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【BL】冷酷な最終兵器は俺にだけ執着する ーFalling into E.D.E.N ー  作者: 雨森ユキ


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第100話 中央医療棟/2054/あまりに眩しい夜の破片

 



 深夜の医療棟は静かだった。


 窓の外には、雨に滲む東京の灯り。


 超高層都市の光が黒い空へ溶け、病室だけが世界から切り離されたような静寂に包まれている。


 ほんの数時間前まで研究棟第九層では演算災害寸前の騒ぎが起きていたとは、とても思えなかった。


「……お前ら、自分のベットで寝ろ」


 蒼真が呟く。


 すると左右から綺麗に重なった声が返ってきた。


「嫌です」


「やだ」


「なんで息が合うんだ……」


 蒼真は遠い目をした。


 ベッドの左には柊、そして右には目覚めた途端蒼真の病室に駆け込んできた蓮がいて、二人とも当然のような顔で居座っている。


 帰る気配は微塵もなかった。


「お前ら患者と護衛だよね?」


「はい」


「うん」


「なんで添い寝態勢に入ってるの」


「統括主任がまた倒れる可能性がありますので」


 柊が淡々と言う。


「蒼真、寝てる時すぐ熱出すだろ」


 蓮も真顔だった。


「俺に人権は」


「ありません」


「ない」


 蒼真は額を押さえる。


 だが本気で追い出せない。


 蓮は感応暴走の反動が残っている。


 柊も極限の緊張状態が続いていた。


 けれど二人とも、蒼真がここにいて生きていることを確かめるように、離れようとはしなかった。


「……蒼真」


 蓮が袖を引いた。


「ん?」


「もっと、こっち」


 ぽんぽんと隣を叩く。


 自分にもっと寄り添うように呼んでいた。


「いや、狭いって」


「大丈夫」


「何が?」


「なんとか三人、入る」


 確かに蒼真には大きめのベッドがあてがわれているが、理屈が雑すぎる。


 柊が小さく笑った。


「諦めてください、統括主任」


「柊まで乗るな……だいたいお前が圧迫してるんだぞ。一番デカいんだから」


 結局、蒼真が根負けして中央へ座り直した途端、蓮は腕に抱きつき、かたや柊は反対側から肩を支えるように身を寄せた。


「重い重い重い」


「逃げないようにしています」


「蒼真、すぐ無茶するから」


「信用無いな……」


「ありますよ。ただ、」


 柊が静かに言った。


「……俺が、あなたを離したくないだけです」


 蒼真が固まる。


「柊」


「はい」


「そういうことさらっと言うのやめろ」


「嫌です」


 柊は今日、完全に開き直っていた。


 失いかけた恐怖が、もう隠すことを許さなかった。


 真っ直ぐな視線。


 隠しようのない熱。


 向けられる感情の重さに、蒼真の耳がじわりと赤くなる。


 それを見た蓮がむっとした。


「……柊ばっかりずるい」


「何がだ?」


「蒼真、困ってるのに少し嬉しそうだ」


「蓮???」


 蒼真が本気でむせる。


 だが否定できなかった。


 愛情を向けられるのは苦手だ。


 けれど決して嫌というわけではなく、むしろ胸の奥が少しだけ温かくなるがゆえに厄介だった。


 やがて蓮は蒼真の肩へ額を預け、甘えるように、あるいは擦り寄るように身を寄せた。


「……眠い」


「病人だからな」


「蒼真のせい」


「なんで!?」


「蒼真といると安心する」


 あまりにも自然な言葉だった。


 蒼真は返事を失う。


 柊が苦笑する。


「本当に罪深い人ですね」


「俺が悪いの?」


「無自覚なのが一番悪質です」


「ひどい言われようだな……」


 それでも蒼真は笑った。


 柔らかな声だった。


 その笑い声を聞きながら、蓮はゆっくり目を閉じる。


 安心する。


 蒼真が笑っている。


 それだけでいい。


 その時、壁面モニターに青白い文字が浮かび上がった。


 三人の視線が上がる。


 ────蒼真の心拍安定を確認。


 ────蓮の神経負荷低下を確認。


 ────柊一真のストレス値、依然として高水準。


「…………」


「…………」


「…………」


 数秒の沈黙。


 やがて柊が呟く。


「……まだ監視しているんですか、E.D.E.N」


 文字が続く。


 ────家族とその従者の健康管理は重要です。


 蒼真が吹き出した。


「家族判定なんだ……」


 蓮の口元が少しだけ緩む。


 柊は頭を抱えた。


「従者って俺か?間違っては無いが……AIに言われると微妙だ……」


 最後に表示された一文で、全員が言葉を失った。


 ────蒼真が笑っているので、安心しました。


 静かな文字だったが、機械的なはずなのに、どこか安堵しているようにも見えた。


 蒼真はしばらくその文字を見つめる。


 そして小さく笑った。


「……お前も少し休め」


 返事の代わりに、モニターの光がゆっくり消える。


 静かな夜が戻ってきた。


 蓮は蒼真へ寄りかかったまま眠り。


 柊はそんな二人を見つめながら目を細める。


 守りたいと思う、この時間も、この人も。


 世界規模の陰謀も狂った研究者たちも厄介だが、それでも今だけは。


 蒼真が笑っている。


 だから、それで十分だった。





うおーストック3話くらい出来たゾー!

良かったーでも

そんなにいかにもBのLな展開じゃない…

私のモチベに多大に影響する…!(オマエのかい)

ちょっちしばらくほのぼのが続いちゃうかも

まぁ緩急…つけてもいいよね…

でも私が書くほのぼのは面白くないんだ…(大問題やないか)

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