表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
倉庫の光さん〜左遷先で恋が動き出しました〜  作者: 桃山あんづ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

16/67

倉庫は怖くて嫌なので

企画コンペが、いよいよ明日に迫った。


佐渡が夜の倉庫を怖がるので、今日は定時で会社を後にし、川野の家で最終確認を行うこととなった。



「佐渡係長、本当にワガママですよ!」


「仕方ないじゃないですか。営業部のテーブルも、会議室も別チームが使ってたし、休憩スペースは人の出入りがあって集中出来ませんし。倉庫は怖くて無理ですし。」


川野は納得がいってなかった。

佐渡は潔癖症のため、自分の家には他人を入れたくないそうだ。


最近、仕事が忙しくて掃除もままならないのに、そこに辛辣で潔癖な、佐渡が来るなんて。





「ちょっ!ちょっとドアの前で待ってて下さい。一応、室内チェックするので。」


「大丈夫ですよ。川野主任の部屋が綺麗だなんて、これっぽっちも思ってませんから。」


相変わらず失礼な男だ。

そう思いながら、川野は部屋の中を急いでチェックして回った。



ガチャッ―


「汚い部屋ですが、どうぞ〜。」


「お邪魔します。」


パソコンと資料を両手にぶら下げ、佐渡が入って来た。


「⋯⋯ギリギリ大丈夫です。」


川野は、最低限の整理整頓を行なったが、どうやら潔癖の佐渡にとって、川野の部屋はだいぶ散らかっている様に見えるらしい。



「どうもすみませんねっ!最近、残業続きだったので、仕方ないんで。さぁ、そこに荷物置いてください。」




川野の家は1DKだ。

居間と寝室があり、居間にはソファーとローテーブルが設置してある。


大きなローテーブルは、仕事を持ち帰った時に、資料やパソコンを広げるのに最適だ。


横浜時代は、同僚達とよくこのテーブルを囲んで、持ち帰り残業をしたことも度々あった。

時には酒やつまみを持ち寄って、飲み会をしたこともある。どれも懐かしい思い出だ。


「さて、早速始めますか!」


2人は時間を計りながら、プレゼンテーションの予行練習を何回もやり、微調整を行なった。

次に、資料に不備がないか、隅々までチェックをした。




「よしっ!完璧ですね。川野主任、お疲れ様です。」


「ばっちりですね!これで明日、企画勝ち取りに行きましょうっ!」


連日の残業で、疲れも溜まっているだろうが、2人の顔は生き生きとしていた。





「21時か⋯。佐渡係長、お腹空きませんか?」


「あぁ、確かに。そうですね。」


川野と佐渡は、仕事が最優先の人間なので、夕飯も食べずにいた。


「他人の作ったご飯とか食べれますか?家の中にあるもので良ければ炒飯くらい作れますが。嫌ならカップ麺でも。あっ、もちろん帰っても大丈夫です。」



「⋯⋯炒飯でお願いします。」


意外な答えが帰って来た。


「じゃあ、サービスで冷凍餃子も付けますね!」



川野は、手の込んだ料理は作らないが、こういうスピード料理には慣れている。


トントントントンッ―


「佐渡係長、TVでも観ててください。すぐ出来ますから!」


「はい。」




「お待たせしましたっ!あり合わせですが、炒飯と冷凍餃子です。良かったら召し上がって下さい。」


川野がローテーブルに料理を運んできた。

佐渡はなぜか緊張している。

川野の料理を信用していないのか?


「いただきます。」


佐渡が炒飯を口に運んだ。


「(モグモグ)⋯⋯美味しいです。」


「良かった!佐渡係長は嘘を付かないので、美味しいは社交辞令じゃないってことですよね?私もいただきます(モグモグ)」


川野はニッコリ笑い、炒飯を食べ始めた。

佐渡の眉間に、皺が寄らなくて良かったと安心したのだ。


「⋯僕、普段は外食やテイクアウトばかりなので、こういう手作り料理は久々です。⋯ありがとうございます。」


「いえいえ、私も忙しい時は作ったりしないのですが、今日は気分が乗っていたのでね☆」




「ご馳走様です。」


「お粗末様です。」



川野は空になった食器を下げ、洗い始めた。


「佐渡係長、この時間だとまだ10分刻みで電車あるので。⋯⋯佐渡係長?⋯⋯佐渡さーん?」



佐渡の応答がない。

川野は慌てて、濡れた手を拭きながら居間へ戻った。



スヤスヤ―


なんと、佐渡がソファーに座ったまま、うたた寝をしてしまっている。

お腹がいっぱいになったからなのか、疲れがどっと押し寄せたのか⋯。


起こすべきか、そのまま寝かせてやるべきか?

川野は非常に迷った。

迷った挙句、声を掛けてみることにした。



「佐渡係長、明日は大事なコンペですよー。起きてくださーい。」


川野はソファーの手前で膝を付き、腕を軽く揺すりながら優しく声を掛けた。


佐渡の目がゆっくり開いた。


「⋯すみません⋯俺、寝てましたか?⋯」


「寝てましたよっ。やっぱ疲れてますよね。」


「あぁ⋯すみません。⋯つい心地良くなってしまって⋯。今何時ですか?」


「22時です。まだ電車はありますよ〜。」


「了解です。⋯⋯⋯川野さん、明日コンペ終わったら、2人でお疲れ様会しませんか?」


傾いた体を直しながら、佐渡は尋ねた。


「良いですね!美味しいお酒を飲めるよう、頑張りましょうね!」


「そうですね。頑張りましょう。」


佐渡が微笑んだ。





そうして佐渡は、川野の家を後にした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ