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「シャロンの喫茶店」 GW特別編 Lisa's Adventures in Digital Wonderland  作者: Toru


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第三章 奇妙なイベント会場

映画館を出た瞬間、リサは思わず目を細めた。

館内の暗さに慣れていたせいで、ショッピングモールの照明がやけに眩しい。


「……疲れたぁ……」


四本連続の映画鑑賞は、さすがに体に堪えた。

足は重く、頭はぼんやりしている。

でも、映画の世界に逃げ込んでいた間だけは、余計なことを考えずに済んだ。


(……翔子、今なにしてるんだろ)


ふと胸が痛む。

考えたくないのに、考えてしまう。


そんなときだった。


「スーパー没入体験! デジタルフルダイブ Type β、ただいま無料体験受付中〜!」


吹き抜けの広場に響くアナウンスが、リサの耳をつかんだ。


「……なにそれ?」


吸い寄せられるように、リサは声のする方向へ歩き出す。


広場に着くと、そこには奇妙な光景が広がっていた。


丸っこいカプセル型の筐体が、ずらりと十数台。

白と銀を基調とした未来的なデザインで、まるで宇宙船のコクピットのようだ。


その中央で、白衣を着た人物が大きな身振りで説明をしていた。


「さぁさぁ皆さん! これが最新鋭のフルダイブ装置、デジタルフルダイブ Type βでございます!」

挿絵(By みてみん)

白衣の人物は、妙にテンションが高い。

髪はぼさぼさで、眼鏡はずり落ち気味。

どう見ても“博士っぽい人”だ。


リサは思わず足を止めた。


「フルダイブ……? ほんとに?」


博士はリサの視線に気づいたのか、勢いよく駆け寄ってきた。


「お嬢さん! 興味がおありですかな!」


「えっ、あ、はい……ちょっとだけ……」


「よろしい! では説明しましょう!」

と、頼んでもいないのに、博士はフルダイブ技術の説明を始めました。


「お嬢さん、フルダイブ技術の3大要素はご存知かな?

フルダイブを実現するためには、3つの機能が必要とされているのです。


フルダイブ技術は、脳とコンピュータを直接つなぐBMI(Brain-Machine Interface)を核に、感覚情報の書き込みと運動信号の読み取りを双方向で行い、五感全てを仮想空間と共有する次世代技術なのです。


1.「読み取り(アウトプット)」: 脳から「動きたい」という信号を読み取り、仮想空間のアバターを動かす。

2.「書き込み(インプット)」: 仮想空間内の視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚などの情報を脳の該当領域に送信し、現実と同様の感覚を生み出す。

3.「遮断ブロック」: 脳からの運動信号を現実の肉体に伝わらないようにし、寝たきりの状態でアバターを操作する。


ですが、実現に向けて今まで色々な課題がありました。

技術的ブレークスルー: 脳の神経信号をリアルタイムで精密に解析・書き込みできるBCIの成熟が必要であり、かつハードウェアの進化が必要でした。

Neuralinkのような脳埋め込み型チップが開発されていましたが、ゲーム用として安全に使える段階ではありません。

その上、仮想空間の感覚を現実に近づけるための「重力」「触覚」「痛み」などの再現。

倫理・安全: 脳へのハッキングや技術エラーの防止などです。


しかし!

この度我が社が開発した『デジタルフルダイブ Type β』は、使用者が睡眠状態になることでフルダイブを可能にしました。

Type βは、脳波同期型の没入装置!

 視覚・聴覚・触覚を完全に仮想空間へ転送し、まるで本当にその世界にいるかのような体験ができるのです!」


「へぇ……すごい……」


リサは思わず見入ってしまう。

疲れているせいか、博士の言葉が妙に魅力的に聞こえた。


博士はさらに畳みかける。


「しかも今なら! 体験していただいた方の中から抽選で、

 有名レストランのお食事券が当たります!」


「お食事券!?」


リサの目が輝いた。


(……シャロンさんと翔子、誘えるかも)


そんな淡い期待が胸に浮かぶ。


博士は満足げにうなずいた。


「では、お嬢さん。ぜひ体験してみませんか?」


「……やります!」


即答だった。


博士は嬉しそうに手を叩く。


「ではこちらへ! 靴を脱いで、カプセルに横になってください」


リサは指示に従い、丸いカプセルの中へ入る。

内部はふかふかのシートで、ほんのり温かい。


「では、目を閉じて……リラックス……」


博士の声が遠くなる。


(どんな世界なんだろ……楽しみ……)


そう思った瞬間、急激な眠気が押し寄せた。


「……え……?」


まぶたが重くなり、意識がふっと沈んでいく。


そして――


次に目を開けたとき、リサの視界に飛び込んできたのは、

現実とはまるで違う、鮮やかすぎる世界だった。


巨大なキノコ。

宙に浮くティーカップ。

喋る花々。

虹色の空。


「……え、ここ……」


リサは息を呑む。


「アリスの……世界……?」


そう呟いた瞬間、背後から声がした。


「ようこそ、デジタルワンダーランドへ!」


リサの冒険が、静かに幕を開けた。


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