第十一章 帰り道の解放
ハートの女王とのクロッケー勝負を終え、リサは城の庭園を後にした。
赤い絨毯の廊下を抜け、小さな扉をくぐると、再びワンダーランドの森へ戻ってくる。
白ウサギと帽子屋が心配そうに駆け寄ってきた。
「リサ! 大丈夫だった?」
「うん、なんとかね。女王様、気分が良かったみたいで……教えてくれたよ」
「教えてくれたって……何を?」
リサは深呼吸して言った。
「通路を塞いでたのは、ハートの王様だったんだって。
みんなが帰っちゃうと、女王様の相手がいなくなるからって」
白ウサギは耳をしゅんと下げた。
「そんな理由で……」
帽子屋は苦笑しながら言った。
「ワンダーランドではよくあることさ。
でも、女王が許可したなら、もう通れるはずだ」
リサは拳を握った。
「じゃあ、出口に行こう!」
◆ トランプ兵の消えた通路
森を抜け、あの巨大なアーチ状の通路へ向かう。
先ほどはトランプ兵でぎっしり埋まっていた場所だ。
しかし――
「……いない!」
リサは思わず声を上げた。
通路はすっかり空っぽで、奥までまっすぐ見通せる。
あれほど無限に湧き出していたトランプ兵の姿は、一人もいなかった。
代わりにワンダーランドの住人にされていた人たちが通路の奥に向かって歩いていた。
白ウサギがほっと息をつく。
「女王様、本当に命令してくれたんだね……」
帽子屋も頷く。
「これで帰れるよ、リサ」
リサは胸が熱くなるのを感じた。
(帰れる……本当に……)
そのとき、木の上から声がした。
「帰るのかい?」
チェシャ猫が姿を現し、にやりと笑う。
「君は、ワンダーランドに来た中で一番“まっすぐ”な子だったよ。
また遊びにおいで」
「うん。また来るよ……たぶん!」
リサが笑うと、チェシャ猫は満足げに消えた。
白ウサギがリサの手を握る。
「気をつけてね。外の世界は、ここよりずっと忙しいから」
「大丈夫。私、ちゃんと帰って……謝らなきゃいけない人がいるから」
帽子屋は帽子を取って、深くお辞儀をした。
「君の旅路に幸あれ。
そして――また会おう」
リサは涙がこぼれそうになるのをこらえ、笑顔で手を振った。
「ありがとう! みんな、本当にありがとう!」
◆ 光の通路へ
通路の奥から、柔らかな光が差し込んでいる。
それはまるで、現実世界へと続く道しるべのようだった。
リサは一歩、また一歩と進む。
(翔子……シャロンさん……)
胸の奥に浮かぶ二人の顔が、リサの背中を押す。
(ちゃんと謝る。
ちゃんと話す。
もう逃げない)
光が強くなり、視界が白く染まっていく。
リサは目を閉じた。
そして――




