表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
倉庫の光さん〜左遷先で恋が動き出しました〜  作者: 桃山あんづ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

45/67

恋の芽生え

営業部の女性が集まると、それはそれは話が盛り上がった。

〇〇さんがイケてるとか、〇〇の店はランチが安くて美味しいとか。

作業に集中しつつも、会話が途切れない。

何とも器用な方々だ。


女性陣の手伝いのお陰で、絵馬は無事、完成させることが出来た。




(もうすぐ定時か…。増岡は、今日は上がれるかな?)


自分の席に戻った川野は、窓辺の壁に掛けてある時計を確認し、そのまま増岡の方へ視線を落とした。


「ん?何?」


増岡は、ちょうど川野が視界に入ったようで、バチっと目が合った。

これは丁度良い。


「あのさっ…。」


川野はそう言いかけたが、周りの同僚がまだ仕事中なので、増岡の席の横まで駆け寄り、耳打ちをした。


「今日、早く上がれそう?もし良かったら、ご飯でもと思って。」


「おっ、川野からの誘いなんて久しぶりだな!でも、すまん!これから、打ち合わせでさ。……川野、お前は今日は、自分の仕事終わりそうなのか?」


「うん。とりあえず今日は上がれるよ?」


「そうかっ!ちょうど良いや!川野、これから俺とイルミネーションを見に行こう!」


「えっ?」


そうと決まれば話は早い。

増岡はさっさとデスクを片付け、身支度を始めた。

資料が入ったカバンと、コートを片手に持ち、もう片方の手で社用車の鍵を握った。


イルミネーション関係の仕事といえば、一つしかない。

川野はあまり乗り気ではなかったが、増岡の役に立てるのであればと思い、同じく身支度を始めた。


「打ち合わせの後、直帰するので!皆さんお疲れ様です!川野行くぞっ。」


「はいっ。同じく打ち合わせ行ってきます!お疲れ様です!」


そう言って、2人は事務所を出た。

エレベーターに乗り、川野が扉を閉めようとした。



その時だった。


「待ってくださぁ~い!乗りま~す!もうっ、早く歩いて!」


まずい。非常にまずい。

今、一番会いたくない人達がやって来る。


エレベーターの中からは、倉庫の壁に隠れて、絶妙に廊下側が見えないのだが。


徐々に近くなって来る、あの甘ったるい声は、彼女しかいない。

そして、彼女に催促されているのは、間違いなく山本だ。


「川野~。聞こえないフリをして、閉めても良いんだぞ~。」


増岡がエレベーターの奥で、両腕を組みながら、川野にそう言った。


「うーん、でも…。感じ悪いでしょ。私が閉めたってバレたら気まずいし。」



そう言って、川野は開ボタンを押し続けた。

案の定、永井が山本の腕を引っ張りながら、エレベーターに乗り込んで来た。


「ありがとうございま~す!あっ!川野さん、お疲れ様で~す!昨日は、哲也が大変お世話になりました!ご迷惑、かけませんでしたか?」


永井が、白々しく川野に挨拶をして来た。

増岡と山本は、表情一つ変えず、静観している。


「あぁ、とんでもないです。無事に会社来られた様で、良かったです。」


川野は、誤解されない様、無難な返事をしたが、永井はそれが気に入らなかったのか、一瞬、下唇を噛んだ。


「私達、今からデートなんです!ねぇ、哲也っ。お2人は、デートですか?」


山本の腕を掴み直し、べったりとくっ付きながら、川野を煽る永井。

すかさず、増岡が口を挟んだ。


「デートですかぁ、経理は定時で上がれて良いですね~っ。僕達は生憎、今から打ち合わせで。でも、行き先は遊園地なので、デートの様なものか。なぁ、光っ!」


増岡はそう言って、永井にとびっきりのスマイルをお見舞いしてやった。



チーンッ―


まるで、試合終了のゴングが鳴ったようなタイミングで、1階に着いた。

たかが4階から降りてくる短い時間のはずが、これほど刺々しくなるとは。


「お疲れ様です。僕達は、地下なので。」


追い打ちをかけるかのように、増岡が、永井と山本に向かって、片手に持った鍵を見せつけた。



「お疲れ様っした。」



山本はそう呟き、永井に腕を引っ張られながら、エレベーターを降りて行った。


再び、エレベーターの扉が閉まった。



「……あれ、俺、もしかして余計なことした?」



去り際、山本が切なげな表情で川野を見ていたのを、増岡は見逃さなかった。



「ううん、大丈夫!これで良かった。ありがとう!」



川野は、平気な顔をしてみせた。





「うわぁ~!!やっぱり俺、やらかしてるじゃん!…山本に可哀想な事しちまったな。しかも遊園地の件までベラベラ喋って…。傷をえぐる様なものじゃないか。」


ハンドルを握りながら、山本に嫉妬させようとした事を、とても後悔する増岡。

車に乗り込み、川野は、自分から改めて山本に別れを告げた事を、打ち明けたのだった。


「でもさ、山本係長は、これから永井さんとデートなんでしょ?あんたが気に病むことはないし、私も2人には上手くいって欲しいと思ってるから。」


川野は、気丈に振舞っているが、山本への気持ちは消えた訳ではない。

長年の付き合いで、それが痛いほど分かってしまう増岡は、再び自責の念に駆られるのであった。




遊園地への道のりは、電車とバスを利用すると、待ち時間を含め、2時間以上かかるのだが、車で高速道路を使えば、平日なら約半分の時間で到着する。


重々しい空気を変えようと、川野が切り出した。


「そういえばっ!ねぇ、二次会どうだったの?小林さんも参加してたでしょ?」


「えっ?あぁ、うん…。」


歯切れの悪い増岡だったが、川野の興味津々な視線に負け、話を続けた。


「大部屋に皆で入って盛り上がったのだけど…。佐渡は一曲も歌わず、三浦君と端の方でずっと話してた。永井さんは、山本の事をずっと心配していて、廊下に出て、電話をかけまくってたみたいだよ。小林さんは…。酔っぱらってたのかな?俺の隣にいたんだけど、顔が真っ赤で。」


「ほう!で?」


「それで、帰りの電車の方向が一緒なら、途中まで送ろうか?って聞いたら”そんな事されたら、私、昇天してしまいますっ!”って、先に走って帰っちゃったんだよ。俺、なんかマズい事したかな?」


「何、何もうっ!良いところでっ……まぁでも、焦りは禁物よ?」


川野は、小林が自ら勇気を振り絞って、推しである、たかぴーの隣席をキープしたのだと確信した。凪ちゃん、凄いぞ!


「なんか…。お前、藤田さんみたいな口ぶりだな。」


「そりゃ、大人の女性から学ぶことは、沢山ありますかねっ♪実践できるかは別として。」


「でもさ…。鈍感な俺でも分かるくらいなんだけどさ…。11歳も違うと、実際どうなんだろうね…。俺が35歳で、相手が24歳とか…。」


増岡は小林の、あからさまな好意に、さすがに気付いていた。


「”恋のチャンスがあれば、楽しまなきゃなっ!”って、どっかの誰かさんが仰ってましたよ?冗談はさておき。……年齢は関係無いとは言い切れない。私も年齢差を気にしないと言えば、噓になるから。でもさ、相手が勇気を出してアプローチしてくれるなら、そして、自分もそれに応えたいなら、年齢は一旦、置いておけば良いんじゃないかな?お互い、いい大人なんだし。」


川野は、増岡にもその気があるのなら、心から2人を応援したいと思った。

真剣な顔で、前を向く増岡。


「うん、そっか。…なんかお前、変わったな。恋愛について、これほどお前から、深みのある言葉を聞いたのは初めてだよ。…山本のお陰だなっ。」


増岡がニヤリと笑った。


「そうかもね……。さあ、増岡君!レディーにばかり、頑張らせるのは良くないからねっ。今度、凪ちゃん誘って飲みに行こうよ!」


「…まぁ、3人なら…。待って!佐渡も呼ぼう。俺、男1人だと心細いから…。」


「はいはいっ!」


自分の恋愛に関しては、非常に弱気な増岡であった。










評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ