誠実な告白
お疲れ様会から、一夜明けた。
当然、川野は昨夜の一件で、ろくに眠れていなかった。
今日はまだ、佐渡と顔を合わせていない。
“倉庫の1人席”である事に、これ程感謝したのは初めてだ。
(あぁぁぁーっ!!どうしようっ!)
頭を抱える川野。
仕事が全く手につかない。
以前の川野なら、すぐ付き合いをスタートさせただろう。
しかし、それで上手く行った試しがない。
佐渡は上司で、仕事での関わりも多い。
(また上手く行かなかったらどうしよう⋯)
川野が慎重になるのも無理もない。
でも、理由はそれだけだろうか?
トントンッ、ガチャッ―
「失礼します。」
佐渡が入って来た。
「川野さん。その節は、本当にすみませんでしたーっ!!」
入って来て早々、謝り倒してきた。
「えっ?あっ!全然!気にしないで下さい。」
川野は、酔っ払った勢いで口説かれただけなのだと思い、安心した。
佐渡が申し訳なさそうに続けた。
「川野さん⋯、酔っ払った勢いで告白してしまい、すみませんでした。こういう事は、酒が入ってない時にするべきですよね。⋯仕事中ですが、全く手につかないので言いに来ました。川野さん、改めて言います。好きです!付き合って下さいっ!」
予想に反し、告白し直されてしまった。
佐渡らしい、ど直球な告白だ。
どうするべきなのか?
佐渡の事は、嫌いなわけでは無い。
むしろ、好感度も上がっている。
「えっと⋯。」
川野は答えに迷っていた。
サッ―
佐渡は川野の両手を、握った。
そして真っ直ぐ瞳を見つめた。
「川野さん。僕と川野さんとは、仕事でも私生活でも、お互いを理解し合えると思うんです。そりゃ、綺麗好きの度合や、飲める酒の量など、違うところもありますが。⋯一緒に仕事をしていると楽しいんです。そして、川野さんの家にお邪魔した時、恋人になったらこんな生活が待っているのかなと、つい想像してしまったんです。だからどうか、チャンスをください!」
佐渡はいつから川野を想っていたのか。
彼の力強く誠実な言葉に押され、思わず目眩を起こしそうだ。
(この人となら⋯。ちゃんと付き合えるかも知れない。)
川野は、佐渡の手を握り返した。
「お友達からで良ければ、よろしくお願いします。」
ガチャッ―
早速、佐渡からランチに誘われ、出掛けていた川野。
昼休憩が終わり、倉庫へ帰って来た。
すると、パイプ椅子に座り、山本が待ち構えていた。
川野のデスクの上には、個包装のシュークリームが2つ並べてあった。
「こんにちは。川野さーん。今日は外食だったんですかぁ?」
いつものマイペースな調子で、山本が聞いた。
「⋯こんにちは山本係長。先日は、焼き芋ご馳走様でした。ランチは外でパスタを食べました。美味しかったですよ。」
「⋯恵介とですか?」
川野は胸がギュッと苦しくなった。
私に興味なんてないと言ってたくせに、なぜここにいるのか?何でそんな事を聞くのか。
昼休憩の時間はとっくに終わっている。
早く自分の部署へ帰ってほしい!
「そうですよ。実は、佐渡さんとは⋯。」
「良い仲なんですね。」
川野はコクリと頷いた。
山本がニコッと笑った。
「⋯⋯ふふっ、良かったです。川野さん、ここへ来た当初は、孤独そうだったから心配だったんですよ。でも、恋人まで出来たなら良かったです。相手が恵介なら、安心です。口は悪いけど、良い奴ですから⋯⋯じゃぁ、これはお祝いの気持ちです。シュークリーム、美味しいですから、恵介と食べて下さい。」
そう言って微笑み、山本は倉庫を去って行った。
きっともう、この倉庫には来ないだろう。
(もう⋯何も考えたくない⋯)
今の川野の顔はとてもじゃないが、佐渡には見せられないくらい、酷い顔だ。




