センスがあるため、阿吽の息で、色違いの2色のバルーンを絶妙にバランス良く配置していく。


川野は、アーチゲート奥の絵馬を飾るスペースを作り上げていた。

佐渡と一緒に骨組みを設置し、脚立に登って幕を掛ける、三浦君のサポートに回った。

そして最後に、絵馬を飾る木の柵を、倒れて来ないように頑丈に固定し、設置作業が完了となった。


清掃、片付けを済ませ、完成した特設会場を最終確認する一同。


「強度も十分、大丈夫ですね。」


沼田さんが一つ一つ、設置物が安定しているか、丁寧に確認をしている。

川野と佐渡も、その都度、手で強度を確かめ、指差し確認を行っていく。


万が一、設置物が倒れてしまったら、取り返しのつかない事になる。

設置作業自体は楽しいのだが、最終確認は、やはり緊張が漂う。



「えー!マジで、超可愛くない?」


「マジ可愛い!」


喜多見と加藤は、ずっと可愛いを連発してくれている。

川野と佐渡の顔が、思わずほころぶ。


「ついに実現化しましたねっ。」


「そうだね。やっぱり、思い描いてたアイディアが形になる時って、たまらなく嬉しいよね。あとは、依頼主に見て頂くだけだね。そろそろ、お呼びしましょうかっ。」



佐渡と、片手でこっそりグータッチを交わし、川野は、食品売り場にいるであろう店長に、声を掛けに行った。



節分の恵方巻を、声を張り上げて売り捌いていた店長が、川野と小走りでやって来た。


「皆さん、どうもお疲れ様です!いや~、凄いっ!イメージ図も拝見しておりましたが、これほど忠実に再現されるとは。お客様の反応が楽しみで仕方ないですね~。」


かすれた声で、ニコニコと微笑みながら、話す店長。

有難い言葉を頂いて、安堵する川野と佐渡。


「私共も、お客様に喜んで頂ければ、これ以上、嬉しい事はございません。来週末は、こちらの空きスペースに、目玉のアムールさんの売り場と、大福屋さんの売り場を設置しに参りますので、今後とも、どうぞよろしくお願いいたします。」


佐渡が代表で、店長に挨拶をした。


「ありがとうございます。あっ、お茶を用意しましたので、良かったら持って行って下さい。」


そう言って、店長はペットボトルの温かい緑茶を、一同に配ってくれた。


「それと…恵方巻がまだ若干、売れ残ってまして…。今なら半額で売ってますので、ご興味あればぜひ!」


さすがスーパーの店長、セールスの方も抜かりない。


「ありがとうございます!ぜひ購入したいと思います!」


気が付けばもう、閉店が間近に迫った、22:30になっていた。


「皆さん、ありがとうございます!お疲れ様でしたっ!」


「お疲れ様でーす!」


ヘルメットと軍手を川野に預け、挨拶を交わし、喜多見と加藤、三浦君が帰って行った。


川野は荷物をまとめ、佐渡と沼田さんと恵方巻を買いに、食品売り場へ駆け込んだ。

夕飯の休憩を取らなかった、腹ペコな川野と佐渡。


あれ?

沼田さんは確か、大盛りパスタを食べていたような…?

でも実際、一番体を動かしてくれたのは、力持ちの沼田さんだ。

恵方巻を食べて、英気を養って欲しいものだ。




「では、僕はここで。」


スーパーの屋上駐車場で別れを告げる沼田さん。

今日は車で出勤して来ていたのだ。


「ありがとうございました!お疲れ様です!」


沼田さんに挨拶をし、川野は佐渡と社用車に乗り込んだ。




「はぁ…。川野さん、お疲れ様です。よく頑張りましたね。」


「佐渡係長も。よく頑張りました!本当に、お疲れ様ですっ!」


「イェーイッ!!」


パチンッ!



思いっきり、ハイタッチをした2人。

その顔は、とても晴れやかだ。


色々あったが、何とかここまで辿り着いた。

初バディを組んで、メインで行動していた2人だけにしか分からない、達成感や開放感がある。


「そろそろ閉店ですね。早く出ましょう。」


「そうですね!お疲れのところ運転して頂いて、すみません。」


「いえ。…ところで、恵方巻はどちらで食べるのですか?」


佐渡が尋ねて来た。


「そうだね~、もうちょっと早ければ、ここで食べたけど…。やっぱ事務所かな?」


川野は、空腹のお腹を押さえながら、残念そうに答えた。


「今から事務所となると、きっと節分が終わってしまいますね…。残業時間の報告もしましたし、どこか近場で車を停めて、食べましょう。」


「賛成!海近いから、海辺の公園とか?寒いかな?」


「川野さん。デートじゃないんですよ。…全くっ。」


そう言いつつ、満更でもない佐渡は、近場のベストスポットな海辺の公園を、頭の中の記憶から必死に探すのであった。












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