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断罪されたので、裏から王国を乗っ取ります  作者: 早乙女リク


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第58話 静かな包囲

 期限まで、あと一日。


 王宮に届いた報告書は、薄い紙一枚だった。


「帝国より通達。鉄輸出の一部検査強化に伴い、出港延期」


 理由は「品質再確認」。


 違反ではない。


 だが。


 ヴァルク将軍の声が、低く沈む。


「軍備更新計画、二週間遅延」


 参謀が補足する。


「予備在庫で当面は持ちますが、長期化すれば訓練計画に影響」


 レオンハルトは、報告書を握りしめた。


「穀物に続き、鉄か」


「合法的な包囲です」


 アリシアの声は冷静だった。


「戦ではない」


「だが締めている」


 ヴァルクが吐き捨てる。


 市場では、すでに噂が広がっている。


「鉄が止まるらしい」

「帝国が怒っている」


 怒っていない。


 合理的に動いているだけだ。


 それが、最も恐ろしい。


 ――


 帝国宿舎。


「反応は」


 カイゼルが問う。


「軍が強く反発しています」


 ユリアンが答える。


「民意は不安を強めています」


「良い」


 静かな肯定。


「だが限界は越えるな」


「はい」


 カイゼルは、机上の地図を指でなぞる。


「王国は、北方連合へ動いたか」


「接触は確認」


「予想通りだ」


 均衡を取ろうとしている。


 悪くない判断。


「彼女の策だろう」


 ユリアンが問う。


「修正案を出すと思われますか」


「出す」


 断言。


「完全拒否はしない」


 王太子は揺れている。


 だが逃げない。


「明日が決着だ」


 ――


 王宮、深夜。


 執務室には三人だけが残っていた。


 レオンハルト、アリシア、ヴァルク。


「軍は、これ以上の遅延を容認できない」


 ヴァルクが言う。


「だが属国も容認できない」


「分かっている」


 レオンハルトは、低く答える。


「修正案で押し切る」


 アリシアが、静かに言う。


「港湾監査は全面拒否」


「鉄・穀物契約は三年」


「価格は固定だが、供給停止時の違約条項を明記」


 ヴァルクが眉をひそめる。


「帝国が違約を認めるか」


「認める」


「なぜ」


「合理的だから」


 アリシアは、真っ直ぐに言う。


「帝国は利益最大化。

 契約違反で信用を落とせば、長期利益を損なう」


 レオンハルトは、ゆっくり頷く。


「違約条項を入れれば、供給停止のコストが上がる」


「ええ」


「それが均衡点」


 ヴァルクは腕を組む。


「完全ではない」


「完全はない」


 アリシアは即答する。


「外交は、常に不完全」


 沈黙。


 外では、夜風が強まっている。


 王都は静かだ。


 だがその静けさの裏で、

 帝国の船は港で止まり、

 鉄は倉庫に積まれたまま。


 静かな包囲。


 剣も弓も使わない。


 ただ数字と契約で締め上げる。


「明日、交渉だ」


 レオンハルトが、低く言う。


「王として出る」


「ええ」


 アリシアは頷く。


「私は裏で支える」


 彼女は表に立たない。


 だが設計は彼女。


 レオンハルトは、窓の外を見る。


「……選ぶ」


 短い言葉。


 安定か、自立か。


 民か、軍か。


 合理か、責任か。


 すべてを抱えたまま、王は選ぶ。


 帝国は待っている。


 静かに。


 確実に。


 明日、理と理が真正面からぶつかる。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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