表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
断罪されたので、裏から王国を乗っ取ります  作者: 早乙女リク


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

86/94

第86話 合理と均衡の対話

 解任動議否決の夜。


 王宮の奥、灯りを落とした小会談室。


 向かい合うのは二人だけ。


 アリシア・ヴァレンシュタイン。


 アルヴェイン・シュタール。


 護衛も側近もいない。


 純粋な対話。


 先に口を開いたのはアルヴェインだった。


「見事だ」


 感情はない。


 だが評価は明確。


「再建債で市場を止めた」


「帝国も売りを縮小せざるを得ない」


「合理的判断だ」


 アリシアは静かに答える。


「均衡の中の合理です」


 アルヴェインはわずかに目を細める。


「あなたは戻りつつある」


「合理へ」


「戻りません」


 即答。


「私は合理を捨てていない」


「だが合理だけに従わない」


 沈黙。


 外では風が鳴っている。


「帝国案を拒否するつもりか」


 淡々とした問い。


「条件次第です」


「ほう」


 興味が宿る。


「関税優遇の幅を縮小」


「帝国銀行支店は監査権付き」


「未決済債権凍結は交渉材料」


 静かに提示する。


 対等な交渉。


 従属ではない。


 アルヴェインは微動だにしない。


「王国は、まだ余力があると思っているのか」


「帝国も無傷ではない」


 視線がぶつかる。


「王国市場を完全に切れば、帝国商会も損失」


「長期戦は双方に痛み」


 合理国家は損失を嫌う。


 アルヴェインは小さく息を吐いた。


「あなたは危険だ」


「帝国にとってか」


「合理にとってだ」


 言葉は冷たい。


「均衡は感染する」


「他国が真似すれば、帝国の影響力は薄まる」


 それは本音。


 アリシアは理解する。


 この戦いは王国だけのものではない。


「ならば戦争か」


 彼女は問う。


「帝国は戦争を好まない」


「非効率だ」


 即答。


「だからこそ、経済で制する」


 沈黙。


「均衡は遅延死だと言ったな」


 アリシアが言う。


「今もそう思う」


「ではなぜ売りを止めた」


 一瞬。


 わずかな間。


「損失が拡大する前に止めた」


「合理だ」


「違う」


 アリシアは言う。


「あなたは市場が壊れすぎるのを避けた」


「帝国商会の信頼も傷つくから」


 沈黙。


「合理国家は孤立死すると言った」


「今、帝国は市場全体の信頼を守った」


「それは合理か」


 アルヴェインの瞳がわずかに揺れる。


「均衡を否定しながら、均衡を選んだ」


 静かな一撃。


 長い沈黙。


 そして――


 アルヴェインは、初めて微かに笑った。


「面白い」


 感情のない男の、わずかな変化。


「王国は三年持つかもしれない」


「だがそれ以上は」


「その時はその時です」


 即答。


 彼は立ち上がる。


「帝国案は修正可能だ」


「だが覚悟しろ」


「均衡は常に試される」


「承知しています」


 扉に手をかける前、アルヴェインは振り返る。


「あなたが王なら、帝国は厄介だった」


「残念だ」


 去っていく背中。


 静寂。


 アリシアは、ゆっくり息を吐く。


 勝利ではない。


 敗北でもない。


 均衡国家は、生き延びた。


 だが帝国は去らない。


 三年の戦場は、まだ続く。


 そしてアリシアは理解する。


 均衡とは――


 常に戦い続ける状態なのだと。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


少しでも続きが気になる、と感じていただけましたら、

ブックマーク や 評価 をお願いします。


応援が励みになります!


これからもどうぞよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ