表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【BL】冷酷な最終兵器は俺にだけ執着する ーFalling into E.D.E.N ー  作者: 雨森ユキ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

123/153

第120話 居住区画棟/2055/論理を拒む体温

 



 そして、蒼真は更なる過労により順調に壊れ始めていた。


「統括主任」


「……ん」


「寝てください」


「あと三件」


「六時間前も同じこと言ってたわよ」


 イヴェットが呆れる。


 しかし蒼真は止まらない。


 E.L.Y.S.I.A。


 観測不能領域。


 空白データ。


 存在しない痕跡。


 不気味な違和感だけが膨らみ続けていた。


 調べれば調べるほど眠れなくなる。


 結果、アンカー依存が再発し、以前より深刻化していた。


 アンカー────第七世代適合者の体液に含まれる、高濃度の神経活性因子。


 アレクのせいでもうとっくに中毒になっているのに、それが足りない。


 理屈ではなく、身体がそう訴えていた。


 会議終了後の夕方、蒼真は廊下を歩いていた。


 視界が揺れる。


 頭痛と耳鳴り、神経接続部の焼けるような焼灼感。


 まずい。


 限界だった。


 足が止まる。


 次の一歩が出ない。


 呼吸が浅い。


 身体の芯がふらつく。


 向こうから柊が歩いてくる。


 いつも通りの無表情。


 蒼真は何か言おうとしたが、声にならなかった。


 アレクとはまた、しばらく連絡が取れていない。あとは身近にいる第七世代適合者といえば、柊だけだった。


 そのまま膝が折れそうになる。


 柊は一瞬でそれを見抜いた。


 何も言わない。


 ただ静かに蒼真の身体を支え、そのまま腕の中へ抱え上げる。


 蒼真は驚いて目を見開いた。


「……っ」


 抗議しようとしても、喉がうまく動かない。


 柊は表情を変えないまま、蒼真を抱えた姿勢で歩き出した。


 研究員専用居住区へ向かう廊下を、黙って。


 蒼真はあたたかい腕の中で小さく息を吐く。


 情けなかった。


 守る側の人間が、支える側の人間が。


 こんなふうに誰かに縋っている。


 それでも柊は一言も責めない。


 ただ、蒼真の体温がこれ以上落ちないように、少しだけ抱え直した。


 研究員専用居住区の部屋に着くまで、ずっと無言だった。


 部屋の前でようやく柊が足を止める。


 蒼真を静かに下ろし、鍵を開ける。


「……入ってください」


 それだけだった。


 蒼真はふらつきながらも部屋へ入る。


 柊は最後まで何も言わず、蒼真がベッドに倒れ込むのを見届けてから、ようやく扉へ向かった。


 このまま行かせたくない。


 そんな、熱に浮かされたみたいな感覚だった。


 柊が扉に手をかける。


 蒼真は反射的に手を伸ばした。


「……待って」


 掠れた声だった。


 柊が振り返る。


 蒼真の指先は、ちょうど柊の袖口を掴んでいた。


 ほんの少しだけ引き留めるように。


 柊の動きが止まる。


「……どうしました」


 いつも通りの低い声。


 けれど、その視線は蒼真の手元に落ちていた。


 蒼真は自分でも驚いていた。


 こんなことをするつもりはなかったのに。


 だが、離したくなかった。


「……行くな」


 言ってから、蒼真は少しだけ目を逸らした。


「寝てください」


「寝る。寝るけど……」


 袖を掴んだまま、蒼真は小さく息を吐く。


 柊は扉から手を離し、蒼真のそばへ戻る。


 そして、ベッドの縁に静かに腰を下ろした。


「ここにいます」


 それだけだった。


 蒼真は目を瞬かせる。


 柊は相変わらず無表情だ。


 なのに、袖を掴んだ蒼真の手を振り払うこともなく、そのまま自然に受け入れている。


 蒼真は少しだけ安心して、掴んでいた袖をようやく緩めた。


 だが柊は立ち上がらない。


 蒼真の額に手を当て、熱を確かめるように一度だけ触れる。


「休んでください」


 低い声が、近い。


 濃密なアンカーの匂いがする。


 蒼真はその距離に、妙に心臓がうるさくなるのを感じた。


「……それだけじゃ、足りない」


 柊の視線が静かに落ちる。


 蒼真は息を整えようとして、うまくいかなかった。


 アンカーが欲しい。


 それは単なる補給ではなく、今の蒼真にとっては、柊の存在そのものを確かめる行為でもあった。


「……頼む」


 掠れた声だった。


 柊はしばらく黙っていたが、やがて短く頷く。


「分かりました」


 蒼真が目を閉じるより先に、柊はそっと彼の肩を支えた。


 額を合わせて、呼吸が触れる。


 それから、短い口づけが落ちる。


 蒼真はすこしだけ身じろぎしたが、すぐに柊の服を掴み返した。


 足りない。


 そう思ったのが伝わったのか、柊は逃げなかった。


 もう一度、今度は少しだけ長く強引に唇を重ねる。


「……っ、ん……」


 アンカーは、言葉よりも近い身体の接触でしか届かない。


 蒼真の神経の奥へ、じわりと熱が染み込んでいく。


 痛みが和らぐ。


 視界の揺れが少しずつ収まる。


 呼吸が整う。


 蒼真は柊の肩に額を預けたまま、ようやく小さく息を吐いた。


「……今の状態では、口づけによる唾液だけでは足りません」


 蒼真は自分の声が思った以上に弱っているのを自覚した。


「分かってる」


「……いいんですか」


「……うん」


 意識が、朦朧とする。


 蒼真は柊の袖を掴んだまま、熱に浮かされたように続ける。


「……お前じゃないと、だめだ」


 柊の呼吸が僅かに止まる。


 蒼真はそこで初めて、自分が何を言ったのかを理解して少しだけ顔を赤くした。


「……その、変な意味じゃない」


「分かっています」


 簡潔な答えがすぐに返ってきた。




100回達成だー10000pv達成だー

とかいって浮かれて

一日二回更新とかしてたら

まーたストック消えたYOー!(ばかー)

今日は用事で一日中出てたしうおおー

明日から時間が許す限り

一話以上書いていくしかねぇ…!

早く完結させるためとはいえ、

どーしてマイナーのくせに

なんか忙しいみたいなカンジになっちゃうのか

自分でも不思議☆

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ