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デスゲームで冷酷な男と組んだら、なぜか俺だけ守られている  作者: しゃとーぶりあん


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第39話 第13研究棟/2050/Ⅰ

 



 白は、すべてを奪う色だった。


 汚れ一つないその空間は、ここでは何も残してはいけないという意志を感じさせた。


 血も、涙も、叫びも────すべてが存在しなかったことにされる場所。


 閉じ込められている地下は、いつも寒かった。


 白い蛍光灯が、冷たい床を照らしている。


 鉄の扉と白い壁に閉ざされた部屋。


 扉には番号が振られている。


 AHI-09


 それが蓮の部屋だった。


 今の年齢は十歳だが、もっとずっと幼い頃からここにいる。


 部屋にはベッドと机だけだ。


 窓はない。


 時間の感覚もない。


 その時、唐突に扉が開いた。


 白衣の研究員が二人。


「ナンバー09」


 名前では呼ばれない。


 番号だけ。


「立て。時間だ」


 蓮は黙って立ち上がる。


 逆らうとどうなるか知っていた。


 金属製の首輪が静かに外れる。


 これを付けたまま部屋の外に出るとスタンショックを食らって動けなくなる。


 逃亡防止の処置だった。


 金属音は小さく、だが確実に蓮の身体を“物”として扱っていることを思い出させる。


 足の裏に伝わる床の冷たさが、現実を強制的に引き戻した。


 今日も、同じだ。


 検査室に連れていかれて、数値を測られ、限界まで負荷をかけられる。


 拘束具付きの椅子が中央に配置されている。


「座れ」


 大人しく座る。


 すぐに腕と足を固定された。


 頭にも装置が取り付けられる。


 何十本もの電極が一斉に頭部に突き刺さる。


「AI接続テスト開始」


 白衣の研究員たちががうっすらと笑う。


「壊れるなよ、09」


 スイッチが押された。


 ブゥン……不気味な音を立てて強力な電流が流れる。


 蓮の体ががくんと跳ねた。


「っ……!!」


 脳の奥が焼ける。


 頭の中に大量の情報が流れ込む。


 全てを俯瞰し観測する人工知能の膨大なデータ。


 映像、知識、あらゆる音の洪水────。


 ただの人間の脳では処理しきれる訳がないものが、一斉に押し寄せる。


「脳波上昇」


「すごいな。まだ耐えてる」


 電流がさらに強くなる。


「……あああっ!!」


 蓮の叫び声が実験室に響く。


 体が震えが止まらず、目の焦点が合わなくなる。


 研究員が端末を操作する。


「さすが。AHIの面目躍如だ」


「他の被験体は皆ここで脳が焼けた」


 さらにバチバチと電圧が上がる。


 蓮の目、鼻腔、口腔から血が噴き出した。


 それでも実験は止まらない。


「AI同調薬投与」


 得体の知れない薬液が体に入る。


 数秒後、体が熱くなる。


 ドクンと心臓が暴れた。


 視界が揺れる。


「……!……、」


 呼吸ができない。


 研究員が言う。


「幻覚出てるな」


 視界の中に知らない景色が見える。


 都市、戦争、AIネットワーク。


 頭の中にどろりと世界が流れ込む。


「……っ……」


 声が出ない。


 体が動かない。


 研究員たちはじっと観察している。


「耐久値が異常だな」


「09はよく耐える」


「どれだけもつかな」


 投薬は数時間続いた。


 その間、蓮はじっと激しい苦痛に耐えた。


 ────思考を分解され、再構築される。


 何度も、何度も。


 壊れては修復され、また、壊される。


 激しい苦痛に耐え続けるのも限界がある。


 だが、それ以上に削られていくのは────“自分が自分である感覚”だった。


(じぶんって、何……?)


 ふと浮かんだその疑問を、蓮はすぐに押し殺した。


 蓮は、顔を上げた。


 白い廊下が、どこまでも続いている。


 扉、監視カメラ、規則正しく並ぶ照明。


 完全に管理された直線の世界。


 中のものを逃がさない構造。


 それでも、蓮は知っていた。


 ほんの数秒だけ、監視が遅れる瞬間があることを。


 昨日の実験で、意識を失う直前に見えたログの乱れ。


 脳に直接流し込まれたデータの中に、わずかな“遅延”があった。


 それが偶然なのか、誤差なのか、意図的なものなのかは分からない。


 だが、蓮にとっては十分だった。

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